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建築士試験の知識でマスターする木造構造計算2 地震力用の重量Wiの算出

第1回 地震力
第2回 地震用の重量Wiの算出(このページ)
第3回 層せん断力係数を求め地震力を出してみよう
第4回 地震力から必要壁量を出して建物が安全か確認しよう
第5回 風圧力から必要壁量を出して建物が安全か確認しよう 見つけ面積編
第6回 風圧力から必要壁量を出して建物が安全か確認しよう 計算編
第7回 風圧力から必要壁量を出して建物が安全か確認しよう 検討編

さきほど、地震力は
Qi=Wi×Ci
ということを再確認しました。建築士試験では、Ciを重視してますが、実務ではWiを重視します。ぶっちゃけCiは構造計算ソフトで簡単にでます。なぜなら、Zは地域で決まり、Rtは地盤で決まり、Aiも高さで決まり、C0は求める建物の耐震等級で決まります(※あくまで普通の木造住宅の場合です)。なので実務では非常に簡単なのです。

一方、Wiは建物の形状や高さ、仕上げによって無限に変わっています。特に階数が多かったり、面積が広いとやっかいです。しかし基本は足し算とかけ算で出来上がりますので、先にWiを計算してみましょう。

メーターグリッドの建物です。壁は1m、窓は2m幅とします。面積は各階16㎡です。


立面図。非常に簡単な建物とします(最高高さと軒高が同じなんて建物はないとか突っ込まない!)

では、この2階建てのWiを計算するには、外壁や内壁、屋根の重量を出します。ただ面倒なのは日本で重さを表すkgやtでなく、kN(キロニュートン)やN(ニュートン)で計算しなければならないことです。今回は便宜上1kg=10Nと計算します(実際は1kg=約9.8N)。


今回は2階建てなので、W1を1階の地震力用の重量、W2を2階の地震力用の重量とします。ただし、階の範囲は一般の階ではなく、地震力用なので間違えないようにしましょう。

まず、立面図をこのように簡略化してみていきましょう。前回学習したとおり、床面に地震力が伝わります。2階の地震力は軒高付近、1階の地震力は2階床付近に加わります。この地震力のための重量は、次のように階を半分にして考えます。

各階の中心で切断し、中心より上側がその階にかかるWとなります。2階の場合は2階の中心より上、1階の場合は1階の中心から上と2階の中心までです。1階の中心より下は、地震力用重量に含めません。

上記のようになります。この面積に、外壁の重量を掛けてあげれば外壁の重量はでます。外壁の重量といっても、サイディングなどの外壁材、柱や構造用合板などや内部の石膏ボードなどを含みます。サッシもありますが、重いものを除き、壁と同様の重量で計算します。今回は500N/m2(約50kg/m2)とします。

1階外壁の重量=4m×4(東西南北の4面)×3m(高さ)×500N/m2
=24000N=24kN・・・①A

2階外壁の重量=4m×4(東西南北の4面)×1.5m(高さ)×500N/m2
=12000N=12kN・・・②A


残りで重量があるのは、床と屋根です。壁と同様に1階床は含みませんので、1階地震力用は2階床、2階地震力用は屋根となります。

まず床面積は4m×4mなので16㎡です。この重さを出すためには床の荷重を掛ける必要があります。2階の床の重量は今回は500N/m2とします(軽い木造住宅の床でも実際はもう少し重いです)。床だけでなく、下階の天井、2階梁、合板など含みます。建物には生活する人間や家具の重量もかかってきます。それを「積載荷重」として均して床に載せます。通常の住宅では600N/m2を加えます。つまり住宅の設計ではだいたい1㎡あたり60kg程度載せても良いくらいの設計を行っているのです。重い本棚などでは超えてしまいますね?なので2階に重い家具を載せるというのは本来厳禁なのです。

2階床(1階地震力用)の重量=4m×4m×(500N/m2+600N/m2)
=17600N=17.6kN・・・①B

では、屋根です。屋根にも太陽光パネルなど載せたり、人が乗っかったりすることもあるので積載荷重がある可能性はありますが、今回は何も載せないので0とします。屋根の重さと2階天井の重さ、その間の梁や垂木や母屋などの重量を合わせて500N/m2とします。

屋根(2階地震力用)の重量=4m×4m×500N/m2
=8000N=8kN・・・②B


はい。実際は、内壁、バルコニー、浴室など重量が違うものが多くあり面倒です。しかしやっていることは同じで、面積を出し、その単位重量を掛けてあげて集計するだけです。では地震力用の重量Wiを出してみましょう。

W2(2階地震力用の重量)
=②A+②B=12kN+8kN=20kN

W1(1階地震力用の重量)
=①A+①B=24kN+17.6kN+W2=61.6kN

となります。W1には、当然2階の重量も加わってくるので、足し忘れないようにしましょう。こうやってみると、1階のほうが、2階よりも重い地震力を受けそうだな~ということが予測でき、2階より1階を頑丈にしなければならないことがわかりますね。

Qi=Wi×Ciなので、これでCiがでれば各階にかかる地震力(地震層せん断力)がわかります。Ciは覚えるのが面倒な反面、コンピュータでは出すのは簡単です。面倒なのは実はWiです。こればっかりは建築士試験では教わりません。しかし上記のように「足し算」と「かけ算」のみ(実際は勾配などがあるのでもう少し難しい)で、計算できるので理論としては簡単ですね。

次回は、Ciを算出してみましょう。

次回の記事はこちら(第3回)


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