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遊戯王カード列伝『スケープ・ゴート』編

はじめに

どうも、火蛍です。
今回は『スケープ・ゴート』について紹介していきます。

このカードはアニメDMにも登場したことがある古参カードなのですが、長い歴史の中で明確に役割を変えたことがあるという珍しい1枚です。
そんなカードの歴史を見ていきましょう。

スケープ・ゴート

このカードを発動するターン、自分はこのカードの効果以外ではモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
①:自分フィールドに「羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)4体を守備表示で特殊召喚する。このトークンはアドバンス召喚のためにはリリースできない。

初登場は2001年4月1日発売のLIMITED EDITION3 - 城之内パック -です。

第一回のゴーズ以来となるトークンを生成するカードです。
その数なんと4体、汎用的に使用できるカードの中ではいまだに最高クラスの数です。
一方で初期のカードにしては珍しく発動時の制約が付いており、このカードを使用するターンは他にモンスターを出せなくなります。

主な活躍期は2002~2007年、2017~2019年ごろです。
このカードもサイバードラゴン同様に明確な活躍期が2度あるのですがあちらと違って時期によって運用方法が明確に異なります。
そんなトークン生成カードがこのゲームの中でどんな活躍をしてきたのか、早速見てみましょう。

このカードが環境に与えた影響

2002年~2007年

スケープゴートは原作やアニメですでに登場していたカードということもあって登場時からすでに期待がかかっていたのですがその能力は当時基準で見ても相当な強さを持っていました。
この頃の用途は『時間稼ぎ』です。
1ターン中に並ぶモンスターが1~2体だった時代において攻撃を受け止める壁がいきなり4体出てくるというのはどう考えてもライン越えです。

主な使用タイミングは相手モンスターの攻撃宣言時で、攻撃に合わせてトークンを展開してその攻撃を受け止めます。
とはいってもこのカードはフリーチェーンの速攻魔法なので他のタイミングでも使用できます。
例えば大嵐やサイクロンに巻き込まれそうになってもそれにチェーンしてスケープゴートを撃てばとりあえず羊トークンが4体出せます。

昔はあるあるだった光景。今でも04環境で遊ぶとめっちゃ見ます。

そんなこんなで防御やコンボに引っ張りだこなスケープゴートですがこれを対策するためにとある能力が注目されます。
それは『守備貫通』と『全体攻撃』です。
いくら数が多いとは言ってもステータスは攻守0、守備貫通をされればそのダメージがモロにプレイヤーに入りますし、全体攻撃があるとせっかく出したトークンもあっさり全滅します。
当時この能力を持っていたモンスターで代表的なものは守備貫通だとイグザリオンユニバースやスピアドラゴン、全体攻撃だと阿修羅などがあります。
イグザリオンユニバースは2004年環境のゲートボールを遊んだことのある方にはなじみ深いかもしれませんね。

さて、ここまで読めば単なる強い時間稼ぎカードですが羊トークンには一つの問題がありました。
それは羊トークンがコストとして使い放題だったということです。
羊トークンはアドバンス召喚のリリースには使用できませんが逆を言えばそれ以外はなんの縛りもありません。

というわけでスケープゴートはコンボ用のカードとしての面も持つようになります。
昔のネットミームとして有名なエネミーコントローラーのコントロール奪取効果のコストにしたり、今は亡きキャノンソルジャーのバーン効果のコストでリリースされたりと用途は様々です。
中でも一際凶悪だったのが羊トークンをリリースして突然変異を発動し、サウザンドアイズサクリファイスを呼び出すというもの。
羊トークンが1体でも残っていればそれが突然変異を起こして強烈なロック効果を持ったサウザンドアイズになるのですからたまったものではありません。
当時は発動されたスケープゴートを止める術は神の宣告ぐらいしかなかったのですがライフコストが今よりはるかに重く見られており、発動無効も軽視されていた時代なのでどちらかといえばマイナー寄りのカードでした。

