木造住宅の基礎の鉄筋の功罪
驚くべき事に、現在の建築基準法でも木造住宅の基礎を無筋にすることは理屈上可能です。
建築基準法施行令第38条より基礎の形式が簡単に指定されていますが、その告示第1347号には、地盤の地耐力が70キロニュートン/㎡以上あって、密実な砂質地盤その他著しい不動沈下等の生ずるおそれのない地盤にあり、基礎に損傷を生ずるおそれのない場合は、ベタ基礎を無筋コンクリート造にすることができるのです。
それはともかく、現実には鉄筋が入っているのが当たり前になっている現在の木造住宅の基礎。しかしそれはそれで面倒なことがあります。
通常、木造2階建ては構造計算されていないことが多いので、基礎はある意味適当に作られています。標準的な仕様等で。その場合、鉄筋量は無理のない量になっているので、施工性が特に劣ることはありません(それでいいのか?という議論はありますが・・・)。
しかしながら長期優良住宅や耐震等級3の建物の場合、構造設計されています。地震に強い家は、高倍率の耐力壁を多用していることが多く、柱脚金物が大きくなり、基礎が大きくなることが多いです。大きくしないためには鉄筋量を増やさなければならないのですが、そうすると無理な入れ方になることがあります。特に立上りのフック、定着、2段筋などで複雑になってくると、コンクリート打設のときに、きちんと充填するのが難しくなります。またかぶり厚がギリギリになってしまいます。施工性が著しく低下するのです。
もちろんきっちり出来ればいいのですが、計算主義で施工が難しい(もしくは事実上無理)な設計で施工を強いられるケースもあります。その場合どうなるか?なんとなく想像つくのではないでしょうか??
木造の構造計算の依頼をたくさん受けてきましたが、断面が大きくなったり鉄筋の量を制限受けたりと、実際施工側、意匠設計側から強く言われることが多くあります。目に見えない部分だからできるだけコストを削りたい本音をひしひしと感じます。しかしながら基礎は後からの補強が難しいうえ、爆裂などが起こると補修費用もバカになりませんし、長期運用が難しくなります。決して手を抜いて良い場所ではないのです。