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あなたの感性、いただけませんか ~フィクション・ストーリー~ 4

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パンッ‼

素明は書く手を止め、シャープペンシルを床に叩きつけた。数秒前の瞬間は疑いようがないにも関わらず、果たしてあんな物静かな少女がそんな音を創り出せるのか、とその音の発生に居合わせた者ならば誰でも自身を疑ってしまう程、大きな音だった。そしてこの瞬間に、素明はもうこの続きを書くのはやめようと考えた。彼女はそれまで生産され続けていた我が子たちに構うことなく、それら無機物集合体の乗り物を勢いに任せて無残に破り、床に捨てた。続けて机上の左側に置いてあった角二封筒は粗雑に掴んで逆さにし、中の数十枚の紙たちも床へまき散らされた。
物書きが仕事をするに、彼女の人生は絶好のネタがたくさん詰まった最高の素材ではあったのだが、実際にそれらを乗り物に乗っけて作品として息を吹き込むには、彼女の身体は著しく軟弱であった。

素明は急な感情の昂りに疲弊してしまい、ベッドに寝転んでそのまま眠ってしまった。
彼女は夢を見た。

頂いたサポートにお応えできるよう、身を引き締める材料にしたいと考えています。宜しくお願い致します。