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怖いこわい中国

中国で生活していると嫌だなと思うことが多々ある。その度に怒ったり悲しんだりした。
その時のあれこれはこれ(中国と宗教)とか、これ(中国のおっさん)。

でも、怖いと思うことはそこまで多くない。
お盆までは勝手に怖い話を多めに書くと決意したので、今日はその、数少ない中国での怖い体験を書く。
*今日もオバケは出てきません。

▽町の共産党員

私が最初に中国に赴任したのは東部の地方都市だった。東部と言っても上海からは遥か遠い。北京も遠い。

業務を開始する前にまずしたことは、共産党員との面談だった。私が面談したのはそこの地方の公安のトップだったらしい。

机に「共産党員」と書かれたプレートが置かれていた。あとで分かったことだが、公安にいるのは共産党員だけなのだそうだ。無意味な党員プレートである。おそらく外国人に対する威嚇だろう。

どうしてそう考えたのかというと、面談の内容が攻撃的だったからだ。

最初は仕事についての質問しかされなかったが、何故か途中から「日本は中国に対して虐殺を行った」みたいなことを言われた。

私はそれに対する意見を求められた。

過去に固執していまだに誰かを恨み攻撃し続けるのは単なる負の連鎖だ、というような返事をした。正直面談でそんな話題を出されるとは思ってもいなかったので上手に切り返せなかった。

すると面談終了後、部屋を出ようとする私に対して

夜道に気をつけろよ

と、その公安の共産党員は言った。本当に言った。まじで言った。私は今も覚えている。妙に指が短い男だった。そんな指短男がありきたりな悪役みたいなセリフを言ったのだ。

こっわ。

と思った。色んな意味で。

へぇ中国人ってこんなんなんだ、と失望した。中国に来たことをものすごく後悔した。

その後、普通の中国人と仲良くなってからは「共産党員=こわい」とシフトチェンジし、できるだけ党員とは関わらずに済むようにと祈りながら生活した。

さらにその後色々な国の人と知り合い、話を聞くと公安で嫌な思いをした人は少なくなかった。が、そもそも公安での面接自体なかった人もいた。公的な機関から派遣された人や、数十人規模で外国人社員を雇っている企業なんかは個別の面談がなかったそうだ。うらやましい。

▽共産党員候補

どんなに「共産党員と関わりませんように」と祈っていても、彼らはどこにでもいる。

会社には必ず幹部に数人はいるし、大学だとクラスに一人は「共産党員候補」なる学生がいる。

そして共産党員候補の学生とその他の学生は寮の部屋が分けられている。
大学生寮に遊びに行った時に見せてもらったが、別に優遇されているというわけではなさそうだった。ドアの上に「党員候補」というプレートが貼ってあっただけで、間取りも家具も他の部屋と全く同じだった。

ただ候補生になると共産党に関わるクラスやボランティア活動などに参加する必要があるため、生活リズムは多少違っていたのだろう。

そんな、党員候補の学生と話していた時のこと。

何かのきっかけで内モンゴルは遠いという話題になった。その時、そこにいた一人が

「モンゴルも遠いです」

と言った。

まぁモンゴルは外国だし当然遠いよね、と言うと、

「いいえ、モンゴルは中国です」

と強く言われた。

え? 内モンゴルじゃなくて、モンゴル? こっっっっわ。

どうやら彼女は本気でモンゴルは中国の一部だと思っていたらしい。そういう教育を受けたのだと。だから私や他の学生が違うと言っても信じなかった。
内モンゴルでは中国語だけど、モンゴルはモンゴル語を話すんだよというと驚いていた。

その学生が誤解をしていただけなのかもしれないが、そこにいた何人かは彼女が「モンゴルは中国」と言った時何の反応もしなかったので、もしかしたらそういう教育を受けた人は多いのかもしれない。

例えそれが教育の結果だとしても、世界の真理は変わらないのだからいつかは失敗すると思う人もいるだろう。
いくらGoogleやYoutubeやtwitterを禁止したって、VPNさえあればアクセスできるんだから中国の若者は世界の現実と向き合うのだと期待する人もいるだろう。

残念ながら楽観的すぎる。

中国は、中国からその他の世界を締め出すことが可能なのだ。

GoogleもYoutubeもTwitterも、なくたっていいのだ。だって中国にはそれにとって代わるものがあるのだから。国内の市場だけで十分やっていけるのだから。

小学校から大学まで、外国人教師を雇っている学校も多いが、そこでの授業は自由ではない。特に宗教やLGBTについてはいまだにタブー視している。
マレーシア語の先生をやっている人が「マレーシア文化についての授業を求められたから、切っても切り離せない宗教について教えようとしたら学校から宗教の項目は除外しろと言われて困った」と言っていたのを今でも覚えている。

また、大学で日本語を教えているという中国人教師と話した時に、「私は共産党員ではないんですよ」と言われたので驚いた。
高等教育機関に勤める人は全員共産党員だと思っていたからだ。また、党員になると色々と優遇されると聞いていたので、国民はみんな党員になりたいのだろうとも思っていた。だが彼女は党員にはなりたくなかったという。

「党員になると外国へ行く度にめんどくさい手続きが必要になるから」と。

党員であってもなくても不自由だな、と思った。本人たちはそう思っていないだろうが。

一生中国から出ないのであれば、別に中華人民共和国モンゴル省が存在していると考えていても問題ないのだ。

▽どうでもいいけど怖かった話

これはおそらく私が今住んでいる地域限定の話だと思う(し、そう信じたい)が、二週間に一度くらいのペースで道が半死にのゴキブリで溢れることがある。

バルサンを焚いた後のような惨状が町のあちこちで見られる。

しかも半死になので微妙に動いている。

一時間もすれば回復したゴキブリはどこかへ消える。半死にの状態の時に運悪く踏まれたり轢かれたりしたゴキブリの死骸だけが雨に流されるまで残る。

とても怖い。

ところで中国とは全く関係ないのだが、この本が好きなので今回のタイトルはそこから拝借した。

*この本にはオバケが出てきます。

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