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私だけの小さな物語
もう1人の私の娘へ
あなたが生まれてもうすぐ30年ですね。
そして、あなたと別れて、27年。
そして、あなたが私を訪ねて実家に来てくれてから10年が経ってしまいました。
私のストレスのせいで1800gととても小さく生まれてしまったあなたは、懸命に生きて私の胸の中でスヤスヤと眠っていたことをとてもよく覚えています。
菜の花の季節に生まれたから名前の漢字に『菜』を入れて、「ずっと一緒だね」と私はあなたの寝顔を見ながらそう、あたりまえにつぶやきました。
その確信が簡単に崩れるとも思わずに。
あなたと過ごした3年間。たった、3年。
感受性が強くて、私の思いを知ってかしらぬか、あなたはとても人に気を遣う優しい子でした。弟思いの本当に優しい子。
とても大切だったのに、私はあなたとそれ以上過ごす事ができませんでした。どんな理由があっても世間的には許されないことでしょう。
そして、今日。
私はあなたと30年ぶりに会う準備をしています。
そう今日はあなたの結婚式。
あなたと引き離されて、無理にでも私の元へ連れ戻す事もできたのに、それをしなかった私を、
あなたが高校3年生の時、私を訪ねてきてくれたのに会うことが怖くて、会わずにいた私を、
あなたは無邪気に「お母さん」と呼んでくれる。
ごめんね、と言っても、
何度言っても
あなたは
「お母さんのこと悪く思ったことないよ」
っていつも言ってくれる。
それどころか「私の名前につけてくれた菜の花を見に行ったよ。キレイだったから写真を送るね!」と慕ってくれる。
あれから毎年、菜の花を見るたび
一人
思いを馳せていた。
そんな私にとって大切な菜の花が今スマートフォンの画面いっぱいに広がって、みんな素敵に笑っている。
.......どうか本当に幸せになってほしい.......
そしていつか、あなたと一緒に菜の花畑を歩きたい。
あなたはどんな顔をするだろう。
私はプレゼントのサムシングブルーを持って今式場の前にいます。
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この扉の向こうに