映画『生きる-LIVING』を絶滅危惧種が観てきました(一部ネタバレ含む、けれど肝心なところは大丈夫だとおもう)
あらすじはこうだ。
少し昔のイギリス。役所の市民課に新人が配属されるところから物語ははじまります。とはいえ、主人公は彼ではありません。市民課の年老いて威厳のある、ちょっと怖い課長が主役。まずぼくらは新人の彼の目を通して、課長の人柄や市役所の仕事の様子を知ることになるわけです。
(構成がうまくできているなあ)
繰り返しの毎日にある日、ちょっとした異変が起こります。「今日は3時20分に早退する」(時間はそのくらいだったと思う)と課長が言い放ちます。
このあたりから、映画は課長にフォーカスされてきます。主人公ですからね。そうそう名前はウィリアムズさん。
彼の行き先は医師のところ。「検査の結果がでました。残念です。」という言葉とともに、あっさりの余命宣告6ヶ月。呆然自失の主人公。家に帰ったウイリアムズさんは、同居している息子夫婦にも打ち明けることができずにショック状態。翌日はいつも通りに家を出たあと、なんと無断欠勤をしてしまいます。
あらくないすじ。
貯金をおろし、知らない町へ行ってお酒をのんで遊んだりするのですが、満たされません。
自分の街に帰ってきて(おそらく帽子のエピソードと関係あると思うんだけど…)紳士服店をのぞいているところを、職場の若い女の子に声をかけられます。「帽子が違ったので人違いかと…みんな心配を…そして、わたし辞めるので次の職場への推薦状を…」「それは済まなかったね、一緒にランチでもとりながらそこで書こう」
彼女の夢、そして職場の面々につけたあだ名についての話。
束の間、自分のことを忘れて楽しい時間をすごします。そして、ウィリアムズさんはついに自分につけられたあだ名を知ります。もちろん怒ったりはしませんよ。自分にぴったりだとすら思うわけです。
(どんなあだ名なのかは観てのおたのしみ)
彼は仕事を休みつづけます。しばらくしたあとウィリアムズさんはふたび彼女と出会い、自分の余命ことを打ち明けます。そして、いろいろ話すうちに自分はなにに憧れていたのか、自分に足りないものはなにかに気が付きます。(彼女からすれば、余命いくばく…なんてちょっと困った告白ですよね。でも対話の中で気付くという演出ということで!)
そしてウィリアムズさんは出勤します。なんのために?
彼がなにをしたのか、続きが気になる方はぜひ映画で。
こんな人におすすめで、ぼくの感想とひっかかり
毎日が繰り返しだと感じる人におすすめの作品です。
なぜなら、押し付けがましくなく人生の有限さをじんわりとわからせてくれるからです。そして、幸福感について一つの答えを示してくれます。それについて、そのとおりだと感じでもいいし、いや自分は違う思うのもいい。いずれにせよ考えるきっかけになるのではないでしょうか。
どうせ、老いや人生観についての映画なんでしょう?と思っている人は、いい意味で裏切られるんじゃないかと思います。
さて、感想とひっかかり。
印象に残ったセリフは映画の後半ウィリアムズさんの「腹が立たないのですか?」という問いに「私には怒っている暇などないのだ」(たしかこんな感じ)というものです。
余命の話がでてくるので言わんとすることは十二分につたわりますが、言葉として胸に刺さりました。「怒っている暇などない、どうすれば問題を解決して、達成できるかを考える時間に充てるべきだ」という台詞に思えたからです。自分の心の中は感情で解決できるかもしれないけど、実際の目の前の問題は感情では解決しません。「感情をやる気に変える」という方法も聞きますが、「暇などない」と断じてしまうあたりは、余命がうんぬんとは関係なくとても潔いと感じました。
それから帽子のエピソード(詳しくは映画を)
劇中で帽子の変化に真っ先に気がつくのは、若い女の子なんですね。「職場のみなは気付くかしら」とも。時間は流れ、物事は常に変化しています。そういう意味で変わらない毎日なんてありません。ぼくは大人になるにつれて「変化や発見、楽しみも身の回りにあふれているのに、気付く能力が衰えていくのではないか?」と考えたりしています。人は恒常性(いっつも同じ状態でいること)を望む心理があるそうですが、それは毒にも薬にもなります。大人になると知恵が付きます。その知恵を冒険を楽しみ、変化を感じたり発見をする工夫に使えるようになりたいなあと思いました。
映画には「死」が出てきますが決して暗い作品ではなく、こころの奥にそっと小さな火をつけてくれる、そんな温かな物語に感じました。「この映画を見たら、自分はどう感じるか?」と思った方はぜひご鑑賞ください。
ぼくが、映画を見て泣いたかどうかですって?
ご想像におまかせします。
長い作文にお付き合いいただきありがとうございます!
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