その日、ときのそらは渋谷を青に染めた ー ときのそら1stワンマンライブ『Dream!』
2019/10/6 東京都渋谷区
プロジェクションマッピングに彩られたVeats Shibuyaの階段を降りて、通路を抜けた先に広がる会場内は、既にアイドルの登場を待ち焦がれる人々の熱で満ち満ちていた。
ライブ会場独特の薄暗い照明、ステージ上のモニターに映る注意事項、聞き慣れたBGM……
そしてようやく私は、この日がときのそらの1stワンマンライブ開催日であることを実感することができた。
ときのそら 1stワンマンライブ「Dream!」
満を持して迎えられたこのライブは、3/27に発売されたときのそら(以下そらちゃん)のメジャーデビューアルバム「Dreaming!」からの楽曲と、今までの歌ってみた動画の曲目などから成る、言わばそらちゃんの音楽活動に於ける集大成的なライブである。
故に、涙ながらに思いを打ち明けられ、そしてこのワンマンライブの開催が発表された時、私は歓喜と感傷に駆られて感情がめちゃくちゃになっていた。
【6/27(木)20:00~】ときのそら 重大発表と大事なお知らせ!最後まで見てね【#ときのそら生放送】
(涙ながらに思いを語る場面は、BGMと相まって「もしかして引退するんじゃ……」という予感を覚えさせ、手足から血の気が引いていったのを今でも覚えている。推しは生きてるだけで素晴らしいが、何と言おうと活動してくれるのはやっぱり嬉しい)
それからグッズ販売、コール練習生放送などを経てアイドルとファン共々ライブへのモチベーションを上げていき、ついにこの日、1stワンマンライブ「Dream!」の開催を迎えた。
そらちゃんの登場を待つ中、その親友であり、活動初期からそらちゃんを支えてきた友人A(以下えーちゃん)から、注意喚起のアナウンスが読まれる。その声からは彼女自身の緊張も伝わってきて、彼女もそらちゃんと同じ思いでこの瞬間を迎えているんだと、思わず感慨深くなってしまった。
(追記:この時そらちゃんはえーちゃんの顔をじーっと見つめていたらしく、時折えーちゃんの笑いそうな声が聞こえてくる。こんな時でもいたずら好きで仲良しな二人が微笑ましい。)
それからまりなす(仮)、瑠璃姉、アオちゃん、ちゃんまり、噛み様、お銀、ヒメヒナ、萌美ちゃん(とエイレーン)、YuNiちゃん、葵ちゃん、シロちゃん、アカリちゃんからのお祝いメッセージが流され、「ああ、そらちゃんにはこんなにもたくさんの友だちが……」と、父兄面をしたまま泣きそうになった。(個人的に、シロちゃんの「そらともの皆や大切な仲間と共に、そらちゃんの願う世界を作ってほしい」という言葉がとても記憶に残っていて、あの時何故か私は神妙な面持ちで「はい」と答えてしまった)
そして再びえーちゃんからの注意喚起があると、会場の予熱は十分に。そしてBGMがフェードアウトすると、一つの映像が流れ始める。
そこに映し出されたのは、2017/9/7の生放送時のそらちゃん――そう、初配信時のそらちゃんである。青い髪飾りと黄色いリボン、今とは違う顔立ち……BGMだけが流れて音声はなかったが、私たちには確かに、彼女の声が聞こえていた。
それから次々と流れる思い出の映像――クリスマス配信、お正月配信、ミラティブQ反省会、生放送で歌った夢色アスタリスク、新衣装お披露目、水着お披露目、などなど……酸いも甘いも乗り越えて叶えたこのステージ上に、彼女のこれまでの軌跡が次々と映し出される。
少ししんみりとした空気を振り払うように開始されるカウントダウン……胸に星を抱えた旧衣装のキービジュアルが新衣装に変わると、私たちの視線の先に、普段の衣装を更にグレードアップさせたライブ用の衣装に身を包むアイドル――ときのそらが登場する。燕尾を模した腰の飾りと青いスカートをはためかせ、赤い髪飾りを揺らしながらステージに立つその姿は、まさにシンデレラであった。
