インドネシア旅記:バリ島の料理教室
ヨンア(旅の同行人、韓国出身の同僚)が旅行前にこんなことを言っていた。
料理教室に参加したい
私にとって旅といえば今まで現地に住んでいる友人を訪ねて行くことだけが目的だった。
たとえそこが有名な観光地であっても、毎日友人宅でだらだらと日常生活を送るのが好きなのだ。世界遺産に囲まれた町に行った時も、私は世界遺産そっちのけで友人宅でゲームに勤しんだほどである。
だがヨンアは私と違って旅行を精一杯楽しみたいタイプだった。
その割にはあまり計画的ではなく、あれがしたいこれがしたいという話をしていても「申し込みは当日か前日の夜でいっか」というタイプでもあった。これは私も同じ。
そういうわけで料理教室も直前になって探し始めた。
いくつか料理教室はあったが、直前の申し込みでも快く受け入れてくれたのがこちら
▽バリ島の料理教室”Caraway Cooking Class”
スタッフは全員女性。
私たちが行った日は先生が1人、助手が2人だった。
朝ホテルまで車で迎えに来てくれて、まずは市場で食料調達。
野菜や果物の他に肉、魚、あとは下着なんかも売っていた。
日本や中国では見たことのない野菜が多く、私たちが足を止める度に先生が丁寧に名前や調理法などを教えてくれた。
ちなみに試食もさせてくれた。
アロマジンジャーとかいう謎のジンジャージュースが強烈だった。飲んで顔を顰める私たちを見て先生はゲラゲラ笑っていた。定番のおふざけアイテムだったようだ。体にはよさそうな味だったけど。
市場から車で10分ほどで教室へ。
犬の親子が出迎えてくれた。
そして他の参加者と合流。
ホームページには参加者が10人くらいのにぎやかな写真がたくさんあったけど、この日は私たちの他にオーストラリアからハネムーンに来たカップルだけだった。
彼らがハネムーンだと聞いた先生は私たちに「結婚は?彼氏は?」と聞いてきた。
正直に「独身、彼氏なし」と言うと、先生は
旅先で彼氏見つけて、ハネムーンでまたバリにおいでよ!
と(たぶん)励ましてくれた。
それを見ていたオーストラリア人カップルが「僕たちも旅行中に知り合ったんだよ」「ロンドンでね」「ね♡」
うらやましいな、新婚カップルめ。
ヨンアはというとものすごく苦い顔をしていた。
お互い頑張ろうね。結婚式に招待し合おうね。
▽調理開始
今日のメニューは、牛肉の煮込み、チキンサテー、フライヌードル、バリ風ピクルス、ココナッツクレープ。
まず簡単に先生がレシピを説明。聞いたことない調味料や食材がいっぱいあって正直よく分からなかった。
先生に言われるがままにソースのための具材をすり潰す。
重労働。
これはピクルスのための漬け液に入れていた気がする。小さい玉ねぎとにんにくと唐辛子。この3つは基本らしく、他のソースにも必ず入っていた。
欲しがる犬の親子。
クレープ生地。東南アジアスイーツでおなじみのパンダンリーフで色付けしたため緑色。
ブラウンシュガーとココナッツ。巻きます。
完成!
日本での料理教室は自分の分は自分で作ることが多いけど、ここはみんなで分担しつつ大皿料理を完成させるという感じだった。大事な工程は先生がしてくれたので失敗はない。
手前にあるチキンサテーは胸肉で作ったのにすごく柔らかくておいしかった。コツは焼き方なんだとか。もちろん先生が焼いてくれました。コツ知りたかった……!
がっつり料理を学ぶというよりは異文化交流を楽しむつもりで飛び込んでみるといいかも。先生が気さくなので話しやすいし、バリ島のお勧めスポットとかもいろいろ教えてくれた。
▽(おまけ)私たちの関係は?
料理教室で楽しいひと時を過ごし、ホテルに帰った私たち。
ヨンアが急に「あの時彼氏いるって言えばよかった……」と言い出した。
なぜ?
絶対私たちのことカップルだと思ってるよ!
あぁ……なるほど。確かに。バリ島に女二人旅なんてさして珍しい事でもないが、私たちはこの日お揃いのピアスにほぼお揃いの服を着ていた(意図的に合わせたのではなく、偶然そうなった)。バリ島にはペアルックの新婚カップルが多い。特に韓国人。だから私たちも、そう思われても仕方ないかもしれない。しかも思い返すとあの新婚カップルの反応、私たちのことをカップルだと認識していたなら腑に落ちる。
私はどう思われてもいいのだが、敬虔なクリスチャンであるヨンアにとって自身が同性愛者だと思われるのは何とも居心地が悪いようだった。