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証券アナリスト科目Ⅱ -財務分析-

1.      はじめに

どうもしし丸です!

 

YouTubeチャンネル【しし丸の証券アナリスト学習塾】では、しし丸式の講義動画を通して、たくさんの学習者様のサポートをしてきました。

 

証券アナリスト試験の内容は一見難しいですが、理屈を押さえてしっかり納得しながら進めていけば、必ず合格できます!

 

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そんなあなたの合格への道、しし丸が少しでもサポートできたら嬉しいです♪

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内容

1. はじめに... 1

2. 総論... 4

① 企業会計と会計制度... 4

② 貸借対照表・損益計算書... 8

③ キャッシュフロー計算書... 13

3. 資産会計... 16

④ 債権の評価... 16

⑤ 有価証券(1)... 19

⑥ 有価証券(2)... 24

⑦ ヘッジ会計... 27

⑧ 棚卸資産... 31

⑨ 固定資産と減価償却... 36

⑩ リース会計... 41

⑪ 減損会計... 48

⑫ 繰延資産... 50

⑬ 経過勘定... 53

4. 負債会計... 55

⑭ 引当金... 55

⑮ 退職給付会計... 58

⑯ 社債の評価... 65

5. 純資産会計... 67

⑰ 株主資本... 67

⑱ 新株予約権... 71

⑲ 包括利益... 73

6. 損益会計... 78

⑳ 費用と収益... 78

21 税効果会計... 81

22 削除... 89

23 合併... 89

7. さいごに... 95


2.      総論

①     企業会計と会計制度

財務分析総論第1回講義はじめていきましょう。

今回は企業会計と会計制度について解説していきます!

 

財務分析は、企業の財務、つまり資金の状態を分析するものです。

その資金の状態は会計というルールにしたがって表されます。

第1回目の講義はそもそも会計とは何かということと、このルールの基盤となる会計制度について、学びます。

基盤をしっかり固めて、これからの勉強に良いスタートをきりましょう!

それではいきましょう!

 

企業会計とは

会計の話に入る前に、そもそも企業って、何をしているのでしょうか?

色々な企業がありますが、どの企業も行っている活動は同じです。

それは資金を集め、活動することで付加価値を生み出し、利益を上げ、税金を納めるということです。

企業会計とは、このような企業の事業活動を定量的に表したものです。


その目的は何でしょうか?

目的は大きくわけて3つあります

 

1つ目は、企業の経営状態を外部の利害関係者(つまり投資家や金融機関、取引先等)に対して詳らかに開示するためです。

経営状態は財務諸表という形で作成され、開示されます。この目的のための企業会計を財務会計といいます。

 

2つめは、企業の経営状況を把握し、今後の経営方針の決定に役立てるためです。

活動を定量的に表すことで、企業の経営状況の把握をすることがで、今後の経営方針の決定の際の貴重な材料となります。この目的のための企業会計を管理会計といいます。

3つめは、税金の計算根拠となる、課税所得(利益と類似しますが若干異なる)を計算するためです。企業は必ず税金を納めなかればなりません。適切な税金を計算するための企業会計を税務会計といいます。


証券アナリスト試験の財務分析では、1つ目の財務会計を基礎とした学習が必要とされます。

試験では、

- 会計の制度が理解できているか、

- 財務諸表・各計算書の意味を理解しているか、

- 資産・負債・純資産・損益などを評価することができるか、

- 与えられた情報を元に財務分析を行い計算することができるか、

ということが問われます。

一見難しそうですが、会計や財務分析はすべて一環したロジックさえおさえてしまえばどのような角度からの問題にも答えることができるので、着実に学んでいきましょう!

 

会計制度

企業会計とは何かがわかれば、次は会計の制度、つまりルールについて学ぶ必要があります。ここでポイントとなってくるのは根拠法と開示資料の種類です。根拠法から見ていきましょう。


根拠法

根拠法とは、企業に対して、会計の規制をかける根拠となっている法律です。

冒頭で3つの企業会計を上げました。3つのうち財務会計と税務会計は、企業の外部に対しての開示を目的にしています。この外部に対しての責任をはたすように、国は財務会計と税務会計を一定の企業に義務付けています。このように法律によって義務付けられた企業会計を、制度会計といいます。

 

そして制度会計の根拠法は大きく分けて3種類

財務会計に適用される、金融商品取引法と会社法

税務会計に適応される、法人税法です。


試験では財務会計に適用される、金融商品取引法と会社法の区別ができているかどうかが問われます。なので、それぞれの目的、対象、作成書類、規制について区別をつけて理解する必要があります。 順番にみていきましょう。

 

金融商品取引法は投資家を守るための法律です。公正な金融取引を保証することで投資家を守り、健全な金融取引の促進が目的となっています。

一方で会社法は 会社を守るための法律です。株主と債権者の利害関係を調整することが目的となっています。利害関係の調節って何?と今思いましたか?例えば企業が多くの利益を出したとき、それを株主に還元するのか、債権者に返済する資金として蓄えるのか、判断しなければなりません。このような株主にとっては有利だが債権者にとっては不利、またはその逆の状況に陥った時は双方の利害関係か衝突し、もめてしまします。 このような事態に陥らないために、ある程度のルールが決められているのですね。

 

次に規制の対象となる会社ですが、金融商品取引法は上場会社等です。上場会社とは、その会社の株が東京証券取引所などの取引所に上場され、一般的に取引が可能である会社をさします。

