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からくりさぁかすピエロック一座(2024/06/16)
地元・熊本の友達から教えてもらって、観たいなーとSNSなどをチェックしていた『ピエロック一座』。
自宅がある菊池市のお隣が拠点なのに、なかなかタイミングが合わず…。
ところが今年は全国巡業の旅に出ると知り、どこかでタイミングが合うかもとスケジュールをスマホに記録しておきました。
富山〜新潟と日本海側を北上し、そのまま青森まで海沿いを通るつもりでいたのですが、ちょうど日程的に山形・大石田町での公演なら行けるな、と寄り道することに。
だい〜〜〜ぶ遠回りにはなるんですが、思い立ったが吉日。
公演は14日(金)、15日(土)、16日(日)の3日間(土日は昼+夜公演)で今夜が最終公演になります。
前夜は『道の駅 関川(桂の関)』に停泊し、そこから向かうこと約3時間(Googleマップ調べ)。
会場となるレストランも、北村山郡大石田町次年子(じねご)という土地も未知の世界なのでドキドキです。
周辺の道路状況が分からないので念のため問い合わせて確認。手前の道だけが狭いけど宅配のトラックも来るので大丈夫だろうとのこと。
Googleマップをセットして出発。途中、『道の駅 白鷹ヤナ公園』でランチしたり、日帰り入浴したりで予想以上に時間がかかってしまった。
公演は夕方からなので間に合うんだけど、レストランの方が待ってると思い連絡。
入浴後、雨が降り出しました。これは禊の雨の予感。きっと公演の時間には止むに違いないと念じながら運転、現地に到着した時はまだ小雨でしたが「絶対に止むはず」との思いを胸に…
(公演は雨天中止になります)
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なにこれ、すっごい特徴的な建物!
しかし窓ガラス割れてるの? 廃屋じゃないよね?
本当にここがレストラン『調香菜 Umui』で間違いないのだろうか?
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ここは、旧 次年子小学校とのこと。校庭跡地の奥に、さぁかすテントがひっそりと建っていました。ここで間違いないようです。
が、誰〜〜〜もいない。
恐る恐る建物の中へ。看板もなく1階は何かの作業場のようです。
雑然としていて案内板も見当たりません。
バウッバウッ!
覗いた瞬間、大型犬が吠えながら近づいてくるではないですか。ゴールデンレトリーバーです。かつて犬を飼っていたわたしでも腰が引ける。
「こんにちはー! すみませーーーん!」
それでも、返事がない。
「あなたのご主人、どこに行ったの?」どうしようかと、いったん建物を出たら家族連れのお客さんが来たのでこれ幸い。
「ここがUmuiで合ってますか?」
「わたし達も初めて来たんです」
雨で公演が開催されるのかどうか確認に来たという。
しばらくして男性が出てこられて、ここがUmuiで間違いないと。レストランは2階ですと教えていただき、上がってみるとオーナーさんらしき女性がぐったりと座っていました。
昨日はマルシェも同時開催だったため、お客様が何百人も殺到したらしい。
さらに今日の昼公演も大盛況すぎてダウンしてたとのこと。
この公演イベントがどのようなスタイルで開催されているのかまったく知らなかったのですが、出店(でみせ)とか軽食があるものだとばかり思っていたら様子が違います。何となく昔のサーカス公演みたいなのを想像していたので戸惑うばかり。
後で聞いたところによると、ピエロック一座が主催というより、場所を提供してもらって公演しながら巡業していて、本人たちも初めて行く場所ばかりで手探り状態らしい。
興行のようにイベンターもスポンサーもおらず、場所を提供する側の対応も、それぞれ違う。
今回は旧 小学校という広い立地を活かしてUmuiさんが場所を提供しただけで、主催という訳ではありません。
Umuiさんの公式インスタグラムには「土日祝1145から月12時から」と明記されていました。なので夜公演がある時間帯は、本来は「営業時間外」。イベントだから特別営業していただけだったのです。
勝手に食事ができると思い込んでいたので、恐縮しきり。「売上に貢献しなくては」などと考えていた自分が恥ずかしい。
「疲れ切ってしまったので、食事は公演の後にしてほしい」ということで、クルマに戻って軽く腹ごしらえ。
いつの間にか雨は上がっていました。
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夜公演は18時半スタート。ただ、雨が降れば中止です。中止になるかどうかは直前まで分かりません。
どこからともなく笛の音が聞こえてきて、「あぁ、公演の準備をしてるんだな」と確信。やっとピエロック一座の公演が見られます。
日曜日の夜、雨で中止かも知れないという悪条件のなかでも二十数名ほどのお客様が来場。ピエロック団長が操り人形を手に「まつりの始まり」を告げて回ります。
Umuiのご夫妻も「今まで忙しくて見れなかったから」と客席に。愛犬もテンションが上がって嬉しそうに客席をグルグルぴょんぴょん、その様子に笑いを誘われ早くも客席は和みモード。
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写真でしか知らない「からくりさぁかす」の全貌が、今まさに幕を開けます。動画も見たことがありません。ワクワクはひとしおです。
観覧料は、投げ銭方式となっております。
(封筒に入れて用意していたのですが、最後に団長がタライを持って廻るスタイルでした)
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雨天中止になるのは、さぁかすテントに屋根がないためです。
これは「空の下で公演がしたい」という団長のこだわりでもあります。圧迫感がないし、気持ちいいですよね。
またテントの支柱には注連縄を思わせる縄が張り巡らされていたり、ちょうちん、鐘、五色の旗が「祀りを祭り上げましょう〜〜〜」という雰囲気を演出しています。
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驚くことに、ピエロック団長とチェリー副団長の二人だけで公演が成り立っています。
カラクリ舞台も操り人形も、演奏している楽器まで全て二人の手作り!!!
