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遊戯王カード列伝『ダーク・アームド・ドラゴン』編


はじめに

どうも、火蛍です。
思いつきで始めたこの企画の反応が徐々に増えてきて喜んでおります。

というわけで今回は『ダーク・アームド・ドラゴン』について紹介していきます。
このカードも間違いなく一時代を築き、環境を高速化させた1枚です。

では見ていきましょう。

ダーク・アームド・ドラゴン


このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の闇属性モンスターが3体の場合のみ特殊召喚できる。
①:自分の墓地から闇属性モンスター1体を除外し、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

初登場は2007年11月23日発売のPHANTOM DARKNESSです。

このシリーズでは初となる特殊召喚モンスターです。
自分の墓地に存在する闇属性モンスターが3体のみという条件を満たしていると手札から特殊召喚できます。

効果は自分の墓地の闇属性モンスター1体の除外をコストに場のカード1枚を破壊するというシンプルなものになっています。

カードゲーム界には『墓地闇3体』という滅びの呪文が存在します。
意味は大まかにわけると二つ存在し、そのうちの片方がこのカードを呼び出すための詠唱となります。
ちなみにもう片方はデュエルマスターズに存在する大邪眼B・ロマノフを墓地進化させるための詠唱です。

主な活躍時期は2007年~2010年と2014年です。

このカードが環境に与えた影響

2007~2010年

初登場時は墓地闇3体という今まで存在しなかった召喚条件から評価はぼちぼちで『出せたら強いね』ぐらいに認識されていました。
収録レアリティが字レアだったことから公式も事前にダムドの危険性を認識できていなかったことが伺えます。
ですが登場から少ししてすぐにダムドは環境で猛威を振るうことになります。

このカードの強いところは主に
・召喚条件がゆるゆる
・決定力がバカ高い
・性能が単体で完結している

この3つに集約されています。
これらを順番に解説していきます。

召喚条件がゆるゆる

ダーク・アームド・ドラゴン(以下ダムド)を特殊召喚する条件の『墓地の闇属性モンスターが3体のみ』というのは一見すると難しいように見えますが実はそれほどでもなく、案外簡単に出せます。

遊戯王というゲームは汎用的に墓地に触る頻度がかなり高く、蘇生や墓地回収、墓地除外などを繰り返すことで墓地のモンスターの数を調整することは容易です。
当時から死者蘇生やリビングデッドの呼び声といった蘇生カードが汎用的に使用されており、さらにダムド最盛期には貪欲な壺やおろかな埋葬といったカードも使用率が高かったので墓地の闇属性を3体ちょうどにすることは簡単でした。

そんなゲーム性もあり、露骨な立ち回りをしなくても自然に墓地の闇属性が3体ちょうどの状態は作れます。

条件を整えたらいざ特殊召喚です。
ここでダムドの強いところが早速でます。
それは『特殊召喚にコストが必要ない』『特殊召喚回数に一切の制限がない』ところです。

この手の特殊召喚モンスターは場に出す際に『手札にある特定のカードを墓地へ送る』『墓地のカードを除外する』といったなにかしらのコストを払うのが一般的なのですがダムドにはそれがありません。
墓地闇3体さえ満たしていればコストなしで出せます。
また、この性質によってたいていの特殊召喚モンスターが苦手とする強制脱出装置などの手札バウンスにも強いです。
例え手札に戻されたところで墓地闇3体が維持できているなら即座に出し直せるためです。

さらに特殊召喚回数に制限がないということは手札に複数枚のダムドが存在していればそれらをすべて一度に出すこともできるということでもあります。
これが後述する決定力の高さにも繋がってきます。

決定力がバカ高い

ダムドの二つ目の強みにして最大の問題点です。
前述の通り意外と簡単に出てくるのですが、それに反比例するかの如き決定力を持ちます。

ダムドの攻撃力は2800、このゲームの初期LP8000の1/3を上回る数値です。
ダムド最盛期に2800を上回る攻撃力を持つ汎用モンスターはほぼ存在しなかったのでシンプルなステータスでぶん殴るのも強力です。
さらにダムドにはカード除去能力も備わっているため、戦闘で突破できない相手やミラーフォース・次元幽閉といった攻撃反応型の防御札も発動される前に破壊できます。
なので出てきたらほぼ確実にLPが2800以上消し飛びます。
そして召喚条件がゆるゆるというところとも繋がってくるのですが、極端な話をするとダムドを3体同時に並べて直接攻撃すればゲーム終了です。