大歓声の中から始まる「Dream!」。私たちそらともにとって、夢の時間の始まりであった。
最初の1曲目は可憐で力強い歌声が特徴の「ヒロイック・ヒロイン」。
行進するようなドラムロールとともに始まる2曲目は「Dreaming!」のリードトラックでもある「ブレンドキャラバン」。
ビターな雰囲気が胸を刺す、少し大人な3曲目「未練レコード」。
明るさと爽やかさに重なる切ないメロディが胸を締めつける4曲目「Wandering Days」。
そして第1部の最後を飾る5曲目は、ハイトーンボイスが聴く者のバイブスを高める、そらちゃんの代表的歌ってみた曲「太陽系デスコ」。
血潮は燃え上がり、熱気は既に渋谷の地下を埋めつくしていた。それは池袋も、配信も同じだった筈だ。始まりから今に至るまでそらちゃん、そしてこれからもずっとそらちゃん…そらちゃんだけのステージを見るというそらともの夢が、まさに現在進行形で達成されている瞬間だった。
(MCの間のももはすタイムは、いつもの生放送と変わらなくてなんだかほのぼのとした)
第1部から第2部への切り替え時に流れたのは、ほのぼのとした雰囲気に包まれた「ほしのふるにわ」のVTR。音楽に合わせて時々えー豆が落ちてくるのが何だか面白かった。
そして始まる第2部。
バンドテイストのギターリフと共に始まる6曲目「海より深い空の下」。普段はかわいいそらちゃんが見せる格好いい姿と歌声が、再び会場の熱を高める。
それからまた雰囲気を変えて、夜の静けさを思わせるメロディと爆音のベース音が響く7曲目「メトロナイト」。
8曲目は、窓に映る雨模様を眺めながら追憶に浸りたくなるような楽曲「そんな雨の日には」。
そんな前2曲から続いてきたノスタルジーにパワーとシリアスを与えるように歌われたのは、9曲目「IMAGE source」。
そして第2部最後、10曲目「アスノヨゾラ哨戒班」。高低差の激しい音程を見事に歌い抜いてみせた。
第2部と第3部を繋いだのは、思わず「ただいま」と言いたくなってしまう曲「おかえり」のVTR。いっその事ライブ会場に住んで、おかえりって言われ続けたい(?)
ライブ前、そらちゃんはTwitter上で「たくさん歌う」という言葉を三回繰り返した。その為に体力作りと基礎トレーニングを行ない、歌と踊りを特訓し、息切れを落ち着ける方法などを学んだと言っていた。それだけこの1stワンマンライブは「歌」に特化したものにしたかったのだという。
こうした思いはきっとえーちゃんにも伝えていたのだろう。この時間までに10の曲を経てきたが、そらちゃんからも、そらともからも、一切の疲弊を感じられなかった。歌も踊りも、演出もセトリも完璧なものだと感じられた。まさに、努力が生み出した奇跡を私たちは目撃していたのだ。
そして第3部が始まる。
11曲目は、昨年のニコニコ超パーティーでも歌った「オツキミリサイタル」。綺麗なイントロから始まる音楽、手拍子、SSAを埋め尽くす青い光はまだ記憶に焼きついている。
12曲目は「冴えない自分にラブソングを」。みんなで声を揃えた「らぶらぶらぶらぶらぶらぶあいうぉんちゅー」のコールが、会場の一体感をより強固にした。
13曲目は、同じく事前にコールの練習をしていた「ファンサ」。愛のこもったsoraビームは、私の心を焼き焦がした。(余談ではあるが、私は最初この曲をそらちゃんのオリジナル曲だと勘違いしていた。それだけ歌詞に重なる部分が多いのかもしれない)
そして14曲目、このライブで初披露の新曲「フレーフレーLOVE」。この曲を寧ろそらちゃんに向けて歌いたいと、歌詞を聞いて私は思った。
