「勝利投手」の決定方法にある重大な「欠点」とは?
今回は野球の「勝利投手」についてです!継投で勝利を収めた場合、勝利投手はどのように決まるのでしょうか?野球ファンなら基本的な条件や法則は皆さんご存じですよね!
「公認野球規則」にはいろいろ細かく書いてあるのですが、まず大前提となる原則は
「ある投手の登板中、あるいは代打者または代走者と交代して退いた回に、自チームがリードを奪い、しかもそのリードが試合終了まで保たれた場合、その投手が勝利投手になる」
平たく言えば「チームが勝ち越した時に投げている投手が勝利投手になる」ということですよね!
ちょうど投手が交代した回で勝ち越した場合は、勝ち越し後ではなく勝ち越し前に投げていた投手が勝利投手です!
また、シーソーゲームで勝ち越しの場面が何度もあった場合は「最後の勝ち越しの直前に投げていた投手が勝利投手」です!
このあたりは普段から野球を見ている人たちにとっては基本のキですよね!
もちろん私も理解はしているのですが、一方で私は思うのです……
「勝ち越し前に投げていた投手が勝利投手」という原則は理不尽だ~!
【他の投手が気の毒】
勝利投手が決まる法則は分かっていても「その投手に白星が付くんじゃ、別の投手が気の毒だよなあ~」と思ってしまうケースってありますよね!
【例❶4.30楽天vs西武】
今季でいえば、顕著な例は4月30日の楽天vs西武戦。楽天が延長で勝った試合です。
楽天042 000 000 1=7
西武020 000 202 0=6
楽天の継投は
荘 司5回 失点2
安 楽1回 失点0
西 口0回⅓失点2
H伊藤茉0回⅔失点0
H宮 森1回 失点0
○松井裕1回 失点2
S酒 居1回 失点0
楽天は9回表の段階で6-4と2点をリード。その裏に追いつかれなければ、先発5回2失点のドラフト1位ルーキー・荘司康誠投手がプロ初勝利を挙げるところでした。
しかし、9回裏に守護神の松井裕樹投手が2失点し(失策が絡むので自責点は0)、6-6の同点で延長に突入。この時点で荘司投手のプロ初勝利は消えてしまいました(泣)
すると、直後の延長10回表に楽天が勝ち越し!7-6で辛くも勝利を収めました!
この場合、最後の勝ち越しは10回表ですので、その直前の9回裏に投げていた松井投手に白星が付きました。
そう!9回に2点を失い荘司投手のプロ初勝利を消してしまった松井投手が勝利投手となってしまったのです。
確かに法則に則れば松井投手に白星が付くのですが、何だかモヤモヤしますよね?当の松井投手だって嬉しくはなかったでしょう。
【例❷3.31巨人vs中日】
ではこちらの例はどうでしょう?3月31日の巨人vs中日戦。中日が開幕戦を制した試合です。
中日101 000 004=6
巨人000 100 020=3
中日の継投は
小笠原 7回⅔失点3
○勝 野 0回⅓失点0
Sライデル1回 失点0
中日が2-3で迎えた9回表に4点を挙げ逆転勝利!直前の8回裏を締めた勝野昌慶投手が勝利投手となりました!
注目すべきは球数です!勝野投手の投球数はわずか1球!対して先発の小笠原慎之介投手は実に145球を投じています!
確かに小笠原投手自身が8回に勝ち越しを許さなければ済んだ話ですが、7回⅔で3失点ならクオリティースタートですからね!先発として悪い内容ではありません。
にもかかわらず、145球も投じた小笠原投手に白星がつかず、後続の勝野投手が1球勝利に。法則に則れば勝野投手に白星が付くのは分かるんですが、145球も投げた小笠原投手が報われないのは何とも気の毒な気持ちになってしまいますよね(泣)
【そもそも原則に問題】
上記の例の通り、勝利投手を決める法則に則って決めると、このように本当に活躍した投手に白星がつかないケースが出てきてしまいますよね?
いったい何が問題なのでしょうか?
そもそも「最後の勝ち越しの直前に投げていた投手が勝利投手」という原則そのものに問題があるのではないでしょうか?
「最後の勝ち越しの直前に投げていた投手」が、必ずしも「登板した投手の中で最も貢献度の大きい投手」になるとは限らないんですよね。だから現行の法則では違和感を覚えるケースが出てきてしまうのです!
【勝利打点の廃止】
投手の話から一旦離れて、かつてプロ野球には「勝利打点」なるものがありましたよね?最後の勝ち越しとなる打点、つまり決勝打のことです!古くからの野球ファンなら記憶にあるでしょう!