ダムド3体まではいかなくても2体同時に出てくることはそれなりの頻度でありました。

たとえ攻撃が通らなかったとしても自身の効果で盤面に干渉できればその時点で役割は果たせています。
さらにこのカードの最盛期にはそれを助長するルールが存在していました。
それは『起動効果の優先権』です。
モンスターの効果にもいくつかの分類が存在し、そのうちの一つが起動効果です。
起動効果は主に自分ターンのメインフェイズ中に任意のタイミングで使用できるのですが昔はこの効果に優先権が存在し、起動効果を持つモンスターが場に出た時にターンプレイヤーが起動効果を使用するかを任意で選択できるというルールが存在しました。
当時はこれを活かし、ダムドが着地した瞬間についでのように盤面を1枚破壊してくる現象が各地で多発しました。
つまりダムドが出てきた瞬間に盤面が壊れるのは確定事項だったのです。
なおこいつらが暴れすぎたせいか、起動効果の優先権というルールは第7期に移行した際に廃止されました。

このカードを初めとした召喚条件を簡単に満たせる大型モンスターが多数登場したことから2007年以降の遊戯王はこれまでの低速でじっくり戦う時代から大型モンスターを素早く揃えて一気に試合を決める高速環境へと変化していくことになります。

性能が単体で完結している

上記のようにゲームを一気に終わらせるパワーを誇るダムドですが上述の通り召喚条件はゆるゆるで、必ずしもこのカードのために構築を寄せる必要がありません。

この性質を活かし、闇属性モンスターによるビートダウンやシンクロ召喚を主軸にし、ダムドをサブフィニッシャーに据えた【ダムドビート】【シンクロダムド】が誕生しました。

他にも当時の環境トップデッキにはライトロードやブラックフェザーなどが存在したのですが、それらの闇属性をタッチもしくは主体とするデッキにもサブフィニッシャーとしてダムドは当たり前のように採用されました。
相手のメインの動きを防ぎきったと思ったら後ろからダムドが出てきて試合終了なんていうのはよくある光景でした。
その時に呪文のように唱えられたのがダムドの召喚条件である『墓地闇3体』です。
このカードによる暴力に沈められたプレイヤーは数しれず、自分もそのうちの一人です。

こうして闇属性が入るデッキならどこにでも採用され、暴虐の限りを尽くしたダムドは準制限を経て制限カードに送られることになります。
制限カードに指定されてもなお1体出せれば勝ちに近づくパワーは揺るがなかったため、変わらず闇属性デッキに採用され続けることになります。

2014年

制限カード入りから約4年、環境のインフレや闇属性デッキがあまり活躍していなかった背景もあってか準制限に緩和されてある程度の落ち着きを見せていたダムドが再びやらかします。

前回でも触れた当時の環境トップデッキことシャドールで採用されたのです。
影依融合を始めとした墓地肥やしカードが多数採用されるこのデッキにおいて墓地闇3体を達成することなど雑作もなく、かつての威光を取り戻さんばかりに暴れ回ります。

他にもシャドールにおけるダムドには一つ明確な役割があります。
それは『ミドラーシュを倒す』というものです。
エルシャドール・ミドラーシュがいるとお互いに1ターンに1度しか特殊召喚が行えなくなるというルールが課されてしまい、さらにミドラーシュはカード効果で破壊されないのでデッキによっては対処が困難を極めます。
回答がEXデッキにしかないなど論外という状況で注目されたのがダムドです。
たった1回の特殊召喚で済む』『ミドラーシュを戦闘で破壊できる』『後ろの妨害を自前で踏みつぶせる』これらすべてをたった1枚で達成できるダムドはミラーマッチにおけるミドラーシュ対策要員としても活躍することになりました。

その日デュエリストたちは思い出した。奴に支配されていた恐怖を。

もちろんシャドール以外のデッキ相手も持ち前の暴力で粉砕できます。
起動効果の優先権が消滅した以外はやっていることが全盛期と何ら変わっていません。

そんなこんなで暴れに暴れたダムドは2014/04/01に制限から準制限に復帰して2014/10/01に制限カードに送り返されるという結果になりました。

これらを踏まえた上でこのカードが環境に与えた影響を要約すると
・ゲームスピードを大幅に高速化させた。
・闇属性を採用するデッキとしないデッキとのパワー格差を突き放した

この一点に尽きます。

現在

ダムドはその後も闇属性デッキにアクセントで採用されたりしましたが全体的なカードパワーがダムドに追いつき追い越ししている現代ではかつてほどの脅威はなくなり、2019年に制限解除に至りました。

あくまで『周囲の単体スペックが上がったことで相対的に弱体化した』だけであってこのカード自体は出れば相変わらず強いし、出てきたらゲームが終わるだけのパワーは有しています。

興味があったら使ってみてください。

次回予告

次回紹介するカードは『スキルドレイン』です。
時代のインフレにより怪物と化してしまった罠カードの歴史を追っていきます。
お楽しみに。


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