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中小企業経営者・スタートアップ創業者が押さえておきたいポイント — 資本金と法人税の関係

企業の資本金は、その企業の規模を示す重要な指標であり、法人税やその他の税額控除の適用条件に大きく影響を与えます。特に中小企業やスタートアップにとって、資本金の額をどのように設定するかは、税務戦略や資金繰りの観点から重要です。また、2024年度(令和6年度)の税制改正により、外形標準課税制度の一部が見直され、資本金の操作を用いた節税の回避が難しくなるなどの変更が行われています。本記事では、資本金と法人税の関係について詳しく解説し、企業にとってどのような選択が有利になるのかを探ります。


1. 資本金と法人税の基本的な関係

資本金の額は、企業が適用を受けられる法人税率税額控除の適用条件に影響を与えます。特に資本金1億円を基準にして税制上の扱いが大きく変わります。

(1) 中小企業の法人税率の軽減措置

資本金が1億円以下の企業は、中小企業として扱われ、法人税率の軽減措置を受けることができます。具体的には、所得800万円以下の部分に対しては、通常の法人税率よりも低い**15%**の軽減税率が適用されます。これにより、税負担を大幅に軽減することが可能です。

  • 中小企業の軽減税率: 800万円以下の所得に対して15%(通常は23.2%)

(2) 大企業に適用される法人税率

資本金が1億円を超える企業は、大企業として扱われ、軽減税率の適用がありません。全ての所得に対して**23.2%**の法人税率が適用されます。


2. 資本金が法人税額控除に与える影響

資本金の額は、法人税の税額控除にも影響を与えます。特に中小企業に対しては、研究開発費控除などの優遇措置が設けられています。

(1) 研究開発費控除

資本金1億円以下の中小企業は、研究開発費控除の適用を受ける際に、より有利な条件で控除を受けられます。研究開発費の**10%が法人税から控除される可能性があるのに対し、資本金1億円を超える企業では控除率が8%**程度に抑えられる場合があります。

  • 中小企業: 研究開発費の最大10%控除

  • 大企業: 控除率が8%程度に制限されることが多い

(2) 投資促進税制

新たな設備投資に関する投資促進税制でも、資本金の額に応じて控除率が異なります。中小企業は税額控除や即時償却などの優遇措置を受けることができますが、大企業ではこれらの特典が制限されることが多くなります。


3. 資本金が外形標準課税に与える影響

外形標準課税制度は、企業の所得だけでなく、資本金や付加価値を基に法人事業税を課す制度であり、資本金が1億円を超える企業がその適用対象となります。この制度は、資本金の額によって税負担が大きく変わるため、特に資本金1億円の基準が企業にとって重要です。

(1) 従来の外形標準課税制度

資本金が1億円を超える企業は、外形標準課税の対象となり、所得割や資本割が課税される仕組みです。これに対し、資本金1億円以下の企業は外形標準課税の対象外となり、法人事業税は所得に基づく税のみが課されます。

(2) 2024年度税制改正の変更点

2024年度(令和6年度)の税制改正では、外形標準課税の対象範囲が拡大されました。これまでは資本金1億円を基準としていましたが、資本金の減資や分社化を用いて課税を回避する手法が問題視され、今回の改正で以下のように変更されました。

  • 資本金1億円以下でも、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超える場合、外形標準課税の対象となる(100%親会社の支配下にある子会社などに適用)。

  • 減資や分社化を用いた課税回避に対して、資本剰余金も含めた新たな基準が設けられた。

これにより、資本金を減少させても外形標準課税の回避が難しくなっています。


4. 資本金の設定と法人税の関係で注意すべきポイント

企業の資本金をどの額に設定するかは、税務面での戦略として非常に重要です。特に中小企業は資本金1億円以下に抑えることで、以下のような税制優遇を受けることができます。

(1) 資本金1億円以下に抑えるメリット

  • 法人税率の軽減(15%の軽減税率が適用)

  • 研究開発費控除や投資促進税制での有利な条件

  • 外形標準課税の非適用

(2) 資本金を抑える際の注意点

資本金を抑えることにはメリットがありますが、企業の信用力や資金調達に影響を与える可能性もあります。資本金の額が小さい企業は、金融機関からの借入や取引先との信頼関係において不利になることが考えられるため、事業の成長を見据えたバランスの取れた資本金設定が求められます。


まとめ

資本金の額は、法人税の税率や税額控除の適用条件に大きく影響を与えます。特に中小企業やスタートアップは、資本金1億円以下に抑えることで、税制上の多くの優遇措置を活用できる可能性があります。また、2024年度税制改正による外形標準課税の見直しにより、資本金の操作による課税回避が難しくなっています。企業の成長や経営戦略に基づき、資本金の設定と税務戦略を慎重に検討することが重要です。

税務戦略や資本金の設定に関してお悩みがあればご相談ください。企業の状況に応じて最適なアドバイスを提供し、貴社に合った税務戦略の構築をサポートいたします。

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