陰キャ大学生のaiko歌詞解釈~星のない世界~
はじめに
このコロナ禍で愛する人や大事な人に逢えない。そんなモヤついた気持ちを抱えている人は少なくないだろう。楽しみにしていた予定が延期になってしまったり、はたまた人生における大事なイベントを、周りの人の事を考えて泣く泣く中止にした方も居るのではないだろうか。
けれどこのような状況でも光が無くなった訳では無い。雲の上には星が光っているように、押し込められた心の中でも喜びや楽しみを見つけることはできる。
この「星のない世界」は今の現状だからこそ、人の心に届く曲であると思う。
拙い文章になるが、最後までお読み頂けると幸いである。
『星のない世界』
あたしの髪が伸びて驚くほど久しぶりになってしまわぬ様に
昨日より少しだけ多めにあたしの事を考えてほしい
初めて逢った日にもう一度逢いに行って そしてまた同じ様に
ぎこちなく合った目の奥にいるあたしを愛してほしい
3月に緊急事態宣言が出され、早いものでもう2ヶ月になる。これほど陽の光を浴びず、家に閉じこもる時間は今後の人生で味わうことはないだろう。 散歩に行くとしても人通りが少ない星が輝く夜だったり、星が隠れ、太陽が顔を覗かせる早朝に行く人が多かったのではないだろうか。
この「星のない世界」は遠距離恋愛の曲だと考えている。ひとえに遠距離といっても、距離的な話だけではなく、二人が置かれている時間の都合上、毎日恋人と逢える状況ではない、そんな時間的な遠距離も含まれている。社会人同士の恋愛ではこのような恋愛は多いのはないだろうか。
Aメロでは彼に対する彼女の真摯な想いを伺う事が出来る。
彼の記憶の中で生きているあたしはもう過去のあたし。日々伸びる髪が二人の空白の時間を知らせる。久しぶりの再会にあなたが驚くことのないように願う彼女。「昨日より少しだけ多めにあたしの事を考えてほしい」の部分から、一日たりともあたしの事を思い出さない訳はないだろうと確信が見える反面、少しだけ多めという遠慮がちなお願いから、何ともいじらしい彼女の想いが伺える。逢えない時間が続く中で、あたしへの想いが朽ちてしまう事があるかもしれない。そんな時は初めて二人が出逢った時間に想いを馳せて欲しい。ぎこちない距離感の二人や、どこか張り詰めた空気を思い出すだけで、きっとあなたはあたしへの想いをあの頃のまま温め続ける事ができるはず。
星がない世界なら 目を閉じて証明するのに···
極めて抽象的な歌詞だ。曲の題名である「星のない世界」をほのめかした歌詞は曲中でここでしか登場しない。つまりこのBメロがこの曲の要なのである。星がない世界ならば、何を彼女は証明するのか。その答えがこの「星のない世界」の全貌である。
とても大事な宝物をあたしはやっと手に入れたんだ
胸が病みそうで不安に溺れそうになったら
真っ直ぐにあなたを思い出すよ
サビではあたしのあなたへの想いが読み取れる。とても大事な宝物とはあなたの事。彼女にとってあなたの存在は真っ暗な暗闇での道標になる光なのだ。胸が病み、不安に溺れそうになってもあなたの事を思い出すだけで、心を持ち直す事が出来る。あたしにとってあなたはそれ程大事な存在であり、とても大きな存在なのだ。
あなたの両手は毛布 許してくれるなら 強く壊れぬ様に
思い出の帰る温かい匂いと共に抱きしめてほしい
二番では彼女のあなたへの想いが存分に伺える。「許す」という言葉が使われているが、この許すは“謝罪”の許すではなく、“了承”の許すだろう。あなたが良いというならば、あたしをその柔らかく温かな両手で包み込んで欲しい。あなたの匂いが二人で紡いだ記憶を呼び起こす。精神的にも肉体的にも安心できるこの瞬間はまさに至高の一時。
夏が来る手前の 冷めた風が首をさらった
このnoteを執筆しているのは五月の半ば。ちょうど夏でもなく春でもない冷めた風が吹く季節。絵に描けそうな情景が二番Bメロから読み取れる。
知らない間にあなたにもらった
何度も手を洗うクセ空見上げる事
