【IPO有報解説】グロースエクスパートナーズ(株)
グローバルエクスパートナーズの有価証券報告書を解読し解説します。
数字はみなさん見ていると思いますので、主に定性情報を解説しています。
会社概要 新規上場申請のための有価証券報告書
公募・売出しの比率
公募443千株、売出し295千株。割と良心的…と見せかけて自社株の処分が203千株あるので実質は公募と売出し同程度ですね。
渡邉 伸一社長が1,309千株中130千株放出し、持株比率を45%から35%程度に落とすようです。拒否権だけ持ってあとは売却する構図。
会社は支配したいから支配できる株だけ持って残りはイグジットしたいという意図が透けて見えます。
成長性に期待できるなら株放出しないでもっと時価総額上げてから売る判断もあるんでしょうが、ここで最大まで売るのは私の好みではないです。
渡邉 伸一社長以外の売出しは一般的な量かつ少数なので詳細を省きます。
業績
伸びています。
前々期32.9億、前期37.3億、前期比113%。グロース市場とは??みたいになりますが伸び続けているのは間違いありません。
20/8期に一度落としていますが、利益は落としていないので概ね順調に伸びていると言えると思います。
事業内容
色々書いてありますが、大手企業に対してDXコンサルで入り、DX戦略を策定し、システム開発を行い、ハンズオンで組織作りからシステム基盤の構築をして、クライアントに自走できる組織を成果物として納品します。ということのようです。
理屈は通っているんで違和感ありませんが、それぞれ(DX支援、戦略策定、システム開発、組織づくり、自走組織の構築)は専門分野が異なるので、それだけの人材が確保できているのかが気になります。
役員構成
上記事業においては社内人材のスキル高低が売上に直結しそうなので役員の経歴を見ていきます。社外取締役は名前だけでしょうから放っておいて、創業メンバーを見てみましょう。
実際に経営戦略などの経験を積んだ取締役はいらっしゃらないようです。
一方でデータセンターで務めていた経験のある取締役がいらっしゃるようです。
私が概要を読んでイメージした事業内容は上の通りですが、この内、システム開発については経験のある取締役がいるので懸念を拭うことができました。
私も組織作りをしたことがありますが、大変難しいものです。それをDXコンサルから入って実現できるのかわかりません。私の理解が間違えてるのか?
事業の強み
いや全然コンサル部分の強み謳っとらんやないかーい!
ということで、この会社はDXの推進をテーマとしたシステム開発の会社であることがわかりました。
ちなみに、cの人材確保は上でも触れた通り業績に与える影響が大きいファクターなので熟読しましたが、何が強みなのか読み取ることはできませんでした(様々な統計データを引用しただけでした)。
強みに掲げるものを先に決めてから中身を探しにいったけどなかった、っていうパターンかなと思いました。
b.グローバルサウスとは何かを補足しておくと、以下の国を指しています。
ざっくりいうと人口が増えていて所得の少ない国ですね。
グローバルサウスとこの事業に何の関係があるのか悩みましたが、わかりませんでした。グローバルサウスに日本が持つ高品質なサービスを展開していく事業を拡大するらしいですが、グローバルサウスに大手のレガシー企業があってDX支援のニーズがあるということでしょうか?
ちょっと有報だけでは読み取れませんでした。グローバルサウスに開発をアウトソーシングしてるならわかるんですけどね。
課題
人財の確保・育成をトップに挙げてきています!
あなた強みでそれ挙げてましたよね!?強み=課題ってどういうことなんでしょうか?ちょっと意味がわかりません。
それ以外は一般的な課題が列挙されているだけだったのでツッコミどころなしです。
取引先
前年の売上37.3億のうち、10.8億がニプロさんです。その占有率なんと29.8%…!怖いですね…恐ろしいですね…ニプロさんと仲違いしたら業績急降下ですね…
でも無期限の資本・業務提携契約書をニプロさんと巻いてるから大丈夫!っていうことでしょうか?
サイトを見ると名だたる大手が取引先に上がっていますが、それぞれ占有率はどの程度なんでしょうか?1社への依存度が高いのはシンプルにリスク高いですね。
ニプロさんは13万株持っていますが、今回の上場でも売り出さないので現状仲良くしているようです。
一方で伊勢丹さんは10万株持っている内の5万株売るようです。全部売る訳ではないので不安材料にはなりませんでした。
主要設備
なんか1.2億の社宅と2.8億の社宅がありますがこれは一体??
普通上場前にきれいにするように言われますがどうやって乗り切ったんでしょう?あ、誰の社宅かもわからないので仕方のない事情なんでしょうね、きっとそうなんでしょう。
今の不動産景気なら業績傾いたときに社宅を売って利益を還元するってこともできますしね!プラス材料です!!!
決算悪いときに株主総会で「緊急動議!社宅売却の件!」とかっていう場面が見られたりするんですかね。怖いですね。
監査法人
太陽有限責任監査法人です。察してください。
今の監査報酬って年3,000万なんですね。ずいぶん上がったものです。
Moat
あえて挙げるとするなら資本業務提携契約を結べる大手企業との関係値の高さでしょうか。ただ営業組織がなく取引社数が(おそらく)少ない、または1社あたりの占有率が高い企業では再現性が高いとは思えません。
時価総額の見込み
税引き後当期純利益2.8億✕システム開発会社のPER20倍で56億くらいでしょうか。
9/3時点でNTTデータのPERが25倍程度なので、好景気を背景にPER25倍の70億くらいまでは視野に入るかもしれません。
まとめ
事業内容はDXをテーマにしたシステム開発です。
大手への依存度が高く、また営業組織がないため成長性に課題あり。
将来はグローバルサウスに日本のサービスを提供して事業化するようですが、夢はDreamみたいな気がしなくもありません。
経営は盤石なものの、上場する意義が見えにくいIPOだと感じました。
追記
2024/09/04
仮条件が出ていました。1,480~1,530円とのこと。発行済株式318万株で上場するので時価総額47億〜48.6億円ですね。PER20倍付かなかったのは意外でしたが成長可能性を感じてもらえなかったのかも知れません。
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