性死ン安定剤

今日も変わり映えのしない一日が始まる。
私はマンションの一室で男性相手にアロママッサージをするメンズエステという仕事をしている。
エステと言っても脱毛や美容サロンとは異なり、露出の多い制服で身体を揉み解し際どい部分まで触れて男性器を勃起させて色情を煽るという内容だ。
風営法の許可を取っているわけではないため名目上は性的サービスはご法度となっているが、性的好奇心に応じてサービスが激化している店舗もありグレーゾーンな世界である。

激化する要求に応じて身を擦り減らすことなく効率よく金を稼ぐことを目的とする私は、賃金と苦痛のバランスの取り方に日々試行錯誤していた。
口八丁手八丁で躱そうにも性欲に支配された男というものは、物事の判断力が著しく鈍り理解に苦しむ言動をし始める。
扇情的に呼び込み対価を得ているためある程度は致し方ない部分はある。
しかし、金を得るために働いているにすぎないので、そんな見ず知らずの客の心情に寄り添ったところで心身を蝕まれてしまう。

既に蝕まれつつあった---。

いつしか寝付けなくなり精神科の門を叩いた。
手短に話を聞かれた後、精神安定剤と睡眠薬を処方された。
医師の言われた通りに飲み続けていたが、一向に効かないどころか日中の眠気が酷くなるばかりだった。
仕事にも影響が出てしまうため服用を中断することにした。
精神薬というものは突然服用を中断すると強烈な離脱症状があらわれるようで、めまいやふらつきなどに見舞われ日常生活にも支障をきたすようになってしまった。

なぜ私がこんな日々を送らなければならないのか。
混濁する意識を紐解きながら鬱屈とした精神の落とし所を探していた。

客だ。

薄汚い身体と精神と欲望を撒き散らし、曖昧な灰色の世界で独りよがりの屁理屈をこねて要求を押し通そうとする産業廃棄物と大差ないかろうじて人の形をした物体。
私が受けた苦痛はヤツらが支払った対価とは比べ物にならないので、少し悪戯を仕掛けよう。

断薬して余った精神薬を飲み物に混入することにした。
カッターナイフで精神薬を粉末状にしたものを持参して出勤し、来客時に出すお茶に溶かして出すことを思いついた。
著しく知能の劣った子供みたいに駄々をこねる客も、安定剤を投与すれば大人しくなるのではないかと我ながら妙案だと悦に浸り期待に胸が躍った。
手始めに来店頻度の高い厄介な客で変化を観察することにした。
味に違和感が生じれば怪しまれるかもしれないため少量ずつ混入させて出してみた。
あまり効果が感じられないため、少しずつ増やしていった。
ある日、ついに虚ろな目で動きが鈍くなりおとなしく帰ったため期待通りの効果に思わず拳を握りしめた。

復讐心を引き金に始めた行為はいつからかスリルを味わうための娯楽へと変化していった。

初対面でも来客時に態度が悪い客には容赦なく安定剤入りのお茶を提供するようになっていった。






酒飲んで酔っ払って書いたフィクション
あとで続き書こう

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