想いが動いてゆく音を駆け抜ける時の中で聞いた
あなたのクセが知らず知らずの内に体に染み付いてる程、あなたの存在が彼女にとって大きなものであると共に、二人の過ごした時間が短いものではない事が伺える。
想いが動く音とは何なのだろうか。胸のときめく音なのか。はたまた、あなたと出逢った時の胸の高鳴りが、今は形を変えて精神の安定へと変わった音だろうか。長い時間を共にした二人であったが、その時間は駆け抜ける程あっという間に感じるほど、ずっと楽しい幸せな時間だったのだろう。
過去も未来も心の底はいつも一人だと思っていたから
全部我慢してやっと溢れ出した涙に
本当の恋を初めて知った
あたしの過去が語られる。あなたに逢うまでの自分は人生は虚しいものだと決めつけていた。これまで生きてきた過去は全て独りで過ごしてきた。きっと未来も独り寂しく生きて、最後まで一人なのだろうと思っていた。
しかし、ある日あなたに恋をした。
白黒だった日常に色が付いていく。これまで我慢してきた怒りや哀しみが涙と共に溢れ出す。この温かな涙を忘れてはいけない。この涙を流させてくれたあなたを離してはいけない。
とても大事な宝物をあたしはやっと手に入れたんだ
胸が病みそうで不安に溺れそうになったら
真っ直ぐにあなたを思い出すよ
サビでは一番のサビが繰り返される。
ここで、一番Aメロ「星がない世界なら 目を閉じて証明するのに···」をもう一度振り返ってみよう。星がない世界と彼女は言っているが、正確には星が隠れてしまっている世界。道標となる光は、誰もが心の中に持ち続けているものである。星とはあなたの存在。あなたが隠された暗闇の世界でも、あたしはあなたを見つけ出す事ができる。目を瞑っていてもあなたを見つけ出す事が出来る。つまり、あたしがあなたを愛している事を証明して見せようと言っているのだ。
この自粛期間中、恋人とのすれ違いが続き、別れてしまったという話をよく耳にする。また様々な情報が交錯する中で精神を病んでしまったという人も少なくはないだろう。そんな時こそ星のない世界へ行き、自ら情報をシャットアウトしたり、二人が作り上げた思い出に浸りこみ、自分の存在を再確認したり、もう一度愛を再確認するのも良いと思う。障害を乗り越えた経験があれば、この先何があろうとも、前進する事が出来るのではないだろうか。
誰しもが心が虚しさや哀しみ、怒りに支配された「星のない世界」を味わったことがあるだろう。一筋の光さえ見えない暗闇は日に日に心を荒ませていく。けれどそんな時こそ僅かな光を探し出して欲しい。その光ははるか遠い雲の上かもしれないし、ずっと遠くの目には見えない小さな光かもしれない。しかし、真っ暗な世界でも少しの希望さえ見出すことが出来れば、いつかその希望があなたの世界を明るく照らす未来が来る。
「星のない世界」は星が存在しない世界ではない。「星のない世界」は星が隠れているだけの世界なのだから。(終)
最後に
「星のない世界」の解釈をやらさせて頂きました。コロナ疲れや自粛疲れという言葉が創られるくらい、皆様が自粛生活に辟易してる事が伺えます。
僕はタイトルに陰キャ大学生とあるように、元々外に出る機会が多い活発的なタイプではありません。けれども自主的に外出しないのと、外出を制限されるのではメンタル的に大きな違いがある事に気付きました。アウトドアな活発的な方がは大変ストレスが溜まっていると想像に難くありません。
この曲は2007年にリリースされました。そのためコロナ騒動とこの曲を無理やり融合させている事に怒りを覚えている方がいらっしゃいましたら、ここで謝罪を述べさせて頂きます。しかし、自粛期間中シャッフルで音楽を聴いていた時にこの曲が流れてきた瞬間、まさに今の状況じゃないかと思ったのです。かなり無理やりくっつけた感は否めませんが、このnoteが良いと思った方は、最後にいいねポチッと押して頂けると大変励みになります。
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