ストーリーの進行、何人分ものセリフ、そしてBGMまでも団長がフットペダルで操作していました。恐るべし。
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木材は熊本県山鹿市のアヤ杉が使われています。とっても素晴らしい音色です。
ただし雨に弱いのです。湿気を帯びると木は膨らんでしまうので、カラクリも軋んでスムーズに動かなくなったりします。
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少年と森の精霊たちが織りなすオリジナルストーリーの合間に、人形たちによるショーが披露されます。
(昼公演と夜公演では内容が違うそうです)
ただ「ショーを行う」だけではなく、人形たちのバックボーンも重要な要素を担っています。
ー 無駄なものこそ美しい ー
子ども向けの、ほんわかした面白おかしいエンターテインメントを想像していたら、意外にメッセージ性の強い内容であることに徐々に気づいて、だんだん不安になってきました。
それは、わたしの中にある“常識”が「この内容は受け入れられるのだろうか?」と他人事ながら心配になったからです。余計なお世話です。
そう、わたしの「固定概念」や「傲慢さ」「卑小さ」が炙り出されてしまったのです。
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メッセージを全面に出すのではなく、楽しさと好奇心をくすぐりつつ、警戒心が解かれた隙きをスッと突いてくるからハッ!とキャッチしちゃう。その瞬間には猜疑心とか拒否感とかが出てくる余地がありません。
団長は子どもの頃、「はみ出し者で、まわりのみんなから笑われて、それに傷ついてばかりいた」そうですが、大人になってからは発想を逆転し「ピエロになって、みんなを笑わせて生きていこう!と決意」したのだそうです。
その経験からでしょうか、言葉遣いや伝え方にとても気をつけている印象を受けました。
説教臭くなく、押し付けがましくもなく、そっと投げかけてくる感じです。
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…なんて、こんな考察をされることは嫌がられるかも知れません(苦笑)
地元の友だちが「すごく応援してる。きっと、しうさんも気に入ると思う」と勧めてくれたのが何よりの証左であるかな。
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作中のセリフで、現地の人たちに馴染みのある地名や建物の名前が出てきたりして、あらかじめ調べて各地方公演ごとに変えているんだなぁ、と細かい気配りにも好感が持てました。
こども向けでもなく、おとな向けでもなく、
すべての人におくる
夢とファンタジーと、旅芸人の哀愁
ちいさなサーカスの灯りが
人々の心をあたためる
ねがいを込めて
町から町へ、村から村へ
今日もどこかで
小さなサーカステントが立ち上がる!!!
いつか
サーカスで会いましょう
* * * * *
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翌日、おせっかいながら撤収のお手伝いをしました。お天気に恵まれて、テントなどを乾かすのにもちょうどいいけど蒸し暑かったです。
約1時間の公演、たった二人で担っているとは思えないほどの役割を全力でこなす緊張感は半端じゃないと思います。
疲れ切った翌日の、二人での撤収作業はどれほど大変なことか…。
おしゃべりをしながら、水分補給もしながら、無理のないペースでお片付け。
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トラック内部の壁には、各地でいただいた感想や絵などのお手紙が壁に貼られていました。ステキ。
全公演を終える頃には、貼るスペースがなくなるくらいの「思い」で溢れるんだろうな。
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それにしても、どうやってこの中に全部、収納するんだろう…?
チェリー副団長の頭の中には完璧な配置があるのです。
公演中はトラックの中で車中泊し、荷物が満載の移動中はホテルなどの宿泊施設を利用しているそうです。
トラックはキャンピングカー仕様になっていないので、これから猛暑のなかでの車中泊は厳しいと思います…。せめてルーフベントは欲しいところ。
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来年は、おもちゃ工場の設立に注力するので公演はこの夏でしばしの別れ。その次はトラック大改装かな?!
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・ピエロック一座 公式サイト(2022年)
リアルタイム更新は Facebook または Instagram(団長名義) が確実です
このあと、北海道に渡ったピエロック一座と上ノ国で再会することになるのですが、それはまた後日【旅暮らし*まとめ記】で。
* * * * *
先月、クラウドファンディング『CAMPFIRE』にて【小さなサーカス団「ピエロック一座」の全国巡業・おもちゃ工場設立の夢を実現したい!】を立ち上げ、驚異の422%で達成しました。
2019年にクラウドファンディングで念願のサーカステントを購入することができ、いよいよ巡業の旅へと意気込んでいた矢先にコロナ禍によって公演が中止になってしまいました。
その間、団長は地元で林業や農業のお手伝いバイトをしていたそうです。
その中に「植林」があり、「人は自然の力によって生かされているということをもっと思い出さないといけない」と強く思うようになり、その経験が今回の公演に反映されているのですね。
おもちゃ工場が完成した暁には、また巡業の旅に出られます。
あなたの住むまちへ来た時は、さぁかすテントを覗いてみてください。
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