【楽曲語り】月が遠いですね。/初音ミク+Sohbana
こんばんは。自室からは窓の向き的に月がほとんど見れないししです。
今回語る楽曲はSohbanaさんの「月が遠いですね。」です。
大好きな曲です。一つ、お付き合いいただければと思います。
と、その前に
Sohbanaって誰?
という方のために軽く他己紹介を。
Sohbana | Twitter, Instagram | Linktree
現在わりと多方面から注目されている新進気鋭のボカロPです。
代表作:雨は実刑、ボーイズセイハロウ、CAMPAIGNRなど
・プロジェクトセカイ
(セカイノオト vol.1に収録『ARQETYPE』)
・テレビアニメ主題歌
(『16bitセンセーションAL』にて 中川翔子『65535』)
・KAITO18周年記念楽曲
(『マスネ・ゴシエイション』)
など、最近はデカめの案件も結構増えてきていますね。嬉しい。
とか言ってたら
うおおおおおおおおおお!!!!!!(号泣)
ということでこれから大注目のボカロPです。
TYQOON、これも凄い曲よ。是非聴いてください。
楽曲の基本情報(聴いて…!)
作詞・作曲・動画:Sohbana
絵:めり (アオワイファイ『知らん。』、水野あつ『生きる』など)
投稿日:2021年1月9日
「あまりにも照らすので」 (概要欄より)
1st EP「EPic Plustic」に収録された、「月が遠いですね」(こちらは題名に句点が無い)をリミックスする形で投稿された楽曲です。
僕のSohbana楽曲1選となります。
ちなみにリミックス前もリミックス前で句点アリに比べてサビ前側のノスタルジックが強めで全然別の価値がついてます、必聴。
⇩本筋から大脱線してるので読み飛ばす方は読み飛ばしていただいて…
というかEPic Plusticはアルバム限曲のSystem_Inferior、別ミックスの「月が遠いですね」、アレンジ版の「ハルシネイト・デイト [Rapture ver.]」とここでしか聞けない音源が3つある上に既存音源も「ピンシアニール」「ヴィーナスの義務感」「シックマイナスチック」と強すぎるメンツが揃っておりましてSohbana好きの方もそうでない方もSohbanaファンの方は特に買って後悔することなどありえないお客様満足度3000%の最強盤なのでここちゃんと読むような物好きの方はぜひともナニガナンデモお買い上げください…!! ⇧読み飛ばしゾーンここまで
夏目漱石が「I love you.」を「月が綺麗ですね。」と訳したという信憑性の低さで有名なあの逸話を念頭に置いたものですね。
まあ別に信憑性が低くてもいいんですよ。エモいので。
英題は「I Beg You」となっています。
直訳すると「私は貴方にお願いします」ですね。
まあただこちら慣用表現的な英語となっています。
自然な訳だと「どうかお願い」と言ったところでしょうか。
曲調の話をするパート
さて楽曲解釈とかいったん後回し。
この楽曲、ちょっと素敵なところが多すぎます。とりあえず曲調の部分から2つくらいピックアップして挙げていきましょう。
1つ目はそのかわいさ、心地よさです。
Aメロ、良すぎる。ミクさんのかわいらしく淡々とした歌声が、ピアノ主体の落ち着いた雰囲気のメロディに最高に似合っています。すこしざらついた音がを引き立てていて、
引くほど耳心地がいいです。永遠に柔らかい心持ちで聴いてられます。
そしてこの耳心地の良さに三十役くらい買ってる(私見)のがその圧倒的なまでの押韻です。
ということでちょっと今回、その韻踏みのヤバさを感覚的に理解してもらうため、各韻ごとにを着色・色分けして可視化する取り組みをしてみました。
こちらは冒頭のフレーズです。
を、韻が踏まれてる部分で着色すると…
…は???
なにこれ?たったの5行で7種類の韻が計26か所踏まれてます。なにそれ?
