아르키다 の謎:New Jeans 'Bubble Gum' MVより
New Jeans の新曲 'Bubble Gum' のMV冒頭で "안녕, 난 혜인이야. 오늘은 내가 비눗방울을 만드는 법을 아르켜 줄게."(わたしヘイン。今日はわたしがシャボン玉の作り方を教えてあげる)というセリフが出てきます。
아르키다…? この動詞を見たことがあるでしょうか。韓国の "표준국어대사전" を見ると次のように載っています:
…全然わからない。とりあえず 가르치다(教える)と 가리키다(指す)の意味があることはわかります。そういえば 가르치다 を 가르키다 と言うこともあります。가르치다, 가리키다, 아르키다 の関係は一体どうなっているんでしょうか?
아르키다 の分析
現代語を見ると、-으키- という接辞が付いているように見える語があります。일다(起きる) にたいする 일으키다(起こす)がそれです。아르키다 も同じように、알다(知る)から 알으키다 = 아르키다(知らせる)のようになったのだと考えることができます。「知らせる」が「教える」の代わりに使われるのは、意味的にも似ているので納得できますね。(韓国語で「教えて」と言いたい場合、いつでも 가르쳐 줘 と言わない方がよい、というのは日本語話者が韓国語を使う際の注意点)。
さて、これで済めばよいのですが 아르키다 は 아르치다 というバリエーションを持っているのです。さらに、上で書いたように 가르치다 を 가르키다 ということもあり、この謎に迫ってみたいと思います。
가르치다 と 가리키다 の関係
実は 가르치다(教える)と 가리키다(指す)は15世紀の段階では同じ語形でした。元は下のような語形です(・は昔あった아래아という母音字です)。
母音の変遷については割愛しますが(韓国語の歴史的にはひじょーに重要なトピックですが)、ひとまずここから 가르치다(教える)になったのはよいでしょう。問題なのは 가리키다(指す)です。ㅊ → ㅋ という変化を経ています。
ㅊ → ㅋ になったのは、過剰修正と考えられています。韓国語には ㄱ → ㅈ という変化のパターンがあります。ㅊ → ㅋ の逆の変化ですね。たとえば 길(道)を 질 といったり、기름(油)と 지름 といったりする例があります。このような変化のパターンがあるので、「あれ? じゃあ 가르치다 の 치 も、元々 키 だったのかな」という意識が働いて、本来 치 なのに 키 に修正して、가리키다 が誕生しました。
このように、本来 ㄱ じゃないのに ㅈ を ㄱ に修正してしまった例は、実は 김치 にも当てはまります。김치 は元々漢字語で 딤채 [沈菜] のような発音だったのですが、딤 が 짐 になるにいたり、また「あれ? 짐 ってことは元々 김 だったのかな?」という意識が働いて 김 になってしまいました。
가르치다 と 가르키다 と
가르치다(教える)を 가르키다 ということがあると書きましたが、가리키다(指す)も 가리치다 ということがあります。아르키다 も 아르치다 ということがあるので、語源はさておき、現代の母語話者は、意味的にも形態的に似てしまった三者間でかばん語をつくっている可能性があります。
かばん語 (portmanteau word) とは、「鏡の国のアリス」に由来する言葉です。breakfast(朝食)と lunch(昼食)から brunch(ブランチ)をつくるようなもので、日本語だと「やぶる」と「さく」で「やぶく」をつくる例があります。
最後に
ここではよく使われる語形だけを話題にしましたが、実際は様々な方言で様々な語形が登場します。우리말샘 で簡単に見られるので、参考にしてください。
https://opendict.korean.go.kr/dictionary/view?sense_no=554382&viewType=confirm
가르키다 や 아르키다 については、韓国では誤用の文脈で話題にされることが多いですが、ここではそのようなことには一切関心を払っていません(検定試験を受ける方は気にしてください)。
かばん語をつくっているのでは? という話はわたしが考えたことなので、間違っていることがあったらどうか教えてください。