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2025年の改正建築基準法のN値計算法 その3 計算の実際 平屋の場合

前置きが長くなりましたが、実際の計算をしてみましょう。

↑その1から読みたい方はこちら

N値計算の公式は主に2つ。平屋建ての場合と2階建ての2階(つまり最上階)は、

N=A1×B1-L ・・・①式

2階建ての1階は、

N=A1×B1+A2×B2ーL ・・・②式

です。まず簡単な①式を見てみましょう。前回見たとおり、Nは引き抜き力ですが、計算しやすいように簡略化しています。とりあえず大きな数値ほど引き抜きが多いと思って、ついてきてください。下の図は2階建ての2階の軸組図です。左側から耐力壁を①②③と名称をつけました。倍率は構造用合板で2.5倍とします。

A1は、壁倍率の差となります。
①の場合、左側は壁がないので2.5-0=2.5、右側も開口なので2.5-0=2.5です。②の場合は、左側は開口なので同じく2.5です。ここまではわかりやすいです。②の右側はどうでしょうか?

耐力壁の隣に耐力壁がある場合、壁倍率の差になります。②の右側は③で同じ2.5倍です。そのため2.5-2.5=0となります。N値計算は原則、同じ壁倍率が隣合わせになっているときは、原則A1は0となります。

もし、②の壁倍率が2.5、③の壁倍率が4.5であったらどうなるでしょうか?②と③の間の壁倍率の差は2となりますのでA1は2となります。

ここで、最初の公式に戻って見ましょう。

N=A1×B1-L ・・・①式

A1が0の場合、B1がどのような数値であろうとA1×B1は0となります。またLは整数のため、必ずマイナスになります。引き抜き力のN値はプラスになると発生するので、A1が0、すなわち同じ壁倍率が並んでいる間の柱のN値は発生しない(マイナス)となりますので、計算上金物が不要となります。

倍率の差が大きいほど引き抜きが大きくなります。つまり壁倍率の大きい壁を使うと、金物が大きくなりやすいことがわかります。これは壁倍率が大きいと、それだけ大きな地震力を受けられるため、足元で抜けるのを防ぐためにふんばる力(金物)が必要になるということです。

さて、B1とLについてもお話します。B1は「曲げ戻し効果」に関する変数で、出隅の柱の場合は0.8、その他は0.5と定められています。

角の柱である、①の左側、③の右側は出隅の柱です。上部の梁で押さえる効果が、その他の柱に比べて小さいですね(片側からしか押さえられていない)。そのため、角の柱のほうが引き抜きが大きくなるので係数が大きくなります。このことは、出隅の柱の方が金物が大きくなりやすいことを示唆しています。

次にLですが、出隅は0.4、その他は0.6と定められています。先ほどと同じ分類ですね。こちらは床や屋根の重量による押さえ込み効果の変数です。こちらは出隅のほうが小さいですが、Lは引き算のため、出隅の方が計算値が大きくなります。

本来Lは、場所毎に計算しないと正しい数値はでないのですが、だいたいそのレベルであれば安全に計算できるであろう数値をルールで定めています。よって特殊な建物などでは、この数値では危険側になることもあります。N値計算はあくまで一般的な木造住宅を対象にしており、その中では安全になるように配慮されています。ちょっと特殊だな、危険だなと思ったら構造計算で軸力を精算して計算してみたほうが良いでしょう。また安全を見て大きめに金物を設定するというのも良いかもしれません。

では、計算してみましょう。

N=A1×B1-Lより、出隅の柱は

N=2.5×0.8ー0.4=1.6

その他の柱(耐力壁の隣が開口)は

N=2.5×0.5ー0.6=0.65

耐力壁が両方にない柱は

N=0×0.5-0.6=-0.6

となります。ここで、使用金物の表を見てみると、1.6は、(ほ)に該当し、羽子板ボルト又は短冊金物(スクリュー釘あり)となります。山形プレートなどの一般的なプレートでは足りないことがわかります。

また0.65は、(ろ)に該当し、長ほぞ差し込み栓又はかど金物CP-Lに該当します。つまりかすがいうちなどでは、引き抜きが足りないことがわかります。

最後の-0.6は(い)に該当しN値が0となり、かすがいで良いことになります。

こんな感じで計算するのですが、逆に構造用合板を外壁に貼る場合、2階は、

・一般部は、山形プレート互換のエーステンプレートを全部貼って
・出隅柱は、ホールダウン(施行令43条より隅柱は通し柱か同等以上に補強=ホールダウン)

といった乱暴な論法が成り立ちます。その場合耐力壁が両側にない柱は、N値がゼロなので、計算上金物は不要ですが、現在のプレカット仕口である短ほぞ差しは、抜けやすいのでとりあえず外周だけは山形プレート互換のエーステンプレートを全数貼るというのは、無駄とはいえず、安全のためには良いことだと感じます。

またこの計算方法は2024年秋現在の方法で、2025年4月の改正法以降は高さで補正するため、この数値にならないことがあります。高さが高いと、上記の金物では不足する可能性があることを、ここで覚えておきましょう。


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