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危険な木造の間取りの例(3)
第1回 北側玄関に多い例
第2回 2階建ての壁なしビルトインガレージ
第3回 階段が短辺にある建物
第4回 ビルトインガレージの外壁線が2階とずれている
第3回 階段が短辺にある建物
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昭和後半に多い間取りです。間口が更に狭い場合が多いです。北側は居室にしにくいので階段にしてしまうパターンです。
間口が比較的狭くて、玄関の並びなどの短辺に階段がある建物は、実は危険です。今回の例は、北側玄関で、その西側に階段があります。一見、北側に3枚耐力壁になる外壁が並んでいるので、壁は多く見えます。
しかし、耐力壁の原理が、上階の床に伝わる地震力を受けるもの、ということがわかると怖い間取りだとわかります。北側3枚が階段(吹き抜け)に面していて、伝達できていません。またその東側が窓、玄関でその他の壁もありません。玄関上部があるので、完全にその通りの耐力壁で受けられないわけではないのですが、見た目よりも弱い構造であることがわかります。また一般的に階段に面する壁(南側の壁)も耐力壁にすることが少ないので、効果的に使える壁はホールとリビングの間の1枚になってしまうのです。
現在の新築のように床が根太レスの強い床であれば、上記でも成り立つこともありますが、古い木造住宅だと根太が転ばしだったりと床が強くないので、思った以上に地震力が伝達できないことがあります。
壁量計算は非常に便利で簡便なツールですが、一般的な建物を想定しています。形状が複雑だったり、今回のようなことは考慮していません。考慮するのは計算ではなく、間取りを作る段階で設計者が考慮するべき事項です。新築の場合は、このようなプランでも構造設計次第で安全に設計出来る場合もありますが、中古住宅では難しいでしょう。
階段でなく吹き抜けでも同様です。吹き抜けもきちんと構造計画をすれば、安全に設計できます。検討を怠り、危険な建物を建ててはいけませんし、一般人で施主であっても、何十年も住む自宅の設計で、そのようなプランを許してはいけません。住みやすいプランはもちろん大切ですが、構造的に安全なプランをおすすめします。それは耐震等級取得以前の問題なのです。
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