サピックス:4年生:430−19:理科のメモ
植物の生存戦略に関する授業ノート
1. 双子葉植物と単子葉植物の違い
植物は種子の初期葉(子葉)の数によって分類されます:
双子葉植物:2枚の子葉を持つ
単子葉植物:1枚の子葉を持つ
これらの違いは植物の構造に影響を与えます。
1.1 根の構造の違い
| 特徴 | 双子葉植物 | 単子葉植物 |
|------|------------|------------|
| 主根 | あり(太い中心根) | なし |
| 側根 | 主根から分岐 | ひげ根(細い根が束状) |
| 根毛 | 根の先端部分に存在 | 根の先端部分に存在 |
根毛は水や栄養分を吸収する重要な役割を果たします。
1.2 茎の構造の違い
双子葉植物と単子葉植物の茎の断面図:
双子葉植物の茎断面: 単子葉植物の茎断面:
┌─────────┐ ┌─────────┐
│ ┌───┐ │ │ ・ ・ ・ │
│ ┌┘ └┐ │ │・ ・ ・│
│ │ ・ │ │ │ ・ ・ ・ │
│ └┐ ┌┘ │ │・ ・ ・│
│ └───┘ │ │ ・ ・ ・ │
└─────────┘ └─────────┘
内側:導管(水・無機塩類) ・:維管束(導管と師管)
外側:師管(有機物) 散在している
中央の円:形成層
双子葉植物:導管と師管が規則的に配列され、形成層があるため太くなりやすい
単子葉植物:維管束が散在し、形成層がないため太くなりにくい
1.3 葉の構造の違い
| 特徴 | 双子葉植物 | 単子葉植物 |
|------|------------|------------|
| 葉脈 | 網状脈 | 平行脈 |
| 形状 | 様々な形 | 細長い形が多い |
葉の断面図:
表皮
↓
┌─────┐
│ 導管 │ ← 上側
│───────│
│ 師管 │ ← 下側
└─────┘
↑
表皮
2. 植物の水の移動と蒸散作用
2.1 水の移動経路
根から吸収(根毛)
根の中を通る
茎を通る(導管)
葉に到達
気孔から蒸散
2.2 蒸散作用の役割
水の吸い上げ:根から葉まで水を運ぶ原動力
水分調節:過剰な水分を排出
体温調節:気化熱により植物体を冷却
2.3 蒸散量の違い
実験結果:
| 処理 | 蒸散量 (mL) |
|------|-------------|
| 無処理 | 28 |
| 葉の表にワセリン | 21 |
| 葉の裏にワセリン | 9 |
| 葉を除去 | 2 |
結論:
葉の裏側からの蒸散量が最も多い(19 mL)
葉の表側からの蒸散量(7 mL)
茎からの蒸散量(2 mL)
3. 植物の適応戦略
水の効率的な利用:根から吸収した水の99%を蒸散させることで、栄養分の運搬と体温調節を行う
気孔の調節:乾燥時には気孔を閉じて水分損失を防ぐ
葉の構造:気孔が裏側に多いことで、過度の蒸散を防ぎつつ効率的なガス交換を実現
4. 実験と観察
4.1 水の移動を確認する実験
赤インクを混ぜた水に植物を入れる
ビニール袋をかぶせる
しばらく置く
茎と葉の断面を観察
結果:
茎の内側(導管)が赤く染まる
葉の上側(導管)が赤く染まる
ビニール袋の内側に無色の水滴がつく
4.2 蒸散量を調べる実験
試験管に水を入れ、表面に油を浮かべる
植物を挿す
葉にワセリンを塗る、または葉を除去する
水位の変化を観察
結果:上記の表を参照
4.3 気孔の観察
コバルト紙を用いて気孔の分布を観察できます。
葉の裏側の方が早く色が変わる(青→赤)
5. 植物の分類例
| 双子葉植物 | 単子葉植物 |
|------------|------------|
| 桜 | トウモロコシ |
| アサガオ | イネ |
| ヘチマ | アヤメ |
| ホウセンカ | 笹 |
| カタバミ | エノコログサ |
| | ツユクサ |
| | 麦 |
まとめ
植物は動けないという制約の中で、効率的な水の利用と栄養分の運搬を実現しています。双子葉植物と単子葉植物では構造に違いがありますが、どちらも蒸散作用を利用して水を移動させ、生存に必要な機能を果たしています。これらの適応戦略により、植物は様々な環境で生き抜くことができるのです。
ポイントチェック
Q: 双子葉植物と単子葉植物の主な違いは何ですか? A: 種子の初期葉(子葉)の数です。双子葉植物は2枚、単子葉植物は1枚の子葉を持ちます。
Q: 双子葉植物の根の特徴は何ですか? A: 太い主根があり、そこから側根が分岐しています。
Q: 単子葉植物の根はどのような構造をしていますか? A: 主根がなく、細い根が束状になった「ひげ根」の構造をしています。
Q: 植物の茎にある「形成層」の役割は何ですか? A: 新しい細胞を作り出し、茎を太くする役割があります。
Q: 双子葉植物と単子葉植物の葉脈の違いは何ですか? A: 双子葉植物は網状脈、単子葉植物は平行脈です。
Q: 植物の「蒸散作用」とは何ですか? A: 葉の気孔から水蒸気として水を排出する作用です。
Q: 蒸散作用の主な役割を2つ挙げてください。 A: 1) 根から葉まで水を吸い上げる原動力となる、2) 植物の体温調節をする。
Q: 実験結果から、葉のどの部分からの蒸散量が最も多いことがわかりましたか? A: 葉の裏側からの蒸散量が最も多いことがわかりました。
Q: 植物が根から吸収した水の約何パーセントを蒸散させていますか? A: 約99パーセントを蒸散させています。
Q: 赤インクを使った水の移動実験で、茎のどの部分が赤く染まりましたか? A: 茎の内側にある導管が赤く染まりました。