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2025年の改正建築基準法のN値計算法 その6 2階建ての場合 より深刻になるN値計算のデメリット
さて、今回からいよいよ2階建てのお話です。ここからは解釈の違いがでて、設計者毎、ソフト毎に、計算結果が異なってきます。
↑その1から読みたい方はこちら
なぜ、異なるかというと、N値計算が、上下階の柱が揃っていることを前提に組み立てられているからです。でも実際の建物では、そんな建物少ないですね。しかし目標として考えてほしいのは、それでも上下階の柱は揃えたほうが強いということです。木造より遙かに強度が強そうな鉄骨造やRC造でもめったなことがないかぎり梁上に柱を配置しませんからね。木造だけ特別ということはないのです。また梁上の耐力壁は、構造計算だと大幅に低減して計算を行わなければなりません。壁量計算ではない概念ですが、一応、そういうことがあるよ、程度に覚えておいたほうが良いでしょう。
それを踏まえての2階建てN値計算の公式は、
N=A1×B1+A2×B2-L2
です。A1とB1は平屋と同じで、それぞれA1は当該柱の左右の倍率差、B1は周辺部材による押さえの効果の係数で出隅0.8、その他0.5です。次のA2は、2階柱の倍率の差です。つまり上階のことです。B2は2階の周辺部材による押さえ効果の係数で出隅0.8、その他0.5です。つまり上下階の引き抜きを合算する、という計算です。最後のL2は、鉛直荷重による押さえ効果の係数で、出隅1.0、その他1.6となります。平屋の時のL1は、それぞれ0.4と0.6でした。2階建てとなるので、そのぶん重量が重くなるので、L2はL1より大きくなります。
N値計算のメリットは、関係しない軸組の壁倍率に一切左右されないことです。そのためリフォームや設計変更が大きくても金物の変更が少ない設計手法といえます。一方デメリットは、その柱にかかる鉛直荷重(つまり上からの重量)を、一律で評価しているところです。ほとんど上から重量がかかってこないところは、危険側に、重量がかなりかかる柱は危険側になる傾向があります。構造計算だと荷重をだしてから補正するので、N値計算より適切に必要金物を算出できるのです。
また、前の記事でも書きましたし、今回の改正法で改善されますが、高さが2.7mの条件で算出しているため、階高が高いと金物が本来大きくなるのに、反映されない点も欠点です。
さらに、計算が、「上下階の柱が揃っている」ことを前提とした計算方法なので、柱が揃っていない場合は、「配慮」する必要があることです。しかし原則には書かれていないので、計算ソフトにおいても、配慮しない計算ソフトもあります。また配慮にしても
・柱ずれの処理が面倒なので、両方の柱に引き抜きを加算するもの(超安全策だが金物が増える)
・柱ずれを下階の左右の柱に均等に分割して引き抜きを加算するもの(計算しやすい。引き抜きの総数は揃うが、柱位置によっては不公平が生ずる)
・できるだけ左右の柱に不公平にならないように計算(ソフトによって異なる)
などが、散見されます。また高さの補正も、kizukuriのように従来から高さによって補正していたソフトと、まったく補正していなかったソフトもあります。まあ、高さに関しては明確に2025年の法改正で補正しなければならなくなったので、今後は大丈夫だと思います。古いソフトやマニュアルを使う場合は注意が必要です。
次回は、実際の計算例を見ながら、改正法の特性や、N値計算の実務をみていきましょう。
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