しかしこの勝利打点、いつの間にかNPBの公式記録から廃止になっていました!1981年から公式記録に採用されたものの、1988年シーズン限りで廃止に。以降はセ・リーグだけが年間の最多勝利打点選手を独自に表彰していましたが、その表彰も2000年限りで終了となっています。現在は一部スポーツ新聞が独自に掲載しているだけです。
ではこの勝利打点、なぜ廃止されたのでしょう?
それは「最後の勝ち越し点」が必ずしも「勝利に最も効果的な得点」とは限らないから、というのが理由だったのです。
【最大の貢献度は】
その典型例と言えば、巨人がサヨナラ勝ちで優勝を決めた2000年9月24日の巨人vs中日戦です!強烈な記憶に残る方も多いでしょう!そう!あの試合です!
中日030 001 000 =4
巨人000 000 005x=5
この一戦、巨人は9回表まで0-4と劣勢。しかし、9回1死から江藤智選手が起死回生の同点ホームラン!続く二岡智宏選手がサヨナラのソロホームランを放ち、劇的勝利でリーグ優勝を決めたものです!
この試合の勝利打点は、最後の勝ち越しとなるサヨナラ弾を放った二岡選手になります。でも勝利の貢献度は、どう考えたって起死回生の同点弾を放った江藤選手の方が上ですよね!
このように「勝利打点」は「最大貢献度」と一致しないケースも生じることから疑問視されるようになり、プロ野球の記録から消えていったのです。
【最後の勝ち越し機に対する疑問】
上記のように勝利打点が公式記録から廃止されたということは、つまりは「最後の勝ち越し」が「最大の貢献」と必ずしも一致しないという認識が示されたということです。
だったら投手だって「最後の勝ち越し機」に投げていた投手が「最大の貢献者」と必ずしも一致しないわけですから、勝利打点の認識が改められたのと同様に、勝利投手の原則も「最後の勝ち越し機」から改めるべきではないでしょうか?
そう!そもそも「勝利投手」の決め方を根本から改めた方がいいのではないかと思うのです!
【勝利投手の決め方を提案】
では、勝利投手決定の法則を「最後の勝ち越し機」から変えるとしたら、どのような条件が良いのでしょうか?
ここからは私の提案です!勝利投手の決定方法、私のアイデアは!
勝利チームで登板した投手の中で「投球イニング」―「失点数」が最も大きい投手にしたらどうでしょう?
では例❶で取り上げた4.30楽天vs西武戦の楽天投手陣に、上記の法則を当てはめてみますと~?
荘 司5回 ―失点2=3
安 楽1回 ―失点0=1
西 口0回⅓―失点2=-1⅔
伊藤茉0回⅔―失点0=⅔
宮 森1回 ―失点0=1
松井裕1回 ―失点2=-1
酒 居1回 ―失点0=1
ご覧のとおり、最大値は5回-失点2=3の荘司投手になります!この法則なら降板後に同点に追いつかれても、荘司投手のプロ初勝利が消えることはありません!ナイスアイデアだと思いませんか~?
【タイだった場合は?】
ただし、投球イニング-失点が最大となる投手は、複数の投手がタイで並ぶケースもありますよね?その場合は…
「出塁を許した打者が少ない投手を優先させる」
を第2の比較とするのが良いと思います!
【例❸2001.6.24西武vsオリックス】
では例として、西武が大量9投手を起用した2001年6月24日の西武vsオリックス戦に当てはめてみますと~?
勝利した西武の継投は
松 坂2回 -失点6=-4
水 尾0回⅓-失点1=―⅔
後 藤3回 -失点0=3
大 沼0回⅔-失点0=⅔
橋 本0回⅔-失点0=⅔
デニー1回⅓-失点0=1⅓
土 肥0回 -失点0=0
青木勇3回 -失点0=3
豊 田1回 -失点0=1
この場合、投球イニング-失点の最大値は後藤光貴投手と青木勇人投手が3で並びます。
ではタイで並んだ後藤投手と青木投手を、続いて第2の比較「出塁を許した打者が少ない投手を優先させる」で比べます。
後藤投手は被安打1四球1で許した出塁は2人。対して青木投手は出塁を1人も許さない完全救援!よって青木投手に白星を付けるのが良いと思います!
この決定方法であれば、本当に勝利投手にふさわしい投手に白星を付与できるのではないでしょうか?このアイデア、いかがでしょう〜!?
やっぱり、一番頑張った投手こそ報われてほしいですからネ!
と、素人ジョシは思うのでした!