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新耐震基準以降なのに、なぜ耐震性不足?木造編

阪神大震災の被災状況から、新耐震基準以降は比較的耐震性がある、とされ、旧耐震基準の建物に絞り耐震化を進めてきました。しかし阪神大震災発生は1995年。新耐震基準で建てられた最古の住宅は1981年で、まだ築15年も経っていません。そのため老朽化がなかったから・・・という側面も見て取れます。現在、新耐震基準の建物は、築40年を超えるものが出てきており、老朽化は確実に進んでいると思われます。この点でも新耐震基準が必ずしも耐震性があると、いいきれない部分でもあります。

しかしながら、そもそも耐震性を満たしていない、新耐震基準以降の木造住宅がたくさんあることは、あまり知られていません。今回は、新耐震基準以降なのに、耐震性がない木造住宅がなぜ存在するのか?を書いていきたいと思います。

最近注目されてきたグレーゾーン

 まず、阪神大震災のときに、新耐震基準の中でも壊れやすかった建物があったのは知っていますか?まずバランスが悪い建物、そして金物がついていない建物です。この2つは、構造用合板など耐震性を出しやすい部材が普及してきたこともあり、以前より重要視されるようになってきました。そこで2000年に改正されました。つまり新耐震基準でも2000年までの建物では、基準を満たしていても、金物が不十分であったり、バランスが悪い建物がある、ということです。そのため、新耐震基準施行の1981年から改正建築基準法施行の2000年の間を「グレーゾーン」と呼ぶことが増えてきました。実際、この時代の建物の耐震性が低いものは数多くあります。これは、グレーゾーンのように法改正が行われる前の基準だからだけでなく、そもそも壁量計算などの基準を守らない設計が多くあったことも原因です。実際、筋かいがない建物なども散見されます。

図面通り作られない時代

 建物が完成したら、完了検査を受けなければなりません。しかし意外にも完了検査がしっかり行われるようになったのは2005年くらい以降でした。特に木造2階建ては完了検査の行われた率は地域によって異なりますが、低かったのです。そのため図面通り作られていない建物が多いです。これでは設計がしっかりしていても、耐震性が低い建物が出来てしまっても仕方がありません。特に耐震偽装事件以前は、建築士による監理がしっかり行われていないことが多かったです。

審査されないということ

 そして、古くから、建築基準法はザル法、と言われ続けていました。特に木造住宅は審査も甘いうえ、完了検査も行われませんでした。また壁量計算などは、審査対象ではなかったので、間違っていたり、中にはやっていない建物も多くありました。このことは、新耐震基準以降の耐震診断を数多くやってきたので、よくわかります。審査されない=適法と思っていた人もいるのかもしれませんが、壁量不足の木造住宅は2000年代になっても、結構ありました。2022年現在でも、壁量計算の依頼は私の所にあります。しかもネットで調べて注文してくる方もいます。今までどうしていたのでしょうか?心配になります。少なくとも2010年代で壁量計算されていない建物は確認しております。

そんなわけで、新耐震基準だから大丈夫!!!というのは幻想であることがわかり、新しい住宅だから、というのも信用できません。新しいのに、よく揺れるとか、壁が少ないとか、ピンときたら、耐震診断してみたほうが良いかもしれません。

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