おかげ様でせっかく色分けしたのに赤とピンクを両方使う羽目になりました。種類多すぎて、できるだけ識別しやすい色選びしたんですがこれが限界だった…
ちょっと数えましたがひらがな換算で94/139文字が押韻に参加していますね。すごすぎ。
このとんでもない真夜中ラップがするっと耳を撫でながら脳まで届いていく感覚が、もう、ほんとに、実に素晴らしい。やばい。
はぁ…この素敵な音色を聴ける時間がいつまでも続けばいいのに…
と 思 っ て い た の か
この曲最大の強みは何といってもサビに入った瞬間に披露されるその2面性でしょう。
突然画面いっぱいに表示される歌詞字幕。ここまでの凛と、淡々とした印象から一転、感情をあらわにくっきりと歌いあげるミクさん。
花開いたようなギターシンセ全開の音色がそれらを包み込んで、全てを圧倒していく。
その様は月明かりが煌々と部屋に差し込んで暗闇を全て飲み込んでいくかのよう…
初見のときは僕もこの大変身にうっひょお~~~~~~~!!!!!!ってなりました。
まさに「衝撃」。目が覚めるような心地でしたね。夜の曲なのに。
かわいい&心地良いのAメロとかっこいい&ド迫力のサビ、あまりにも対照的です。それを一曲で摂取できるこのお得感・幸福感よ。
作風が幅広く、かつどんな曲調でも芯を持てるSohbanaさんの強みが存分に生かされた楽曲でしょう。そう、この人作風変幻自在だよね。(話せば長くなるため割愛)
「落ちてきて」という強い言葉も印象的ですよね。突出して感情的なワンフレーズ。一拍置いて「、どうぞ」と来るのもなんか強い言葉を使ってしまったことを後悔して慌てて付け加えてるみたいで大好きです。
いやもうほんと、最強のサビだと思います。
ありがとうございました。
歌詞の話をするパート
さてこの曲、歌詞もやばい。
ここからは歌詞考察を述べつつ良さを語りつつなパートです。
良ければお付き合いください。
題名が「月が遠いですね。」であることや概要欄の内容から、
「高嶺の花のあなた」の曲であると僕は解釈しています。
この曲における「月」は常に「あなた」と同義であると考えて問題ないでしょう。
主人公については「私」だの彼女だの呼びますが、「あなた」についてはちょっとリズム天国を想わせて気持ち悪いしわかりにくいですね。ライトはライトで一般名詞ゆえに読みづらかったのでやっぱり「あなた」、彼、などの表記で書くことにします。
以下、月に形容される彼を「ライト」と呼ぶことにします。()
いい遊び心ねじ込みポイントだと思ったのに…
月光の端、その向こうには何があるのか?
地球上で月光が届く、届かないの境界線を越境した先にあるのは「昼」ですが、それだと「真夜中の私」じゃなくなって曲が終了してしまいます。
じゃあ月面上で越境した場合は?たどり着く先は「月の裏側」となります(満月の時限定だけどさ)。
「月の裏側」。月は自転周期と公転周期が一致しているため常に地球に対して同じ面を見せて回っています。そのため基本的には私たちが月の裏側を見ることは決して叶いません。(1959年、ソ連の宇宙船により月の裏側が初観測されています。)
いつ見ても月にウサギさんがいるのはそういうわけなんですね。
遥かなる高み、愛すべき灯り、どちらも夜空からこの世界を照らしてくれる月を指す言葉です。
その全貌を、光の当たっていない裏側を、
思案を巡らせた果てに見てみたいんですって。
にしてもやっぱここの韻の踏み方えぐない???
そして謀りの果て、どうやら「私」はその全貌にたどり着いたようです。
私の見えないところであなたは何をして、何を考えているのかしら。
そこで見えたものは…
衝撃的な光景。
思うに、「光っていた」のではないでしょうか。
「月光の端を越境したい」という言い方からは「光っていない部分を見てみたい」というニュアンスもうかがえます。
眩しい光を放つ満月のような、完全無欠の、その裏側の顔をみたい。疲れたあなた、弱いあなた、私が支えになれるような、そんな「あなた」の姿を「私」は求めていました。
一応、裏のない本物の完璧超人なんて可能性もあるけど、そんなまさか…
しかし実際は一点の翳りもなかった彼の姿に「私」はとんでもない距離を感じます。
でもだからと言って「『ハイさようなら』はつまらない」。
「私」はある決意をします。
指を執るの「執る」は筆を執るの「執る」です。
じゃあ指を執るって何かと言えば、それはもうサムネイルの通り。
「きっとこの想いが届くことはない」と感じながらも彼女はスマホで彼にラブレターを送る決意をしたのです。
夏目漱石というペンネームの由来になったことで知られる「漱石枕流」という故事成語があります。
「石に枕し流れに口を漱(すす)ぐ」と言うべきところを「石に口を漱ぎ流れに枕す」と言い間違えた人が「石で口を漱ぐのは歯を磨くため、川の流れに枕するのは耳を洗うためだ」と言い訳した、という話から来た、頑固なこと、負け惜しみをすることを指す四字熟語です。
(ちなみに「漱」の字に「そそぐ」という読みは本来はないのでご注意)
流れに枕しても漱げない罪があるその様は「私」に似てるんですって。っていうかこれSohbanaさんが流れに枕するのは罪を漱ぐためってことですか?うはぁあぁ~!!!!!!
