【旬杯リレー小説】起PJさん→承riraさん→転しろくまさん
PJさんの旬杯リレー小説。
起ストーリー【C】/PJ 約1700文字
riraさんのお話。
承ストーリー海砂糖
では、転を書きました。
どぞ。
『float_glass』
「ふっ、」
彼女がちょっと怒ってしょっぱい顔をみせた時のことを思い出して、僕は笑った。
「なんだ?」
「あ、ごめん、なんでもないよ」
彼女が引っ越してしまってから僕の中の思い出のページは進んでいない。
「甘くなるほどの思い出つくれなかったな」
父の営むサーフショップの一角に僕の作品を並べてもらっている。
海砂糖と作品に名前をつけた。
彼女がくれたシーグラスは、麻の紐で編んだネックレスのペンダントヘッドにして首にかけている。
これを作ったことがきっかけで僕はシーグラスを集めだし、そしてアクセサリーを作り始めた。店の常連さんはよく買ってくれる。最近では父がネット販売もしてくれているおかげで人気も出てきた。
ただ。
この僕のシーグラスはしょっぱいままだ。
「甘くなったらまた会おう」
彼女の持って行ったあのシーグラスは甘くなっただろうか。
「いらっしゃいませ」
店に小さな女の子を連れた若い女性が入ってきた。
「すみません、あの石のアクセサリーを」
「はい、こちらにあります」
「この前、ネットでみて娘がどうしても欲しいっていうもので。ちょっと近くについでがあったので寄ってみました」
「ありがとうございます」
白いサンドレスがよく似合う、色の白い女の子は僕が作ったアクセサリーを嬉しそうに見ていた。
「海砂糖っていうんだよ。海に流れ着いたガラスの破片がね、長い年月を経てこんな風に変わるんだ。」
「かわいい」
「お兄さんの首の、それ、とてもきれい」
「あ、ありがとう、でもこれは売り物じゃないんだ、ごめんね」
「そうなんだ。」
「あ、でも」
そういって僕は僕の首からそれをはずし女の子の首にかけてあげた。
「いいの?」
「うん、気に入ってくれたから、だからあげるよ」
「ありがとう」
女の子は嬉しそうに笑った。
女の子の髪からココナツのような甘い香りがして、
「あ、あの時に似ている」
そう僕は彼女と別れたあの夏の日をまた、思い出していた。
みなさんもいかがですか?
美しい夏が、ほら、ここに。