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特別なティーカップを買った
■ 100均とニトリの食器で生きてる
私にとっての食器の正義とは「たくさん入る」「適当に洗って扱える」「電子レンジで使える」である。
でも、ふと思い立った。
ティーカップが欲しい。
お皿(ソーサー)とセットになってるやつ。
たくさん入らないし、適当に扱えないし、電子レンジにも使えないのに、である。
■ もうすぐ誕生日
なぜかまだ生きてる。ありがたいことだね。
誕生日は大晦日と一緒。
「節目の日だなー」と思いながら、何をするでもなくやり過ごして終える。
毎年「せっかく誕生日なんだし何か…」とは思うが、結局とくに何もなく終わる。
そんな私にお祝いの言葉をかけてくれるフォロワー、ありがとう。
でも今年はもう一歩踏み込んで思った。
「形に残る、それでいて理屈ではない贈り物を自分に用意したい」と。
「理屈ではない贈り物」というのは、いらなくても日用品として使えるだろうからとかの計算がない、「ただステキだから買いました!!!」という贈り物である。
私は自分に物を買うとき、
「日常で使いやすいか」
「必要な物なのか(使うのか)」
「モトがとれるのか」とか、
こちゃこちゃ考えるので、
いいなーと思っても買わないものが多すぎる。
「飾り」は買ってもしょうがない。
「しまっておけばいつか使うだろう」は無い。
よって、おしゃれなティーカップなどというものは、
・繊細そうで洗い方とか無茶できない(大切にしなきゃというプレッシャー)
・割ったときの心理的ダメージがでかい
・電子レンジにもかけられない
・小鳥が吸うくらいの量しかいれられない
・ティーバッグはちぐはぐする(少なくとも私は気になる)のでティーポット必須、洗い物増える
・ソーサー付きなのでかさばる
・価値を勉強しないとただ高い
デメリットしかねぇ。
ドリンク飲むならクソデカレンジ対応マグカップが最強なんよ。
だけど……ずっと憧れはあった。
コーヒーとそれに合うデザートが好きで、カフェ行くのも好きだ。
古き良きなカフェは食器棚にティーカップが並べられがち。それを見るのは楽しかった。
コーヒーやたまに頼む紅茶は、こじゃれたカップで提供されることも多く、そのたびに気分が上がった。
だから、普段なら絶対に買わないティーカップを買うなら今だと思い立ったわけである。
たぶん、直近でスコーンがハチャメチャおいしいカフェと出会って歓喜した体験が今回の発想に一役買っている。
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そのときにステキなカップが寄り添っていたのがデカイ(紅茶もコーヒーも頼んだがどっちのカップも良かった)
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■ とりあえずティーカップでググる
今はミンネやクリーマでもかわいいティーカップがピンからキリまでの値段で買えるのだと知った。
何日もわくわくしながら商品ページをめくった。
でもちょっと信用できる出品なのかわからなくて、実際に利用するのは見送った(おすすめしてくれたひとごめんね、ありがとう)
ブランドサイトも巡った。
ウェッジウッドとか、マイセン、ナルミ、ロイヤルコペンハーゲン。なんかいろいろある。
どれも煌びやかだったり、優雅だったり、おとぎ話のアイテムだった。
この中からひとつ選んで……買うの……
マジ?
自分に対して半信半疑になりながらも、
私が好みだなーと思うものをピックアップしていった。
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上から
ノリタケ/ヨシノ カップ&ソーサー(グリーン)
ウェッジウッド/コロンビア セージ グリーン ティーカップ&ソーサー (ピオニー)
ノリタケ/サブライム カップ&ソーサー(鉄紺)
「内側にも柄があって」
「金色が差し色になってて」
「シルエットがすっきりしてる」
やつばかりだ。
私の好みがそんなかんじみたい。
で、そのうちから1つ選ばなければならない。
そしてオンラインショップでポチる。
そうしたら家に届くわけだが、本当に必要なん?