一方で会社法はすべての会社となっています。

これもそれぞれの根拠法の目的を鑑みれば違いがはっきりします。

金商法が対象を上場会社だけにしているのは、株式の売買が一般的にされる会社は、上場会社がほとんどだからです。会社の株や債券に投資をする際、そのほとんどが上場会社ですよね。

会社法は会社を守ることが目的なので、上場・非上場は関係なく、すべての会社が対象となっています。

 

作成書類についてはどうでしょうか。金商法、会社法ともに、書類の作成を義務付けています。

金商法では、財務三表と呼ばれる損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書に加えて、純資産の変動を表す株主資本等変動計算書、そしてその他を補う附属明細書の作成が義務づけられています。

会社法では金商法と比較してキャッシュフロー計算書は求められないものの、各計算書類に記載された注記を1つの書面として表す個別注記表の作成が求められます。


金商法、会社法ともにそれぞれ開示規制を設けています。開示規制は、これから解説する各開示資料の作成及び開示を義務付けるものです。そして注目すべきは会社法には配当規制というものがあります。これは純資産会計のパートで詳しく解説しますが、会社が挙げた利益の中から、株主に還元できる、つまり配当金としてを払える金額を定めるルールです。そう、会社法の目的が、株主と債権者の利害関係の調節、ということから、この配当規制が会社法にだけ適応されるのは納得がいくのではないでしょうか。

 

根拠法について、大丈夫でしょうか?ここから、開示資料についてみていきます。

 

開示資料の種類について見ていきましょう。開示資料の種類は、試験ではほぼ毎回出題される重要項目になるので、納得しながら、理解しながら聞いてください。

 

大きく分けると開示には3種類あります。法定開示、適時開示、自主開示です。

 

法定開示は、金融商品取引法に基づき、上場企業が必ず順守しないといけない情報の開示です。閲覧場所は金融庁が管理しているEDINETとよばれる、ウェブサイトで誰でも24時間365日閲覧することができます。

尚、財務諸表はこれらの資料の一部として組み込まれ、公認会計士または監査法人によって監査されます。

内容としては、有価証券報告書、四半期報告書、臨時報告書の3つがあります。

有価証券報告書は、経営状況、経理状況の情報を記載した報告書です。各事業年度の3ヶ月以内に、財務局へ提出する必要があります。

事業年度の3か月以内ということですが、たいていの企業の事業年度が4月から翌3月ですので、6月末までに提出しています。

 

実際の有価証券報告書の表紙には、根拠法の金融商品取引法や、提出先の財務局の記載があります。様々な経営指標、会社の沿革、事業内容と、ありとあらゆる情報が記載されています。また、この後で学ぶ各財務諸表も含まれます。

 

法定開示は情報量も膨大で作成にコストもかかることから、開示回数が限られたものとなっています。 しかし投資家にとっては、情報をタイムリーに開示してほしいというニーズがあります。そのような必要性に答えるのが適時開示です


適時開示は証券取引所の規制に基づき開示されています。閲覧場所は東京証券取引所が運営するTDnetです。代表的な決済短信は、株主総会によって確定される前に開示される情報です。最終決定ではないんだけれども、大幅に変わることはない情報が開示されます。


最後に自主開示です。自主開示はその名の通り、企業が自主的に開示する情報です。これはIR(投資家との関係構築、Investment Relation)のために行われます。企業のIRページを見にいくと、結構面白いですよ!


さて開示制度について、大丈夫でしょうか?


このような開示資料は誰でもみることができるので、あなたも、ぜひ自分の好きな会社の資料を除いてみてください。

財務分析は会社の分析を学ぶ科目です。 実際に資料を見ることで、机の上だけでの勉強から、実務へと目線を上げることができ、より効果的に知識の取得ができるようになります。

②     貸借対照表・損益計算書

 

貸借対照表・損益計算書について学びましょう。ぞれぞれの仕組みと目的に加えて、証券アナリスト試験で問われるポイントについてもしっかり解説していきますよ!

 

貸借対照表

貸借対照表はある1時点での企業の財政状況を表すためのものです。財政状況とは、資金の調達源泉と運用状況のことです。つまり、どのようにお金をもってきて、それがどのように使われているかを明記しているものです。


右側の貸方が資金の調達源泉、つまりどのようにお金が入ってきたかを表します。

左側の借方が運用状況、つまり調達された資金が決算時点でどのような姿になっているかを表します。

 

右側の貸方は負債の部と自己資本の部に分かれます。借入を行い負債として資金を調達したのであれば、負債の部に計上され、増資として資金を注入すれば自己資本の部に計上されます。

左側の借方は、運用状況つまりどのような資産を形成しているかを表すので資産の部とされています。


貸借対照表はバランスシートと呼ばれます、頭文字をとってB/Sとよばれます。その由来は2つあります。

1つめは、左側の資産部分と右側の負債、資本の部分の合計が完全に一致することからです。これは絶対です。一致しない場合は何かがまちがっています。

2つめは、残高表という意味でのバランスです。皆さんも海外旅行に行ったときホテル明細書の一番下を見てください、そこにはバランスと表記されるはず。これは支払い残高という意味です。貸借対照表は資産の運用状況を表すので、それはつまりどのくらいの財産の残高が積みあがっているかを表すことと同義です。

このように理解すると、貸借対照表のイメージがすっと頭に入ってくるのではないでしょうか。

 

証券アナリスト試験のポイント

証券アナリスト試験では貸方、借方という名前を覚える必要もなければ簿記では必須の仕訳を覚える必要もありません。

では何が問われるのか、それは貸借対照表を作成する上でのルールです。

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