それに続いて歌われた15曲目「コトバカゼ」。心地よい四つ打ちのリズム、透き通る歌声、恋焦がれるように胸を刺す歌詞が沁み渡る。
――始まりがあれば終わりがある。それは「夢」も同じかもしれない……いよいよ最後の曲を迎える。涙声で告げたその16曲目は「好き、泣いちゃいそうだ」。今にも泣き出してしまいそうな歌声に、私たちも思わず涙ぐむ……痛くて苦しくてこんなにも暖かい。
ライブの終わりを告げたアイドルはステージを去る。普段であれば、私たちの「いかないで」は届かない。だけどこの日は違った。アンコールのリズムで叫ぶ「いかないで」は、私たちのアイドルを笑顔と共にもう一度ステージに呼び戻した。こんなノリで生まれる一体感は、やっぱりライブの醍醐味かもしれない。
アンコール1曲目(17曲目)は、ホロライブの全体曲「Shiny Smily Story」。最初はそらちゃんとえーちゃんとあん肝の三人(二人と一匹)だけだったホロライブは、今やこれだけ大きな一つの「箱」になった。最初は叶う筈ないと思っていた夢も、今はこうしてたくさんの仲間やファンと共に追えるようになったこと……本当に良かったなと思う。
そして次に披露されたのは音楽ではなく、言葉だった。そらちゃんは手紙を取り出し、そらともに向けてそれを読み上げる。今までペンライトを振り上げていたそらともも、この時は神妙な面持ちでその言葉に聞き入る。
初めはこんな風にライブができるなんて思ってもいなかったこと。
初配信の時のこと。
そらともと出会えたこと。
これまで2年間の色々なこと。
メジャーデビュー、ラノベデビュー、ドラマデビューができたこと。そしてこの日、ワンマンライブができたこと。
そらともへのありがとう。
横アリへの夢が、もっと強くなったこと。
涙ながらに述べられたこれらのことを、私たちそらともも涙なしに聞くことができなかった。夢を貰っていたのは私たちそらともの方だ。ありがとうを伝えたいのは私たちそらともの方だ……その思いは、そらともみんなが同じであった筈だ。
私たちができることは、そらちゃんの背中を押すこと。
後ろを向いて自分の涙が止まるのを待つそらちゃんに、そらともは全力の拍手と声援を送る。
それからしばらく、拍手の音とBGMの音、物言わぬそらちゃんの後ろ姿だけが会場の時間を支配する。
そして「うん」と頷き、手に力をこめてもう一度振り返ると、さっきまでの涙は拭い去り、そらちゃんはもう一度アイドルとして私たちの前に立つ。私たちはそれを、歓声を以て迎える。
アンコール2曲目(18曲目)に歌われたのは、そらともにとっても思い出深いあの曲「夢色アスタリスク」。高音を心配される彼女はもういない。力強く透き通る、夢を追う少女の本気を見せつけるような歌声は、会場に熱い大合唱を呼び起こした。
ついにやってきた本当の最後……アンコール3曲目(19曲目)は「Dream☆Story」。そらちゃんの自己紹介曲でもあり、普段は一番最初に歌うことが多く、この曲が大トリになることを想像していた人は少ないかもしれない。だがこの曲が最後に来ることで、ここからが「夢」の始まりであることを改めて示してみせた。夢の終わりから続くのは新しい夢の始まりであることを、そらちゃん、そしてえーちゃんは教えてくれた。
こうしてときのそら 1stワンマンライブ「Dream!」は終演を迎える。そらちゃんがステージを去った後も、そらともの歓声と拍手が止むことはなかった。
この日、1stシングル「フレーフレーLOVE」の発売、そしてミニアルバム製作の計画が発表され、まだまだ勢いを増していく私たちのアイドル、ときのそら。そんな彼女の活躍を、私はいつまでも応援し続けたい。