「どれにするか」の前に「そもそも本当に買うのか」をまだ悩んでいた。
毎日商品ページを見比べた。
飾る場所がないので、使わなかったら棚の奥のこやしになってしまう。
そうしたら、言い訳無用でお金の無駄遣い。
罪という思い出と物質を抱え込むのである。
(これは私の価値観の問題)
悩む……。
悩みすぎて誕生日来ちゃう。
■ 待てよ、ノリタケって地元じゃね?
気付いた。
ノリタケは愛知県の会社だ。
オンラインショップで悩むくらいなら(届いてから後悔するのが怖いなら)、実物見てそれでも欲しいか考えたらいいんじゃない?
ググったら名古屋駅の徒歩圏内に直売店があった。
これはもう行ったほうが早いわと心が決まる。
しかも、名古屋駅のタカシマヤにも寄ればウェッジウッドくらい見れるのでは?
計画したものの、前日の夜から「買うかもわからないものを見に出かけるのが嫌」で鬱だったが、当日の朝は予定した時間より30分ほどロスする程度で家を出ることができた。
■ 名古屋タカシマヤ9階キッチンウェアフロア
普段ハイソなとこ行かないので、タカシマヤのフロア歩いてるだけでソワソワする。
「金持ってなさそうな女が歩いてんな」って見られてそう(被害妄想)
化粧をしてヒールをはいたので、メンタルに多少はバフがかかっている。これがなければ引き返していた可能性ある。
(なお、数年ぶりに6cmピンヒールを履いたのでこのあと地獄を見た)
あるかどうかわからなかったけど、フロアの端に行ったらやっぱりカップが展示されてるコーナーがあった。
とりあえず端から端まで見た。
なんでカップが10万円するのかわからない。怖い。
そしてウェッジウッドのコーナーに戻って、買おうか悩んでいたコロンビア セージ(どこまでが名前なんだ?)シリーズがあったので挙動不審に見てた。
触っちゃダメだよなきっと……と思っていたら、店員さんに声をかけられた。
触っていいらしい。
ちょっとだけ触ってやっぱ怖くてすぐ戻した。
「贈り物ですか? ご自宅用ですか?」
「自分用です……ウェヘヘ、ンニョラマニョン」
「誕生日だから自分用に買う」を素直に言えなくて(なんか恥ずかしかった)、のらりくらり返事してたらすごい噛んだ。
金も持ってなさそうだしコミュニケーションも変な客になってしまったな。
おそらく朝イチの客がこれでごめん。
会話を終わらせるタイミングがわからなくて、
「実はこれからノリタケも見に行こうと思ってて……」と正直に言ったら、「そうなんですね!今日はお天気もいいからお散歩がてら行くにはいいですよ!」って返してくれて、このお姉さんメチャクチャ良い人だ、好き。ってなった(チョロい)
このあたりの土地勘があるようでない、という話をしたら「最寄駅に行くとかえって遠回りなので〜」と道を教えてくれた。良い人すぎる。
商品買わなくてごめん……と思いながらペコペコ感謝を述べてフロアを去った。
いつかの誕生日に、まだお姉さんがそこで働いていたらウェッジウッドを買うのもいいかもしれない……と思った……。
タカシマヤを出る。
名古屋駅周りはレイヤーが崩壊したデータのごとくB1/1F/2Fの概念が破壊されているので、GoogleMAPは役に立たない。
ちょっと戸惑いながらも歩いたら、お姉さんの言う通りに建物やガソスタや看板があって、迷わず最短でノリタケに着いた。ありがとう…ありがとう……。
■ ノリタケの森という複合施設
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陶器の販売店がポンってあるんじゃなくて、噴水のあるお庭?通り?があって、本社やレストランや、ギャラリーや直売店が集まってた。
公式サイトの写真を見てもらえばわかると思うんだけれど、びっくりするくらい綺麗なお庭なのね。
金持ってる会社、やることがちげぇな。
