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#17ショートショートらしきもの「監禁」

「助けてくれ!お願いだ。命だけは。」


ドンッ


「ぐわぁ!!・・・なんで」


「おじさん、ごめんね。命だけはって言ったから、足は撃ってもいいかなって。」


「ふざけんな!どうしてこんなことするんだ!」


「作品だよ。おじさんにはぼくの作品の一部になってもらうんだ。」


「人の命をなんだと思ってるんだ!」


ドンッ


「ぐわぁ!!」


「おじさんなら分かってくれると思うんだけどなぁ。」


「分かった!俺が悪かった!お願いだからもう撃たないでくれ!」


「そんなに生きたいんだ。」


「当たり前だろ!おれには・・・おれには姪っ子がいるんだ!」


「・・・姪っ子?娘じゃなくて?」


「あぁ。そうだ。小学校にあがったばっかでな。すっごく可愛いんだ。その姪っ子が20歳になるまではおれは死ねないんだ!」


「おじさんもうすぐ50だよね?自分の子は?」


「そんなのいる訳ないだろ。そもそも結婚してないし。」


「他には?」


「他?」


「生きたい理由。」


「ペットがいる!おれは1人暮らしなんだ。朝と夜の2回、エサをあげないと飢え死にしてしまう!」


「へー。名前は?」


「名前?そんな何十匹もいるんだからわざわざ覚えられないだろ。そもそも、熱帯魚に名前付けてる人なんているのか?」


「あ。熱帯魚なんだ。動物は?」


「無理無理。おれペットで飼えるような動物は、ほとんどアレルギーだから。」


「あっそう。他は?」


「他は・・・大家さん!たまーに、アパートの大家さんと帰りが一緒になる時は荷物を持ってあげてるんだ!大家さんは腰が悪いから俺がいないと大変なんだよ!」 


「介護してる訳じゃないなら、おじさんじゃなくてもいいよね?」


「あと、宝くじ!先月買った宝くじの結果が来週発表されるんだ!」


「あっそう。」


「スクラッチもある!」


「いま削ったらいいよ。他には?」


「彼女・・・はいたことないし。部下・・・には嫌われてるし。年金・・・は払ってないし。」


ドンッ


「ぐわぁ!!・・・どうして。」


「よかった。少しでも罪悪感とか芽生えたらどうしようって思ってたけど、これなら安心だよ。ぼくも遺されたがわの気持ちはよくわかるからね。」


「・・・どういうことだ。」


「あれ?この状況見覚えない?両足を撃ち抜かれた後に、眉間を拳銃で撃たれて死亡。連続監禁殺人事件の手口だよ。」


「お前がその犯人ってことか?どうしてこんなことを?」


「よく言うよ。3年前、大学から5年間付き合ってた彼女と婚約もして、式の日程も決まってた。」


「すごく幸せじゃないか。」 


「突然連絡が取れなくなったんだよ。すぐに警察に連絡したが、見つかったのは3日後。両足と頭を拳銃で撃たれて亡くなってた。」


「それは気の毒にな。」


「以前から職場の客にストーカーされてるって言ってたからすぐに勘づいたよ。警察に相談しても、まともに扱ってくれなかったから自分で復讐することにしたんだ。」


「何が言いたいんだ?」


「しらばっくれるな!お前が殺しをする為にストーカーをしていることも知ってんだ!見つけるのは簡単だったけど、お前を捕まえるのに3年かかった。その間にお前は殺人を4回も繰り返した!止めることもできたけど、それだとお前に逃げられるのは分かっていた。」


「あぁ。なんだ。そこまで分かってんならもういいや。」


「は?」


「よく覚えてるよ。あの女は3つ目の作品だったかな。なんか子供がどうとか言ってたなぁ。」


「子供?」


「あれ。知らない?妊娠してたみたいだよ。新しい母子手帳だったから、病院帰りだったんじゃない?」


「いい加減にしろ!」


「早く撃ってよ。何人殺してもこの感覚味わったことないんだよね。おれは作品をつくる側じゃなくて、作品になりたかったんだって今気づいたよ。ありがとな。」


「ここまで最低なやつだとは思わなかったよ。」


「1つ言っておくけど、3年間でおれが殺したのは2人。その拳銃の使い方。君、初めてじゃないでしょ?」


ドンッ

〜おわり〜

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