【美術館めぐり】自然界には直線は存在しない〜本阿弥光悦の大宇宙〜
ぷっくりとした金ピカの硯箱。
硯箱といえば、四角いものが想像されるなか、なぜこんなにぷっくりしているのか。
どこどこの山を写したとか、祇園祭の山鉾から想起されたとか、説は色々あるようだけれど、純粋にこのぷっくりとした硯箱を見て思うのは、親しみがわくなあということ。
私的に、なので間違っているかもしれないけれど、この自然界には直線というものは存在しない。どこかしら曲がっていたり、球状だったりする。
角ばった硯箱を見ても、それは硯箱でしかない。しかし、ぷっくりとした硯箱を見ると、この自然界に存在する他のもの(雲だったり山だったり)に似ていて、どこか懐かしみを覚えるのかもしれない。
光悦作の茶碗もいくつか展示されていて、どれも素晴らしかった。
本阿弥家の家業は刀剣の鑑定。人工物であり、いかに直線かが問われるのが刀剣だ。そしてその直線によって人を殺める。
そんな刀剣とは相反するところにある丸い茶碗は、光悦の憩いの時間であり、自然界のなかの人間に戻れるときだったのかもしれない。
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