君の翻訳機になりたい
数年前、「この人の翻訳機になってみたい」と思ったことがありました。
えらく大それた、身勝手で傲慢な願いだったと今では思います。
当時私には長年仲良くしてくれていた親友が居ました。彼女は「苦手だから」と、あまり自分のことを話さない子でした。
ある時、彼女の創作物を通してその寡黙な中にある感性に少しだけ触れられた機会があり、ようやく彼女そのものの話が聞けたような気がして、そのときにそう思ったのです。
辞書を、買うほどに。
彼女が言葉に出来ないことは私がお手伝いしたいと思いました。
長年一緒にいて、はじめて本心で会話ができている手応えと楽しさは、今でも思い出すと熱い気持ちになります。
今では彼女とは疎遠になり、彼女のためだったロイヤルブルーの四角形も出番が減ってしまいました。
私のために使えばいいのですが、思い出が絡むと開く手も億劫になるのです。
えらく大それた、身勝手で傲慢な、でも自分史上最も純粋な願いでした。