なぜ、古い木造住宅は大地震で倒れなかったのか?
おはようございます。今朝も寒いですね。昨年末に電熱ヒーターの入ったズボンを買いました。あれは快適ですが室内なら、それだけ履いても快適で、なかなか電源を入れる機会がなく、ちょっと拍子抜けです。
さて、能登半島の地震で、古い建物が倒壊しとか、新しい建物は比較的無事とか、まあ、当たり前に近い内容の情報が飛び交っています。しかし疑問に思いませんか?大地震での統計データや現地の写真を見ると、多くの木造住宅が倒れているのに、無事な建物もあります。なぜ、古い木造住宅での大丈夫なのでしょうか?
それを伝統構法だから強い、とかの論法は抜きです。そこまで古くない建物も無事ですから。今回は伝統構法は除いて通常の在来軸組工法住宅で考えてみましょう。
まず木造住宅の耐震要素に関して考えてみましょう。柱はそれだけでは耐震要素として弱いのですが、数があれば別です。太さも多少影響はしてきます。それを梁をかけています。ここにも余力になる耐力が発生します。そして、雑壁。特に土壁やラスボード・せっこうボードも数があれば、それなりに効果があることは実証されています。あとモルタル外壁も意外と耐力があります。
昔の壁量計算は、2/3は耐力壁で、他の1/3はその他の雑壁等非耐力部分で負担という説明でした。つまりかなりの部分、耐力壁以外が負担しています。そのため、耐力壁以外の要素が多い建物は、倒壊しにくい、とも言えるのです。この説明って2000年くらいまでされていたので、覚えている建築士の方も多いのではないでしょうか?
また形状も重要です。2000年までの建物はバランスの規定がないので、壁量がある程度あっても壊れやすい建物もあるのですが、バランスが良い建物も当然あります。そのような建物は壊れにくいといえます。バランスの他、建物重量、部屋の広さ、家具などの重さなども影響してきます。
材料や施工の良し悪しもあります。木造は大工さん毎の差異は大きい構法です。部材の施工はもちろん、きちんとかすがいなどで留めていたり、羽子板や火打ちなどをきちんと施工している場合は、耐震性が上がります。
また老朽化しているかどうかが大きいです。シロアリの害がある建物は、やはり倒れやすいです。腐った部材がある場合も同様です。きちんとメンテナンスしていたり、そもそもそれほど老朽化が進まなければ、健全さが保たれているケースもあります。
もちろん地盤の影響も大きいです。地盤が良好なら、ある程度耐震性が低くても耐えられるケースがあります。
このような様々な要因で、古い建物でもある程度耐震性があったり、偶然に重なりで倒れないケースもあります。そのため大地震が起きても建物が全滅することは、ほぼないと言えます。
これらを適正に調査し、適正に建物の強度を出すには、精密診断法による耐震診断をお勧めしています。我々も診断しますが、意外と強度があって驚く古い住宅もあります。逆もあります。なので、うちは大工がいいから大丈夫とか、根拠のない自信を一旦捨てて、診断を受けてみることをお勧めします。そして弱点があるようなら弱点を補強するようにしましょう。木造住宅はきちんとメンテナンスしていけば、かなりの年月使い続けることができます。メンテナンスも同時に行って末永く住めるようにしましょう。