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【毎週ショートショートnote】音楽トリマー

ぴーんぽーん

「ハーイ」
ギギっとドアを開けると久しぶりに見る友の姿があった。
「ウソだろ、山田じゃないかッ! いやいや、んなワケない。双子?」
狼狽する俺を見て山田が笑う。
「いーやオレオレ。山田だよ」
「だっておまえ先月ーーーま、いいや。入れ」
ここひと月のうちに書きためた曲を山田の前に並べる。
「やっぱりおまえがいないとダメだ!!」
俺は作曲担当、山田は仕上げの音楽トリマー。どっちが欠けても曲は完成しない。俺らは常に二人で一つだった。つい、先月までは。

それから数日間。俺らは部屋に籠り、寝る間も惜しんで曲を作った。

「おまえ、ずっといられるの?」
「さあね」
飄々とペンを動かす山田が首をかしげる。ーーーと、その体がぼんやりと輪郭を失い始めた。
「やっぱりな。お別れだ田中」
「そんなーーーイヤだ!!」

「・・・・」

薄れ始めた山田の発する言葉はもう音にはならなかった。口元だけがゆっくりと動いて最後のメッセージを俺に伝える。

「山ッ田あああああああ」

(414文字)

こちらもオマージュです(^^ゞ


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