中日「1㌄10失点晒し投げ」に見る2つの問題点!
このところ高校野球に関する日記が続いていましたが、久々にプロ野球の話です!
8月25日の中日vsDeNA戦で、中日が9回表に一挙10点を奪われるという惨劇に見舞われました!4番手で登板した3年目の近藤廉投手が1㌄で10失点を喫したものです!
今季初登板だった近藤投手はこの9回表からマウンドに上がったのですが、打者16人に対して被安打8、4四球1死球という内容で、投球数は1㌄で62球を数えました!
この大量失点に、ファンから批判の目を向けられたのは立浪和義監督でした!まだ控え投手が残っていたにもかかわらず、打者一巡の猛攻を浴び続ける近藤投手を途中交代させなかったことに対して「なぜ代えなかったのか⁉」「近藤投手が気の毒!」といった声が上がりました!SNSでは「見殺し」「晒し投げ」といったフレーズも数多く散見されました!
はたして、近藤投手を最後まで交代させなかった立浪監督の判断は正しかったのでしょうか?それともファンからの批判の通り、9回の途中で交代させた方が良かったのでしょうか?どちらが正解だったのでしょう?
【勝ちパターンの温存】
この試合の終了後、立浪監督は取材に対してこのような発言をしています!
「最後の近藤のところは気の毒でしたが、勝ちパターンしか残っていなかったので。酷なことをしました」
つまり、まだ投手は残っていたものの、残っていたのは「勝ちパターン」用の投手だけだったので敗戦処理に使いたくなかったということです!
ご存じの方も多いと思いますが、救援投手は「勝ちパターン」の投手と「勝ちパターン以外」の投手に分かれますよね!終盤にリードした状況から逃げ切りを図るべく起用されるのが「勝ちパターン」の投手。対して劣勢の状況で起用されるのが「勝ちパターン以外」の投手です。
(「勝ちパターン」の対義語として「負けパターン」という表現も存在しますが、「負けパターン」という表現には失礼な印象もありますので、便宜上「勝ちパターン以外」と表現します)
25日の試合では近藤投手が登板した9回表の段階で、中日は2―8と6点のリードを許していました!試合は既に9回を迎えており、残り1㌄で6点を追いつくのは現実的ではありません!当然ながら投手起用も「勝ちパターン以外」の投手による敗戦処理とならざるを得ません!
そうなんです!既に劣勢だったわけですから、「勝ちパターン」の投手を投入するわけにはいかないですよね!
そもそもビハインドの展開時に「勝ちパターン以外」の投手によって敗戦処理を行うのは、「勝ちパターン」の投手を温存させるためです!敗戦処理が「勝ちパターンの投手の温存」を目的としている以上、いくら敗戦処理の近藤投手が大炎上してしまったからといって、温存しているはずの「勝ちパターン」の投手を救援登板させては本末転倒でしょう!
【翌日以降の投手起用】
この25日のDeNA戦で、中日は8人の救援投手をベンチ登録していました!
この日は先発の松葉貴大投手が6回5失点で降板。救援陣は2―5と劣勢の状況からの登板となったため、2番手以降は「勝ちパターン以外」の投手の起用となりました!
この日救援で起用された投手は、2番手・福島章太投手、3番手・岡野祐一郎投手、そして4番手・近藤投手の3人。つまり、ベンチ入りしていた8投手のうち、この3投手が「勝ちパターン以外」の投手となります!
対してベンチ入りしながら起用されなかった藤嶋健人投手、齋藤綱記投手、松山晋也投手、ライデル・マルティネス投手、マイケル・フェリス投手の5人が「勝ちパターン」の投手ということになります!ビハインドの状況下でこの5人を温存するために、先発・松葉投手が降板後の残り3イニングを「勝ちパターン以外」の3投手だけで終えたかったわけです!
この「勝ちパターン」5投手の温存は、翌日以降に効果を発揮しています!
翌26日のDeNA戦では延長11回まで両チーム無得点が続く投手戦の状況下で、「勝ちパターン」の上記5投手は全員に登板機会がありました!8回表から2番手・松山投手→3番手・マルティネス投手→4番手・齋藤投手→5番手・フェリス投手→6番手・藤嶋投手の順で登板し、5投手そろって無失点の好投でホールドを記録しています!
さらに翌27日のDeNA戦でも1-1で延長戦に突入した大接戦の中、やはり「勝ちパターン」の上記5投手は全員が救援登板!8回表から前日と全く同じ順で登板し、5投手ともに2日連続で無失点の好救援を見せました!試合は最終的に延長12回サヨナラ勝ち!最後を絞めたフェリス投手が来日初勝利を挙げ、残る4投手にはいずれも2日連続のホールドが記録されました!
こうして25~27日の対DeNA3連戦をトータルで見ると、初戦で「勝ちパターン」の5投手を温存した投手起用は決して間違っていなかったのではないかと思われます!
もし25日の試合で近藤投手を救済するために「勝ちパターン」の投手を注ぎ込んでいたら、5人のうちの誰かが3連投になってしまい、残り2戦で本来の力を発揮できなかったかもしれません!そもそも3連投を回避するために26、27日のいずれかで起用を見送らざるを得なかったかもしれません!
「勝ちパターン」の5投手が26、27日に2日連続でそろって無失点の好投を披露できたのも、25日に立浪監督が心を鬼にして温存したからこそとも言えるでしょう!
