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【1/1】北勢の小さな電車(1)

 よくよく考えてみたらのお話。

 撮りにしても模型にしても、趣味仲間で話をしていると、栃尾だの駿遠だの下津井の遠い話題が出てきては、うらやましいなぁ…なんて、みんなでため息をつくわけです。

 そんなに有難い存在なのか、桑名のアレは…

 三重県生まれ三重県育ち、私鉄王国で気動車もあって、北のほうに行けばちっこい電車も走ってる。そんな環境にいたから、特殊狭軌に対してそれこそ特殊な印象を抱くことがなかったのです。
 だから、訪問のキッカケは「風景が良い」や「復刻塗装が素敵」といった、いわば他のノーマル鉄道の場合と同じ入場方法でした。いざ撮りに行ってみれば、「あ、そういやここ線路ちっさかったね」くらいのイメージかな。

 切り口で写真がどう変わるかなんてわかりませんが、そんなぼくの目に映った「近場で身近な普通のローカル私鉄」のもようをお届けしたいと思います。

Nikon D850 AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G

 日本全国のローカル線、大体は初夏に訪れれば水田の映える「らしい」写真が撮れるもの。植生もわかりやすい時期とあって、よく各線の取っ掛かりにするシーズンです。まあ、銚子みたいな例外エリアもあるけどね。
 さて、ストリートビューでロケハンして、とりあえず行ってみたら…撮れちゃいました。復刻塗装はもちろん、湘南顔の連節って…たまらん!
 ほんと、いい時代になりましたよね。行く前にあらかたの様子がわかる分、現地ではより細かなところを緻密にロケハンする。現代技術に甘えすぎることなく、うまく駆使していけたらいいな。

Nikon D850 AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G

 お目当ては1本のみですが、運用が比較的単純で列車本数も多いので、どんどん撮れる印象。チャンスが多すぎても撮りが雑になったりするけど、間延びしすぎも困りものですもんね。某井川なんて昼過ぎに撮った次は日没終了とかもあったし…。あれは温泉行ったついでに電車撮れた、くらいにしといたほうがいい。
 わずか10分後、ナローらしい架線柱を取り入れて、またも田んぼカットを手堅く一枚。近鉄系のローカル線、とにかく両持ちの柱だらけで撮る人にはあまり歓迎されてないのですが、ここの場合は狭さがよくわかるアイテムに化けてくれてます。

Nikon D850 AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G

 どの路線にも大なり小なりハイライト区間があって、北勢線の場合やはり楚原から奥が美味しいエリア。そのうえ、本数が半減することもあって、よりいっそう“行かなあかん”気になるのです。
 特徴的なクルマだけど、ここはじっとこらえて遠くからロングショットで。苗が踊ってる姿からもわかるように、このあたり伊吹とか藤原あたりからの風が強いんです。ちなみに、「伊吹おろし」って冬の風にしか使わないらしいね。知らなかったよ…。
 そんなこんなで、柄にもなくちょっと雄大な景色も味わえたりします。

Nikon D850 AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G

 デンシャの方々には、ここは説明不要でしょう。後ろの林がなくてスッキリ抜けていればなぁ…が第一印象。撮り鉄なんてそんなもんです。
 橋はもちろん、上に乗っかってるモノもいまどき貴重な格好だよね。ガラベン、片開き扉、サッシ窓、模型屋目線でもそそられる題材です。やるならNナローかな。近畿日本四日市駅のあの並びを再現したい。

Nikon D850 AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

 さっきから気ままに撮ってるように見えますが、この路線では、一つだけ絶対意識してることがありまして。
 そう、両端で顔が違うんですよね、この電車。みんな大好き湘南顔は桑名方だけで、反対側は味のない食パン顔なんです。
 それを感じさせない角度でカメラを向ける。すなわち、情報操作もまた写真だったりするのかなぁと。ここを見てるみなさんには全く通用しないだろうけど。
 話は変わりますが、この瑞々しい田んぼ、こないだ久しぶりに通ったらなんと幹線道路と踏切になってました…。昭和の高度成長期、諸先輩方もこういう気持ちを味わっていたんだろうね。諸行無常。

Nikon D850 AF-S NIKKOR 400mm f/2.8G

 前照灯。今の時代たいてい昼間も点いていますが、かつては会社ごとに流儀(規定なんでしょうが)があって、暗くなってからのお楽しみってケースも多かったものです。ぼくの経験だと、京阪、南海、神鉄あたりにはずいぶんヤキモキさせられたものです。だって、やっぱり光ってるほうがかっこいいもんね。特に京阪はよくわからなくって、少し暗くなるとまず尾灯だけ点くんですよね。そこのタイミング、どうして分けてたんだろう…。
 さて、もうお気づきかと思いますが、われらが北勢線、今なお日中無灯火なんです。まあ、カッコよさや見た目の速さを求める相手でもないので、そんなに気にしてはいないんですけどね。
 でも、このカットだけは点いていてくれてよかった。こんな長閑な路線でまさか使うとは思ってなかったバズーカレンズで、渾身の一撃…!

 まずは初夏の沿線もようをご覧いただきました。田んぼがあるということは、青田から収穫まで楽しめるし、桜や彼岸花といったワンポイントもあちこちに。そして、北勢といえば“三重の北海道”、ときおり雪も積もってくれます。※あくまで「当社比」です。
 そんな、身近に感じられる四季のローカル私鉄を、これからも少しずつご案内していきたいと思います。

 初夏編 おしまい。

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