職人のリレー 第三走者 佃平七糸取り工房 佃三恵子
2018,08,30 Kazu
木之本の伝統産業のことネットの情報とかでしか知らない...
職人さんは何を考えてるんだ。どんな愛を持っているんだ。
もっと知りたい!
そんなわけで「職人のリレー」の記事を
書かせていただくことになりました!
KAZUです!
(僕を知らないかたは「修行僧KAZU登場!」を読んでください!)
今回は蚕を育て、命をいただき、生糸を作る。
大音の糸取り職人である佃三恵子さんに
第三走者として走っていただきました。
佃さんの考える蚕の命をいただくということ。
どのように蚕を愛しているのか。
蚕とひたむきに向き合っている佃さんだからこそ見えることを聞き出していきます!
まるで我が子のよう
仕立屋と職人:カズ(以下:カズ)
蚕に対してどんな気持ちがありますか?
佃平七糸取り工房:佃三恵子(以下:佃さん)
かわいい!
元気な子とひ弱な子がいて、元気な子は餌を食べにグングン上にあがってくるし、ひ弱な子は餌にあたらんから成長にどんどん差が付くんよ。
カズ:
どんなときの蚕が一番好きですか?
佃さん:
やっぱ途中やな。あんまり大きくない。
大きくない、ちいちゃくないって感じ。
要はグイグイと大きくなって成長しているときやな。
カズ:
そういうときって桑の葉もいっぱい食べるんですか?
佃さん:
いっぱい食べる。
最後になるとそれもまた大きくなってきて
かわいいっていうのを通り越してまう(笑)
カズ:
そのかわいいを通り越したらどういう感情がくるんですか?
佃さん:
良い繭作れよって。
もうあなたたちはいっぱい食べたんだから
立派な繭を作ってくださいってことやな。
カズ:
繭になれない蚕もいますよね?
佃さん:
かわいそうやな
だからもうちょっと飼い方を思案しているんよ。
蚕への愛情があるとは思っていたけれど、
まさかこれほどとは思っていなかった。
成長している最中が一番好きだと語る佃さん。
蚕は毎日大きくなる。それは信じられないほどだ。
それを見守ることが佃さんの楽しみなのだと思う。
それがあるからこそ、
佃さんは蚕を溺愛する我が子のように語るのだと思う。
成長した蚕には良い繭をつくってほしい。
たくさんの愛情を注いで一所懸命に世話をしてきて
一緒の時間を過ごしてきたからこそ、
そう思うのだろう。
中途半端な愛であれば絶対に思わないことだ。
本当に我が子のように思ってらっしゃるのだと感じた。
すべての蚕が順調に成長できるわけじゃない。
なかには成長の遅い子たちもいるし、
繭になることができずに死んでしまう子たちもいる。
そんな蚕たちを思い何とかしようと考える佃さんは
すべての蚕を平等に、心の底から愛している。そう見えた。
愛の伝え方
カズ:
大音の糸と他の糸で違いがでる一番のポイントってなんですか?
佃さん:
取り方が違うんよ。強くて光沢もあるし。
ぐじゅぐじゅ焚いてないから痛まないんよ。
カズ:
大音の繭も良いものなんですか?
佃さん:
そうなんよ。繭が上手にほどけていく。
カズ:
愛情をかければ、かけるほど?
佃さん:
そとから見てると笑うかもしれないけどね。
蚕さんに「良い子やね 良い子やね 早よ大きなれよ」って
喋りながらやってるんよ。
「はいはい 餌やよ 大きくなれよ 良い繭はけよ」って喋りながらするんよ。お仕事を。
カズ:
それが蚕に伝わっているんですかね。
佃さん:
それは何ともねえ。蚕さんにきいてくれ(笑)
でも、はよ大きなれよってそれが愛情やろな。
大音の繭が質の良い繭なのは佃さんたちが気にかけているからだろう。
それだけ気に掛けるのは佃さんの蚕への愛情があるからだと思う。
それがあるから
佃さんたちは蚕に丁寧に接して、
良い繭が作れるように頑張っている。
だから大音の繭は良い繭なのだ。
愛のカタチ
カズ:
そんなに愛情を注いだ蚕も最後には命をいただくじゃないですか。
佃さん:
そうや。でもそれが蚕の一生なんや。
必要としている人のために繭をつくって、私らが役に立てる。
可哀想じゃなくて、それが蚕の一生の完成形なんや。
カズ:
なるほど。愛情のカタチが違うんですね。
蚕を蒸し器に入れる瞬間も同じことを思いますか?
佃さん:
私たちのために死んでくれる。
ごめんね ごめんねっていう感覚はないな。
中途半端でほっぽいたほうが可哀想やろ?
カズ:
すべてを使いきることにも蚕に対する尊敬の念があるんですか?
佃さん:
そう。
すべてを役に立たせているんや。
ペットにはかわいいという愛情。
牛にはおいしくなれよという愛情。
蚕には良い繭作れよという愛情。
愛情にもたくさんの種類がある。
蚕を愛し、尊敬しているからこそ
蚕の成長を助けるために頭をひねらせたり、
余すことなく命をいただこうとして
一つ一つの繭を丁寧に扱って糸取りをおこなったり
蛹は魚釣りのための餌にする。
佃さんは蚕に対して本当にたくさんの愛情を注いでいる。
でも佃さんの持つ愛のカタチを理解できない。
実際にお話を聞いたからこそ、
佃さんがいかに蚕を愛していて
どれだけ一所懸命にお世話をし、
尊敬しているかを感じた。
佃さんの愛情を知れば知るほど
自分が命をいただく生き物に対してあんなにもたくさんの愛情を注ぐ
ということが分からない。
蚕の一生の完成形って誰が決めたの?
私たちのために死んでくれるってどういうこと?
なぜ命をいただく対象にあんなにも愛情を注げるの。
いい繭になれよってどんな愛情のカタチなんだ。
分からないけど絶対にそこから目をそむけたくない。
考えることをやめたらなんか負けた気がする。
我が師匠の一人。ユカリさんに言われました。
「日本にはたくさんの文化がある。
あの村とこの村では大切にしていることは違う。
もののけ姫の世界にはアシタカの村、エボシ様の村、サンの住む山、
いくつもの世界があってみんな大切なものが違う。
それぞれの大切なものが違うからそれを守るためにみんな戦っている」
自分の世界の価値観で他の世界を見るのではなく、
他の世界の価値観を知ろうと思えた。
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