【大炎上の問題点は?】
上記の理由から、25日の試合で劣勢の中「勝ちパターン」の投手を投入しなかったこと、「勝ちパターン以外」の3人のみの起用にとどめたこと自体は妥当な判断だったと思われます!
とはいえ、敗戦処理の投手が1㌄で大量10失点を喫していながらも交代させる手立てが見つからず、ただただ投げ続けさせるしかない状況に陥ってしまったのは、立浪監督の言う通り「気の毒」で「酷なこと」だったと思います。ファンから「見殺し」「晒し投げ」という声が上がるのも無理はありません。
では、いったい何がいけなかったのでしょう?
私は救援投手の運用に2つの問題点があると思いました!
【3投手の起用順】
まず問題に感じたのは「起用順」です!
25日の試合は劣勢の展開なら、救援は「勝ちパターン以外」の3投手以外に使わないと元々決めていたわけです!「勝ちパターン」の5投手は使わないとあらかじめ決めていたわけです!
劣勢なら救援は3投手以外使わないと決めていたということは、劣勢時に救援3番手で登板する投手は確実に試合を完了しなければならないことになります!
最後に登板する投手は自分を救援してくれる投手がいないわけですから、助けてもらえないわけですから、自分の力で確実に試合を終わらせなければなりません!
それを踏まえると、敗戦処理でも最後に登板する投手は「勝ちパターン以外」の中で最も信頼の置ける投手、力量があると思われる投手に託すべきだと思うのです!
【3投手の信頼と実績】
25日に投げた「勝ちパターン以外」の3投手は、福島投手(登板時2―5)→岡野投手(登板時2―8)→近藤投手(登板時2―8)の順で起用されました!
この3投手は25日の登板前の時点で、福島投手が今季3試合の起用で防御率7.71、岡野投手は今季14試合に登板して防御率6.00、そして近藤投手は今季初登板でした!成績や起用試合数を見る限り、この3投手の中で最も信頼を得ているのは岡野投手と見て良いでしょう!福島投手と近藤投手がプロ未勝利であるのに対し、昨年までに通算3勝を挙げている岡野投手は実績の面でも2人より確実に上です!
ならば敗戦処理の起用順は、岡野投手を最後にした方が良かったのではないでしょうか⁉替えが利かない最後に登板する投手は、実績も信頼も上位の岡野投手に託した方が良かったのではないでしょうか⁉
福島投手→近藤投手→岡野投手の順にするにせよ、近藤投手→福島投手→岡野投手の順にするにせよ、最後は岡野投手が適任だったのではないでしょうか!?
仮に7回・福島投手→8回・近藤投手→9回・岡野投手の順で予定したとします!この起用順であれば、8回に登板した近藤投手が打ち込まれても、岡野投手の出番を前倒しして8回途中から投入できるわけです!近藤投手が10点も失う前に0/3~2/3回で降板させ、8回途中から登板した岡野投手が回またぎで9回の最後まで投げきればいいわけです!
実績の乏しい近藤投手にしんがりを任せるよりも、この起用順の方が危機管理としてはベターだったと思います!
敗戦処理の起用順は、「勝ちパターン以外」の中でも信頼度の高い投手を最後にする!
というのが1つの鉄則だと思います!
【救援陣のバランス】
もう1つの問題点は人員の「バランス」です!
上記の通り、25日時点の中日の救援陣は「勝ちパターン」が5人、「勝ちパターン以外」が3人。5:3という人員バランスでした!割合でいうと「勝ちパターン」が5/8で62.5%、「勝ちパターン以外」が3/8で37.5%です!
ちなみに、この25日の試合前の時点で、中日の成績は41勝67敗でした!勝率は.380。つまり勝ちゲームが38.0%、対して負けゲームが62.0%ということです!
勝ちゲームが38.0%しかないのに、「勝ちパターン」の救援投手が62.5%も必要なんかい!
負けゲームが62.0%もあるのに、「勝ちパターン以外」の救援投手が37.5%しかいなくて足りるんかい!
そうなんです!敗戦が6割以上もあることを踏まえれば、敗戦処理投手が救援陣の半分以下では不十分ではないでしょうか⁉
勝率を考えれば「勝ちパターン」と「勝ちパターン以外」の人数が逆でもいいぐらいです!せめて「勝ちパターン」から「勝ちパターン以外」に1人を配置転換して、配分を4:4の五分にした方が良いのではないかと思います!
もし「勝ちパターン以外」の救援投手が4人いれば、25日の試合でも救援3番手の近藤投手が大炎上してしまっても、さらに救援できる投手がもう1人残っていたことになります!近藤投手を見殺しにしなくても済んだわけです!
「勝ちパターン」と「勝ちパターン以外」の人員バランスが勝率から乖離し、敗戦処理が人員不足であったことも、大炎上の近藤投手を救済できなくなってしまった一因としてあるのではないかと思います!
以上を踏まえて、結論です!近藤投手のような状況を招かないようにするためには……
敗戦処理の最後は「勝ちパターン以外」の中でも信頼できる投手に任せる!
負け試合が多いのなら「勝ちパターン以外」の人数も相応に確保する!
この2点が中日ブルペンの改善すべきポイントではないでしょうか!
と、素人ジョシは思うのでした!(近藤投手頑張れ!)