無理強い
「会わせたい方がいたら
今のうちに呼んでおいてください」と
母の心臓が止まって
蘇生措置で生き返り
生命維持装置で
命をつなぎながら
「いつまた心臓が止まるかわからない」と
ICUで先生と看護師さん達に
顔を合わせるたびに
そう言われたが
私は母の心臓が止まったことにさえ
まだ全然追いつけていなくて
必要に迫られているから
現実の問題を処理していたが
数日前の昼間に往診を受けた時に
その先生は明日も往診してくれると言っていたので
母は夜になってもずっと苦しそうな呼吸が続いていたけれど
救急車を呼んでいいのかどうか迷った末に
救急車を呼んだ時には
診察を受けてすぐに帰れると
思っていたところから
まさか
救急車が病院に着いた直後に
心臓が止まってしまい
運ばれた先に救命救急センターが設置されていた為
蘇生措置を施され
生命維持装置につながれた
現在まで
自分の思考は
目の前の現実と
元に戻ってほしいという希望的願いと
何でこんなことになってしまったのか
もっと出来る事があったはずだという後悔を
何度も何度もループしていた
会わせたい親戚というと
母と仲の良かった叔母達になるが
無理強いはしたくないし
迷惑かもしれないと思いながらも
母の妹達に連絡を入れると
80を過ぎた叔母たちは
電車や、お嫁さんの運転する車で
駆けつけてくれて
意識のない母のベッドの横に立ち
叔母達が母の耳元に向かって
母の名を呼びかけると
眠っている母が
少し反応したように見えたことを
叔母達は満足したように話してくれた
母が叔母達の来訪に
気づいたのかどうかは分からないが
母も叔母達に会いにきてほしいのだろうと思ったので
会いに来てくれて
ああ良かったなぁ、と思った
今思えば
あの時叔母達を呼ばなかったら
きっといつまでも
呼ばなかったことに対して
私は自分に色々と言い訳をしてしまいそうなので
それも含めて
最後に会ってもらえて
本当に良かったのだと思った
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