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お父さんに
ぴょんぴょんレター、noterさんじゃないけど、いいかな?
そして、宛名を伏せてって、やっぱり難しくて、ごめんなさい。
私の父は一昨年脳梗塞で亡くなりました。
大腸のポリープを取るため、1泊2日の予定で入院することになった父。
簡単な手術だからと立ち会いも見舞いもいらないと言っていた父でしたが、私としてはどちらかというと心配性の母に付き添いたくて立ち会うことにしていました。
手術はその日の午後からだったため、朝ゆっくり準備をしていると母から電話がありました。
『お父さんが意識不明って言うの。』
何を言っているのかわからなくて、とにかく取るものも取らず状態で、病院へ向かいました。
MRI画像の右側半分が全部真っ白になってしまった父は、左手をゆらゆらとさせながら何事もない様子で穏やかに眠っていました。
お父さんへ
大変な事態なのに、呑気に眠っている父の手を私は取りました。
何十年ぶりに握った父の手はとても温かくて、その手首にあったキズをみつけて
かまいたち、って言ったっけ?
と、子供の頃に父が私に教えてくれたことを思いだして、聞いてみました。
口数の少ない父。
典型的な昭和の人間。
雪の日でも裸足にサンダル、晩酌は毎日ウイスキー、毎週ゴルフ三昧で遊んでもらった経験なんて1度もない。
でも、後期高齢者になっても仕事を続けていたり、地域のボランティア活動で、栄養大学の先生と「葉酸」を広めるため様々な活動をして、葉酸といえばこの地域とNHKでも取り上げてもらえるほどだった。
お父さん口数少なすぎだけど、いつもきてくれたね。
若年性小児リュウマチで入院していた私に、毎日3冊ずつ、ドラえもんの漫画を買ってきてくれた。
学生の頃は必ず駅まで送り迎えをしてくれて、
私が家出した時は「宝もの」と言ってくれた。
おかえりって言うように、ただ、笑ってたね
娘との接し方を知らない不器用な父は笑うことが精一杯だったらしい。
ただいまって言っても、いつもただ笑っていた。
亡くなった日は父の隣で寝て、朝は普通におはようって声をかけた。
父は「おはよう」って言うように笑ってはくれなかったけど、笑っているように思えたよ。
胸の上で合わさった手はすっかり冷たくなってしまって、
私はそれをなんとか温めようと頑張ってみた。
お父さん、ただいま〜
私は実家に帰ってもお仏壇に手を合わせない。
その代わり、そこに置いてあるお菓子や果物をもらっていく。
いいでしょ、お父さん
父はきっと笑っているはず。
私の家のリビングには父と母、そして娘が多分小学校2年生くらいの時に撮った写真が飾ってある。
その父は、孫と少し距離を取るようにして座り、優しく笑っている。
父らしい。
お父さんへ
お父さん元気ですか?
私は元気でがんばっています。
また、そのうち帰るね。
私の大切な人へのレターでした。
父へのお手紙は私の中にあったものを、私自身も実は読んだことがなかったものを取り出してみました。
よかったら参加作品としてください。
よろしくおねがいします。