羽根をもがれた蝶よ叫べ
何度も青い蝶のアイコンをタップし中を覗くも、現実は変わらない。俺のB.Eアカウントは殺された。
凍結解除申請すら拒否され、コツコツ閲覧者を増やした俺の全ては塵に帰り、この情報社会から切り離された。トップ画面に映る「B.Eはユーザーの未来を予知する」「今日の"はばたき"は未来のネット流行語」の宣伝文句が、俺を無垢な新規の如く扱いやがる。
B.Eは投稿されたはばたきから大小様々な流行、炎上の火種を正確に予知し、社会をリードしているSNSだ。投稿が齎す影響力は格付けされ、栄誉、報償を産む。今や全世界のユーザーが歴史になろうと必死だ。俺も歴史になるはずだった。B.Eの社会的信用度がピークの今こそ、今日まで温めた俺のはばたきが世界に嵐を起こす。なのに俺の投稿はアカウントごと抹消された。
「くそ、あの未来人。俺の出したアイデアで作ったアプリのくせに、隠蔽する気か!」
ネットを通さぬ俺の叫びは誰にも届かない。
【続く】