「ノリタケの森ギャラリー」、ノリタケ商品の美術館なのかと思ったら貸し出し展示会場で、学生らしき人が個展してた。
とりあえず一回りした。良かった。
敷地の中にはいるのに迷子になったけど、歩いてたら直売店に着いた。ホッとした。
■ いろんな陶磁器あった
入ってすぐ食器がある。きれーだ。すごい。
店内を右側から一周することに決め、入っていく。
お店はそこそこ広かった。
平日の午前中なのにお客さんもそこそこいる。
お金持ってそうな年配層が中心だったが、若い男女もわりといた。
子供用の食器をじっと見てる若い男性がいて、「他人の人生」を感じた。
陶器の人形とかもいろいろあった。
オンラインショップで見たカップも、見てないカップも色々展示してあった。
現物だとやっぱり印象が違うので、来て良かったとこの時点で思えた。
一方で、ティースプーン1個3000円の世界に打ちのめされ、「ここは美術館だ……私が買い物するところじゃない……」という気持ちは強くなりつつあった。
「ここで転んで何か倒したらどうしよう」って緊張感もあった。なんでヒールはいてきちゃったの。
店内にはアウトレットコーナーもあって、ここが私の居場所だってなった。
しかし、複数入っているギフトものが多くて、単身者にはあまり選択肢がない。
単品でステキなティーカップもあるにはあって、「どーしても何か買って帰りたいなら比較的安いしこれでいいのでは……?」とも考えた。
お店の内側は右手側から回ると「ノリタケの柄物商品、ノリタケの無地系の商品、ジブリとかのコラボもの、子供用、アウトレットコーナー」って順になっていて、最後に「大倉陶園の商品」の展示エリアになっていた。
大倉陶園てなに?てなった。
ググったらノリタケとは違う陶磁器メーカーだけど、仲良くしてる?からこうやって一緒に売ってるみたい。
ノリタケとはまた違う華やかさがあって、値段も派手さもかなりのピンキリだった。始皇帝が使ってそうなのとかあった。
「へー」って思いながら見て歩いてた。
始めのほうで「ヨシノ」は見たし、「サブライム」も最後の方にあって見た。どっちもやっぱり美しくてきらきらしてて、ここにあるからこそステキなんだよなって思った。
連れて帰っても馴染めなさそう……みたいな。
最後の1つを見るまで「ヨシノかサブライムを買うか買わないか」「この二つを値段で悩むなら、せめてアウトレットコーナーの子を連れて帰って記念にするか」で悩んでいた。
でもなあ……やっぱりなあ……は拭えなかった。
一周し終わっても答えを出せず、もう一周することにした。
が、頭も疲れてきて「こんなに悩むならやめたほうがいい」といういつもの私の答えになりつつあった。
そしてもう一回あのティースプーンを見て「やっぱ3000円なんだ……あとでツイートしよ……」とか「推しイメージカップにするならどれかな〜」くらいのしょうもないこと考えてた。
しかしですね、「でももう一回見たいな……」というのが3000円のティースプーンの他にもうひとつあって、二週目のときも立ち止まったし、二週目が終わって「時間的に店内の併設カフェでご飯食べようかな…メニュー見に行こ…」「でもちょっと高いし…このまま外でようかな…」「あ、電車の時間調べよう…」とうろうろしてる間に5回くらい「もう一回見たいな…」をしたわけですね。
それがいま私の家にいるティーカップなんですけど。
そのティーカップは大倉陶園コーナーの通路側に展示されていて、道なりに歩いていると向こうのほうにあるのがわかる(遠くから見える)状態だった。
はじめ遠巻きにそれを見たとき「さくらんぼ柄なのかな? 子供っぽいのはちょっと違うかな〜」と思った。
でも、近づくに連れて「なんか違う絵だ?」ってなって立ち止まった。
つぼみみたいな絵がよくわからなくて、ネームプレートを見たら「バラの実」と書いてあった。
バラの実!