黒いカーソルというのはおそらくスマホのこと…だと思う!
MVのスマホ黒いし!!!
じゃあこの2つが似てるとはどういうことか。
ちょっと問いがふわっとしすぎていてここも断言はできませんが「実を結ばない努力」ってのでいかがでしょうか。
相手に飽きられるたら終わる「おもちゃとその持ち主」のような関係なんて、馬鹿みたいだと感じる「私」。
でもそんな関係であることすら忘れられるほどの光を前に盲目な恋になってしまえるなら、たとえ一時でも「馬鹿みたい」なんて気持ちを忘れて心から幸せになってしまえるなら…
それは多分、ありがたい。
ありがたいを2つ重ねているのは漱石の「吾輩は猫である」のラスト、酔っ払って水がめに落ちた猫の最後の言葉からの引用です。
「吾輩は死ぬ。死んでこの太平を得る。太平は死ななければ得られぬ。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい。」
…まぁ、これ以上語るのも野暮でしょう。
んんんんんんんんんんわからん!!!!!!!!!()
でもとりあえずあの人がいるのは最果ての空!
物理的にも離れてるよおおおおおおおお
遠いよおおおおおおおおおお
手が届かないよおおおおおおおおおお
次!!!!!!!!!!!!!
夜の太陽は月のこと。
レプリカは「複製品」のことです。
あまりに眩しいあなたを前に、私はあなたの代わりに人形でも抱えて悶えることしかできない。
私はあなたに釣り合わない。その思いは曇りとなって2人の間を遮ります。
ああ。あの人が「落ちてくれば」いいのに。
もう翳りなど知らない、光り輝くその姿で構わない。
そのままでいいからせめて私がいるこの世界に降り立ってほしい。
「人ばら」という表現、人+人系の名詞にくっついて複数を表す古語「ばら」だと考えられます。ただし「奴ばら」などの表現はあっても本来「人ばら」はという言いまわしは(多分)存在しません。
じゃあなぜ「人ばら」と言う表現なのかと言えばおそらくただの「人」であることを強調したいのでしょう。
「奴ばら」といえば複数人の人を貶める表現だったり、「殿ばら」と言えば殿様方だったりと、「ばら」の前には一種の属性としての人系名詞が来るみたいです。
ここではそういった属性を持たない「人ばら」である「あなた」が見たいと。こういう造語、僕の性癖なんで嬉しいですよね。
これは裏返しに「あなた」が一般人ではないことも示唆していますね。
「翳りなど知らないまま落ちてきて」と言う一見矛盾したセリフも「明るさ」以外にも彼との距離があることを示唆しています。ネガティブな表現であることからやっぱり物理的な距離というよりはなにかしらのステータスを持っていると考えたほうが自然です。
イケメン俳優だったりするのかな…()
部屋は本来、外界からの干渉を受けない隔絶された自分だけの世界です。
しかし月光はどうやったって毎日部屋に差し込みます。
彼は常に「私」を照らす。常に私の世界に写り込む。
忘れることも、見ないようにすることも許しては貰えません。
「私」は常にあの人のことを想わざるを得ないのです。
はー、つら。えぐすぎ。
月の満ち欠けというのは月の公転により月と太陽、地球の位置関係が変わることで起こります。
公転周期≒満ち欠けの周期は28日。
ということは角度にして毎晩の満ち欠けの幅はこちら。
約13度です。
月は毎晩13度動いています。
本来はそれに伴って毎晩13度ずつ満ち欠けが起こるはずなんです。
しかしなにせ彼は裏側まで光ってるスーパー完全無欠ツクヨミノミコト。
どれだけ傾こうが新月はおろか、光が弱まることすらありません。
常にフルパワー、フルムーン。
疎ましいと感じるのも、ムリは無い。
きっとちっぽけな私があたなの目に止まることはない。
それでも、今夜も「私」は筆を執る。
彼方のあなたへ筆を執る。
「撃ち落とせ」。
一見すると月に対する言葉に見えますが、月は撃っても落ちません。
ここはすぐ後ろの「鳴き言」に対して言ってるんじゃないかなあ…
泣き言では無く「鳴き言」。動物が鳴くときに使う漢字です。
「泣き言」を動物に例えてるんじゃないかなあ…
え、それを撃ち落とすとはどういうことかって?
