発想の勝利とリアル店舗の未来に思うこと②。
「ブランディング広告」の制作には、「弊社の価値とは何だろう?」「この商品の価値とは何だろう?」という、ある種普遍的な問いを企業側やクリエイターがともに掘り下げていく作業が欠かせません。
そして、その解に辿り着いたら、コアとなるメッセージは、数週間や1年以内といった短期ではなく、中長期に亘って使い続けるのが基本です。
元旦に掲出された広告の「わたしは、私。」というブランドコミュニケーションのキーワードも2017年から継続して使用され、今年で3年目になります。
この広告のコアメッセージは、ecサイトなどの台頭で否応なく変革が求められる百貨店業界の中、そごう・西武は「常識や前例に捕らわれることなく、自分らしいアイデアや意見を持ち寄ることで、顧客から必要とされる百貨店になれる。」といったものです。そのメッセージを伝えるための元旦広告として、今回はコピーをひっくり返すという手法を用いました。
元々、そごう・西武の前身となる西武百貨店は、三越や高島屋、大丸といった老舗の百貨店がすでに存在する中で事業をスタートさせた、いわば後発隊でした。
そこで、「商品を売るのではなく、ライフスタイルを売る。」という既存の百貨店とはまったく異なる視点で事業を展開し、広告表現についても、1980年代に糸井重里さんが書いた「不思議、大好き。」「おいしい生活。」といったコピーに見られるように、「足を運べば、新しい文化に出会える。暮らしが変わる百貨店。」といったコンセプトの広告で一世を風靡しました。
今回の広告も、コピーを逆から読ませるというトリッキーな方法を使うことで、そごう・西武は「他にはない斬新で柔軟な発想を持つ百貨店。」というイメージをユーザーに与えることに成功しています。
年始の「ブランディング広告」といった意味では、大成功だと思います。
そして、次のフェーズとしてそごう・西武が取り組んでいかなくてはならないことは、「常識や前例に捕らわれることなく、自分らしいアイデアや意見を持ち寄ることで、顧客から必要とされる百貨店になれる。」といったメッセージをいかに売り場で展開していくか、ということでしょう。
かつての西武百貨店のように「そごう・西武に足を運んだら、ワクワクするようなことが待っていた。」「新しいカルチャーに出会えた。」といった体験を提供できたら、百貨店の未来も大きく変わっていくかもしれません。
来年の元旦に「わたしは、私。」の広告を目にするまで。
そごう・西武がこの1年間でどんな変化を起こしてくれるのか、大いに楽しみです。
Oneness
宍戸 美子