そんなこんなで時間稼ぎからヤバいコンボまでデッキを問わずに使われてきたスケープゴートはヤバいコンボの実行犯たちと共に2005/05/01に制限カードになりました。
その後も時間を稼ぐ防御カードとしての役割は失われることなく、汎用カードとして高い採用率を維持し続けることになります。

2017~2019年

長らく制限カードに留まっていたスケープゴートはトークンがエクシーズ召喚に使用できない仕様や展開の多様化から2013年に制限解除され、それからしばらくは一部のカジュアルデッキでコンボ用のカードとして細々と使われている程度のカードになっていましたが2017年に転機が訪れます。
リンク召喚の登場とそれに伴う大規模なルール変更、俗にいう『リンクショック』の到来です。

このリンクショックの影響でこれまでエクストラデッキを多用していたデッキはリンク召喚を使用せざるを得なくなり、既存のデッキの大半が解体・再構築を余儀なくされました。

そんな中、スケープゴートの運命を変えるルールが発表されました。
それはリンク召喚の素材にトークンが使用できるというものです。
こうしてスケープゴートは新たな役割を持つカードとして生まれ変わります。
それは『リンク召喚の素材役』です。
上述した通り、スケープゴートは1枚で4体の羊トークンを生成するカード。
言い換えれば1=4が成立します。

これに伴い、スケープゴートの発動タイミングも変わります。
これまで相手の攻撃宣言などに合わせて発動していたのですが、この時代は『相手ターンのエンドフェイズ』が主流になりました。
手札誘発や汎用防御札の充実、ルール変更の影響でゲームが低速化したこともあって羊トークンを出さずともLPを守り切れる場面が格段に増えました。
むしろ下手にLPを守って手数を減らすぐらいなら羊トークンをもりもり使って盤面を返した方がいいという方向にシフトしたのも大きいです。

リンク召喚は比較的早めの段階でヴァレルロード・ドラゴンという強力なリンク4が登場したこともあり、エクストラデッキへの依存度が低い中~低速デッキの多くがヴァレルロードを呼び出すつなぎとしてスケープゴートを採用するようになりました。
トリックスターや黎明期のオルターガイスト、メタビートなどでの採用が多かったです。

スケープゴートが攻撃力3000のモンスターになって殴りかかってくる時代が来るとは誰が想像できたでしょうか。

リンクショックで既存のテーマの多くがダメージを受ける中、テーマとしての動きが薄い低速デッキはスケープゴートによる手数の優位で環境の中心に位置するようになります。
いい感じに詰めていたのにエンドフェイズにスケープゴートを撃たれてそこからのリンク召喚で高打点を出されて負けなどというのは10期の前半ではまあまあみられる光景でした。
自分もやったし対戦相手にもやられました。

もちろん本当に自分のLPがヤバいときは防御札としても使用できます。
LPが0にされそうな攻撃だけを受け止めて、残ったトークンで汎用リンクに繋いで切り返しもできました。

というわけで流石に汎用カード1枚でゲームが簡単にひっくり返ってしまうのはよくないと判断されたのか2018/01/01に準制限カードに指定されました。
制限カードにならなかったのはリンク召喚のためにエクストラデッキを圧迫するため使えるデッキはそれなりに限られているのに加えて10期はリンクモンスターの販促期でもあり、このカードと合わせて汎用リンクモンスターが使われていたために規制を強化しすぎてしまうとリンクモンスターの販促が推進できなくなるなどの事情があったのだろうと推察しています。

現在

スケープゴートは2022/01/01に制限解除されたのでフル投入できるようになっています。

突然変異やキャノンソルジャーといった初期のヤバいカードたちは禁止にされていますが他のカードたちとの組み合わせは復活しています。
リンク召喚の素材としての使い方も健在なので低速デッキなら今でも採用できます。

昔を懐かしむ使い方から現代風の使い方まで楽しめるカードなので興味のある方はぜひ使ってみてください。

次回予告

次回紹介するカードは『ファイアウォール・ドラゴン』です。
リンク召喚初期に登場し、一時期環境を超高速展開の大魔境へと染め上げた1枚です。

お楽しみに。

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