あえて咲いてないのかわいいなってなった。
(あえて咲かせていないというか、「実を結ぶ」という縁起担ぎの絵だと後から知った)
ぽてっとしてるけどすっきりしたフォルムも、ワンポイントすぎないシンプルな柄や色の配分も、ソーサーとのバランスも、魅力的だった。
なにより、これで自分がお茶を飲んだらきっと楽しいだろうし、日常があったかくなりそうだと思った。
でも私は柄つよつよ華やかティーカップが欲しいんだよなー、違うよなー、と一旦はそこを離れて引き続き他のを見ていたわけである。
「ヨシノかサブライムを買うか買わないか」「せめてアウトレットコーナーの子を買うか」ばかり考えていたし、それは元々欲しかったイメージからかけ離れていたので、「帰る前にもう一回見たいな」と思っても「それを選ぶ」という選択肢をキレイに失念していた。
「いや、何回見てもこれ欲しいな?」
そう気付くタイミングがどっかでやっと来た。帰り道でならなくて良かった。
ひと目見たときから「私はこれがいい」になってたのに、脳みそが追いついてなかったんだね。
まあまあよくある。
そのあとは「アアーーー買う〜!? 一万円ぞ〜〜〜!?!?」ってなって、「お金を出すこと」に対してまたうろうろ悩んだ。覚悟が弱すぎる。
「ム…………買う………か…………」とようやく決心したらしたで、店内を巡回してるスタッフもいないし、商品札とかなんにもないし、「どうやって買うんだ…」というフェーズになった。
カップをレジにもっていくのは違うだろうけど、レジでせっせと会計やギフト包装していて、そういうスタッフの手を止めさせていいのか……!?という、いちいちチキンでめんどくさい女なのだ。
レジが空くのを待って「展示してあるやつどうやって買えますか」って聞く大人、あまりに社会慣れしてなくて恥ずかしいなって思った😇
結果的にはそれで良かったようで、商品の前まで行って「これです」って言ったら棚から化粧箱出してその場で中身確認させてもらって、レジでお会計して終わった。
「贈り物ですか、ご自宅用ですか」と聞かれて、前者かな……とも思ったけどギフト包装してもゴミが増えるだけだから自宅用ですって言った。
私は自分のこう言うところあんまり好きになれないよ。もっとさあ(ろくろ)
ともあれ、私のはじめてのティーカップ相棒が決まった。うれしい。
買ってしまえば宝物が腕の中にやってきて、とてもわくわくした。
化粧箱の入った紙袋。軽くてちょっと重みがある。買ったぞ、フフフ、ってなる。
紙袋の取っ手を大事に握った。
想定していた以上に悩んでいたため、前売りチケット買ってた映画に間に合わないかもしれんてなって慌ててたのはまた別の話。
ノリタケから109シネマズ名古屋、地味に距離があるのに本当になんでヒールをはいちゃったの。足の指削れてなくなるかと思った。
■ 私の特別なティーカップyeah
映画RRRはサイコーだった。
そして帰宅し、箱を開けたときも、ちっともがっかりしなかった。
やっぱりかわいい!
良い買い物した!
うれしい!かわいい!
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大倉陶園/バラの実 カップ&ソーサー
えへへへへってなる。かわいい。
縁のところ、不思議な角度がついてて、その角度がね、等間隔でさりげなく模様になるようになんかなってて、あとたぶん飲みやすくもなってて、なんかこう……さりげない意匠?がすごい。
ソーサーの縁が淡くキュッてなってるのも花びらみたいでかわいい。
後から気付いたけど、こんなにかわいいのにトゲが描いてあるのクールだね。
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紅茶入れたらますます"""良"""てなった。
心なしかお茶もおいしく感じる。
飲み終わって底に数滴分の紅茶がほんのり色付いてるカップ内側の、室内光に照らされた白磁のクリーム感がはちゃちゃに見惚れる。
かわいいよ〜。
縁取りの金色が、光の当たり方で明暗を描いてるんだけれど、めっちゃめちゃ上品でずっと見ちゃう。
美麗イラストの金装飾ハイライトがそのまま現実になってる(???)
カップを見るたびに発見や気付きがある。
すごくハッピー。楽しい。
通販じゃなくて、実際にお出かけしてよかった。
夜はすごく疲れてすぐ寝ちゃったけど、たまには冒険もいいね。
誕生日おめでと私。明日だけどね。