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壁量計算の7つの弱点

 私は、木造住宅は耐震等級3が必須!!などとは思っていません。また簡易な手法である壁量計算も別に悪いシステムだとは思っていません。しかしながら欠点があることは間違いないです。その欠点も、理解して使えばそれほど怖いことはありません。どのみち複雑な建物は構造計算しないとわかりませんから、使い道は限られると思います。あくまでシンプルな木造2階建てであれば、構造計算されていなくても問題がないと考えます。ただ、壁量計算をしていないとか、理解していないで壁量計算しているとかは論外ですが・・・。今回は壁量計算の7つの弱点についてお話しします。

その1 部材の安全は考慮されていない

 梁のサイズ、基礎の配筋などは、壁量計算ではまったくわかりません。金物はN値計算を併用して算出できますが。壁量計算は、基本的に「長期的に安全に建ち続けることができる」こをを前提にしています。そのうえで「地震や風」のような短期的なことの被害を少なくするための指標となっています。建築基準法上の「最低の基準」ということです。よって、梁や基礎などは別途求めなければなりません。梁はプレカット屋に丸投げ、基礎は標準配筋で条件など無視が多いです。そのため壁量計算がクリアされていても、弱い建物になることがあります。

その2 制限の緩さを悪用する設計をする人がいる

 スキップフロアや、大きな吹き抜けなど危険な可能性がるものも、4号建築物というくくりで、簡単な壁量計算だけで済ました設計をする人がいます。言うまでもなく建物は、安全に住めることが重要です。そこをデザイン重視とか、快適性重視、その他設計者の考えで、安全性を軽視してはいけないと思います。

その3 自由度が高く、いろいろな迷信?が発生しがち

 例えば、必要壁量の1.5倍の壁量があれば耐震等級3相当(絶対に違います)とか、壁量満たさなくても通し柱があれば安全とか(嘘でしょ・・・)、X方向の壁が足りない場合近くにY方向の壁を足せば大丈夫とか(2人いました)、外部だけ耐力壁があれば良い(そういう建物もある)、とか、わけがわからないものがあります。まあ簡単なのでいろいろ考えてしまうのでしょうね。きちんと根拠もルールもあるので、きちんと学習して、しっかりやる事が重要だと思います。

その4 ギリギリで設計してしまう可能性

 最低の基準なのに、ギリギリクリアすれば良いと思っている設計者がいます。まあ基準法違反ではないけど、さすがに今の時代としてはさすがに・・・と思ってしまいます。

 普通に考えて外壁に構造用合板をはり、内部にバランス良く筋かいを入れていけば、必要壁量の1.5倍(注:耐震等級3ではない)くらいは簡単に確保できます。できないのは構造計画を考えない「わがままなプラン」だったり、ギリギリクリアでよいということで、筋かいなどをケチった場合などです。

 またギリギリではないにしろ、外部にだけ耐力壁を持ってきて、クリアできるからいいや、というのもある程度面積がある建物だと危険な場合があります。 安全に設計した結果、壁量計算で確認!というのが本来だと思います。壁量計算で、ギリギリを目指すのは本来の趣旨に反します。

その5 無駄が多い可能性

 上と逆なのですが、適正な部材が計算で出せないので、過剰に部材を使って不経済になることがあります。構造計算をすればだいたいの部材の目安がわかるので、あまり不足も過剰にもなりません。しかし壁量計算だけだと不経済になることがあります。プレカット屋さんも商売なので安全性に配慮しつつ、ある程度の余裕を持たせてプレカット図を書いてきますが、それが過剰かどうか?チェックする方法がなかったりします。金物も過剰になる可能性があります(特に告示)。

 構造計算で節約設計というのもどうかと思いますが、無駄の多すぎも今の時代どうかと思います。

その6 壁量計算と構造計算を混同される可能性 

 意外と多いです。壁量計算のことを堂々と構造計算という建築士の方が結構多いです。どちらでも安全に設計すればいいことなのですが、混同は問題です。意外と深刻です。

その7 性能を数値化しにくい

 最低の基準なので、それを満たしていれば、すべて建築基準法を満たすになります。つまり安全に設計しても誉められませんし、計算書を見ない限りわかりません。これでは安全設計しても、なんだかな~と思ってしまいます。その点構造計算すれば、耐震等級2とか3とか上げる事によって「頑張っている」ことをアピールできますし、安全にも寄与できます。

そもそも壁量計算の場合、壁量をただ多くしただけでは、安全は確保されたことになりません。せいぜい言えても「基準法より壁量を安全に余裕のある設計をしました」レベルになってしまいます。壁量計算が軽視されるのは意外ととこんなところにあるのかもしません。


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