うっすら幸せ
3月12日(日)
デコポンがあまりにおいしくて、どうして……? と思いながら食べていた。どうもこうもないけど、なんかちょっともう、わからないくらいおいしかった。
今日観た映画:『東南角部屋二階の女』2008年
引き当てた、と思った。いつもAmazon Primeで適当な映画を探すのだが、好ましい映画を見つけるまでに15分かそれ以上かかる。なお面白くないときもざらにある。今日観た映画は、したがって大変な幸運を噛みしめることになった。長いインスタレーションのような映画だった。必要以上の情報は与えられなかったし、必要な情報さえも与えられないときもあった。私はこういう半分くらい余白の映画が好きだ。
もしかして、と思って山口百恵を聴いてみたら、思ったとおり好みだった。
抒情詩より叙事詩が好き。最近の歌は抒情詩ばかりでつまらないと気づいたのは最近のこと。
恋人に、月見バーガーとてりたまバーガーは同じものか、と問うと、そうだ、とのこと。そうだったのか。
3月13日(月)
窓から見える景色の中にハクモクレンを見つけた。大きな木で、満開と言える。奇妙なことに、私は今の今までそこにハクモクレンが咲いているということに気がつかなかった。あんなに大きくて白い花がたくさん咲いているというのに。毎日この窓から外を眺めているというのに。
昨日よりはデコポンのおいしさを理解して味わうことができた。おいしいなあ、おいしいなあ、という感じ。
昨日作った鶏大根に味が染みておいしくなっていた。昨日はやっぱり味が浮いていた。でも、作りたてのぼやぼやした味の煮物を食べることができるのが、自炊のいいところだ。次の日を楽しみにできるところも。勢い余って、もっと食事がしたいと思った。おかわりとは違って、バイキングみたいに様々なものをもっと食べたいというか。
3月14日(火)
私が現恋人に初めて告白してから、今日で10年が経った。彼が静かに息を呑み、驚いていたその顔を、今でも覚えている。
10年以上前から、私は彼にバレンタインデーの贈り物を欠かさなかった。当時、彼はホワイトデーにお返しを用意するなどということはしなかった。そのとき私は少し寂しく思ったが、同時にその誠実さを尊敬した。
図書館で借りた川上弘美の小説を読み始めた。彼女の穏やかな冷たさが好きだ。湖畔で、時折風で波立つ湖面を眺めているような。
暇だなあ、と思っていたら、いきなり締め切りが2日後の仕事が割り振られた。
3月15日(水)
久々に出社した。でかいモニタで堂々と漫画を読んでいる人がいた。めちゃくちゃなことを言っている人がいて、その内容があまりにめちゃくちゃなものだから、逆に大正解であるような気さえした。昼食にはコンビニののり弁を選んだ。昨晩、恋人が「のり弁が好き」と言っていたから。なるほど、これが出社のメリットか。明日が締め切りの仕事は何とかなりそうだ。
ある同僚と夕食を摂った。このために出社したのである。「このため」と言うわりにまったく店を探しておらず、適当に歩いて見つけた韓国料理店に入った。きちんと韓国料理を食べるのは、これが初めてだった。「今日は会社のノートパソコンを持っているから、お酒は飲めないね!」と同僚が言うので、ごもっとも、と呟きながら果実酢のソーダ割を頼んだ。チヂミ、チャプチェ、ビビンバなど、普段その辺で適当に食べているものの正解を知るべくして頼んだ。本物はやはり味が違う。チヂミに至ってはこんなにふわふわなものなのかと感心した。全体的にその辺で適当に食べているものに比べて酢の割合が大きい印象で、韓国は酢をよく摂取するとは本当のことなのだなあと思った。
ある同僚との話は楽しいし、面白い。私は頭を使って考えながら話すし、同僚の話を集中して聞くから、ごはんを食べているそばからエネルギーを消費しているような気がした。実際、もっと食べられた。「このあと店を変えて甘いものでも」と言ってくれたときはうれしかった。私もそうしたいと考えていたが、こういうことに関しては弱気なのだ。弱気とか何とか言っている場合では、全然ないのにね。
明日も仕事だというのに21時過ぎまで喋っていた。別々の帰途についた瞬間、眠くなった。この瞬間が好きだ。互いに全力だった証拠だ。
眠いまま帰宅すると、洗濯物が干されていた。私が朝干したのだ。そんなことも忘れていた。洗濯物を取り込んで畳んでいると、ちゃんとしているなと思った。帰宅、洗濯物片付け、風呂、歯磨き、日記まで間髪入れずにこなした。ちゃんとしている。5年前は全然こんなことはできなかったのに、気づかぬうちに、随分遠いところまで来てしまったものである。
3月16日(木)
よっぽど疲れていたらしく、いつもより1時間遅く目が覚めた。
夢に安田顕が出てきたので、また安田顕の虜になってしまった。定期的に安田顕のことで頭がいっぱいになってしまうのだ。休憩を挟むたびに安田顕の画像を漁った。安田顕のInstagramをフォローした。何しろ顔がいい。役によって髪型や髭の有無の組み合わせが豊富でありがたい。おまけに演技も大の好み。はあ……安田顕……大好き……
そうして一日中安田顕のことを考えていたら、夜になって母から「ダイワマンのCMに出てる津田寛治がいい」というメッセージが届いて、頭の中が安田顕と津田寛治でいっぱいになってしまった。津田寛治もやはり定期的に私の頭をいっぱいにする。ダイワマンを宣伝しているのではないからダイワマンのCMではないのだが、まあそれはそれとして、ダイワマンのCMに執事として出てくる津田寛治が、そう、素晴らしい。津田寛治を老獪な執事役として起用した人は天才だ。津田寛治は、何しろ顔がいい。背の高い俳優が多い中、男性の平均身長くらいなところがまたいい。ダイワマンのCMだって、ダイワマン(西島秀俊)が少しうつむき、津田寛治が少し見上げる格好で話すのだ。解釈一致である。おまけに演技も大の好み。津田寛治……安田顕……津田寛治……安田顕……スマホのロック画面を津田寛治、ホーム画面を安田顕にしようかな♪
明日恋人が来るから卵10個とビール6缶を用意したが、安田顕と津田寛治のことで全然それどころではない。
3月17日(金)
スマホのロック画面を安田顕、ホーム画面を津田寛治にした。いい。すごくいい。
しかし、私本人の調子は良くなかった。ずっと眠かった。生理用品を買いに出たのに、何センチのものを買えばよいのか確認するのを忘れた。勘で買ったら違った。そのときアイスを買ったのを忘れていて、常温で1時間以上放置してしまい、完全に溶けた。棒アイスである。呆然として、しばらく液体と化したアイスを袋の上からちゃぷちゃぷと揉んだ。まだ冷たかったので、しばらくアイスだったものの感触が指先から抜けなかった。一応冷凍庫に立てて入れてみた。
何だったんだろう。突然疲れたのか。何にせよ、スマホのロック画面が安田顕、ホーム画面が津田寛治なので精神的にはハッピーである。
山口百恵の『いい日 旅立ち』を購入し、ダウンロードした。明日から旅に出るから、恋人と聴く。今は恋人を待ちながらこれを書いている。恋人は私のスマホのロック画面とホーム画面を見てどう思うだろうか。