知らん!!!わからん!!!!!
フィーリングだ!なんとなくエモいだろ!!!!!!!!
まあ、もう語ることはありませんね。
強いて言えば…
2番のサビ前のこのパートとラスサビ前のここもなかなかに楽しい韻の踏み方してるから見といてください。
以上で歌詞解釈を終了とします。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
ターミノウの話。
さて、最後にこの曲と関連しているかもしれない楽曲の話。
僕のSohbana4選である
『ターミノウ』の話です。
アルバム限定曲ですね。
初出は2022秋のボーマスにおいて頒布された「Vocaloid Encounter」という
「冬をテーマにした楽曲でPさんと歌い手がコラボするよ!」
というコンセプトのコンピへの書き下ろしです。
その後は1stアルバム「0ー0(ラブ・オール)」にも収録されています。
ちなみにBPMは250。これは現時点でSohbana楽曲最速の数字です。
ってかこれを歌いこなした歌い手のkamomeさんすごない???
これねえ、本当にめちゃくちゃかっこいいいんで是非聴いて欲しいんですよね。高速ラップで語られる圧倒的絶望感の失恋ソング。
「電車で遠くへ行ってしまうあなたは、私を連れていってはくれなかった」そんなストーリーの1曲になっています。Sohbanaさんの「最高速の別れの歌」じゃんという声もちらほら
さてちょっとこいつの歌詞を見てみましょう。
「Beg」。
覚えていらっしゃいますでしょうか。
冒頭で月が遠いですね。の英題は「I Beg You」であると紹介しました。
これねぇ~。Sohbanaさんは「歌詞の表現が被ってるときは意図的にかぶせている」とおっしゃっていたこともありますし、確信犯なのは間違いないんですよ。
追記:その後Sohbanaさんから言及があり、「音韻の理解が進む/作詞に充てられる時間が少なくなるにつれ『入れるならこの言葉しかない』状況も生まれ、守れなくなってきている」とのことでした。
まあこの楽曲時点では多分意図的なものだったはずなので…()
どちらも失恋の曲。
どちらも1曲の中での大きな曲調の変化が印象的な曲。
どちらもラップパートから始まる曲。
もうすこし歌詞を見てみましょう。
月が遠いですね。が「最果てのあの空」の曲なら、
ターミノウは「たかがちょっとの距離」の曲なんです。
この対比構造よ!!!!
このことに気が付いてから僕はこの2曲のことが頭から離れなくて、
その果てにちょっとした妄想に足を踏み入れました。
ええ、ここから先は完全に妄想です。
でもちょっと聞いていってくださいよ。
ターミノウは月が遠いですね。の前日譚説を!!!
いやだってさ、僕言ったじゃないですか。
「『あなた』は完璧超人以外にもステータスを持っている」
「イケメン俳優だったりするのかなあ…」って。
でもそれだったら「私」はただの芸能人ガチ恋厄介オタクなんですよ。
それにこの解釈は「私」が「あなた」にメールを送れることや「月の裏」を一応見れたこととも矛盾します。
でももしターミノウが前日譚だとしたら?
好きだったのに私を置いて都会に行ってしまったあの人。
芸能事務所に入ってテレビでキラキラ輝くスターになったあの人!
たかがちょっとの距離と思っていたのに、
もはや手の届かないところへ行ってしまったあの人!!
久しぶりに会ったらすっかり完璧超人になっていたあの人!!!
うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
…先ほども言った通りこれは特に考察的根拠はない私のただの妄想です。
でもとりあえず、月が遠いですね。とターミノウの対比が素敵だな~って話と、ターミノウ、いくらなんでもかっこ良すぎるな~、Sohbanaさんのことまた好きになっちゃったな~っていう感覚は持ち帰って頂ければ幸いだなあ。
終わりに。
Sohbanaさん!!!愛してる!!!!!
ということで今回はSohbanaさんの「月が遠いですね。」の話でした。
このスキがみなさんに伝わったなら、このスキでみなさんがこの曲に新しい見方を見つけられたなら、嬉しいなあ。
次はTYQOONの話とかもしたいねえ。
マジミラ後に感想的なアレも含めてまた書こうかなあ…
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