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平凡な絵を魅力的にするための思考プロセス
「ただのよくある普通のデジタルイラスト」しか描けない自分は、「特別」を諦めなければならないと思っていた。
デッサンも苦手、絵の具もうまく使えないし、乾くのを待つのも一気に描き上げたい私にはもどかしい。シチュエーションによって絵柄を変えてしまうので絵柄に対しても強固な魅力はない。コンプレックスばかりだ。
しかし、そこに明確なコンセプトと文章にした思考プロセスを乗っけると「後付けの特別」は目指せるのではないかと、考えを改めた。デッサンの練習や絵柄の模索をするのではなく(それも大事なのだけど)、魅力のない絵を魅力的にみせる手仕事を頑張るというものだ。
例えばここに泣いている少女のイラストがある。寝起きで20分程で描いたものだ。よくある絵。それ以上の感想は私からは出てこない。
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だが、こんな絵にもコンセプトは存在していて、それは「虚構と現実の境目」だ。私は虚構性のある少女というモチーフが好きなのでよく題材にしている。
ここでひとつ「手仕事」をしてみる。涙をレジンで半立体にする演出を施すのだ。
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背景が透けて黒い涙になっている
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それにより虚構と現実の境目は曖昧で、だがしかし涙を拭ってあげられることはできないのでその境界はより強固なものとなる。液体を実体化することでどうあがいても彼女には手が届かない、残酷性を孕んだものに変化したと思う。
そしてこれを一点ものの絵画のようにするのではなく、量産し、ポストカードという気軽なアイテムで販売することが最終目的だ。
手仕事はより負担が軽く済むものを選んだ。デジタルで描いたイラストを刷り、ジェルネイルのジェルで涙を描いたら硬化する。
そして、今書いている思考プロセスを裏面に印字する。
うまくいくかはわからない。
売れるかもわからない。
ただ、私の脳内をできる限り出力したいと思っている。