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Mt.TAKAO号に乗って高尾山を訪ねる

はじめに

東京都西部に位置する高尾山は子供の頃に遠足で何度も行った山だが、足が遠のいてから長い時間が経つ。2018年から京王線の座席指定特急が運行されていると聞き、この乗車も兼ねて久しぶりに訪ねてみた。(2019年12月訪問)

Mt.TAKAO号の予約

2018年から京王線に座席指定の特急の運行が始まった。これまで通勤型ロングシート車両だけの京王線では画期的な話である。行楽シーズンに高尾山口への特急も座席指定車両で運行されるようになり、今回はこれに乗車する。

19年秋シーズンの土日は新宿発は2本設定されている。ネットの京王チケットレスサービスで新宿9時発を予約した。料金は一人410円、支払までネットで行うので便利である。

Mt.TAKAO号に乗車

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当日は天気も良く、もう12月に入っているが、まだ紅葉も期待できそうだ。新宿駅2番ホームで待っているとお待ちかねの電車がゆっくりとホームに回送されて来た。

使われる車両は2017年から走り始めた新5000系である。座席を回転することで座席指定時のクロスシートと通勤時のロングシートの両方に使える優れものだ。京王沿線で暮らしていた子供の頃に、クロスシート特急が走らないかと空想したものだが、現実になるとは感慨深いものがある。

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乗り込んだ車内は間接照明でwifi完備、電源コンセントもある設備充実で、ちょっと優雅な雰囲気が漂う。

定刻に新宿駅を発車した電車は西に向けて順調に走行する。クロスシートから眺める沿線の景色は見慣れたはずなのに、車両が違うと旅気分で新鮮だった。

持参の飲み物を飲みながら、つかの間の旅行気分を楽しむうちに、家並みが連続する市街地から緑多い山並みが近づいてきて約50分で高尾山口駅に到着した。

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高尾山口駅舎は2015年に新しくなり、これまでのありきたりな印象が一変した。特に正面の木組みが並んだ巨大な木造の屋根が印象的である。

設計は建築家の隈研吾氏。高尾山と薬王院を意識したデザインで世界中からお客を迎える玄関口として胸を張れる立派なものだ。その土地の持つ魅力を洗練された形で表現する隈研吾さん、さすがです。

薬王院を通り高尾山頂へ

今日は時間も無いため、歩きだけの登山はせずに、軟弱と言われそうだがケーブルカーで楽に登るつもりだった。しかしケーブルカーの乗り場前には長蛇の列。隣のリフトは待たずに乗れたので、リフトで山頂駅に向かう。

高尾山のリフトは初めてだったが、少し高い位置からリフトに揺られて、山の匂いや風を感じながら、ゆっくりと過ぎて行く山の景色を楽しむことが出来た。これはこれで山の楽しみ方として悪くはない。

リフト山頂駅からは緩やかな登り勾配の歩きではあるが、舗装された道には手ぶらの観光客が賑やかに歩き、静かに山を楽しむ状況からほど遠い。太い幹の杉木立の薬王院の参道は昔と変わらぬ佇まいである。20分ほどで薬王院境内に到着した。

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高尾山薬王院は1200年もの歴史ある古刹である。修験道の山であり、小田原北条氏や徳川幕府から保護されてきた歴史がある。明治後も国の保護で山一帯が開発を免れたため、高尾山に豊かな自然が残ることになった。今でも山の自然は保護されているのは良いことだが、参道の周囲は観光客向けの店が目立つ。都会からほど近い、手軽に自然を楽しむ観光地というのが実情だ。

ここではお約束で薬王院に参拝してご挨拶する。本社は飯綱権現堂で、江戸時代中期の権現造の様式で、この時期の物としては代表的なものらしく、色鮮やかな彫刻が目を惹く。境内は山の斜面に沿っていくつかの建物が並び、山頂への代表的なルートもなっており、いくつもの石段を登り標高を稼ぐ。

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風格ある寺社建築と鮮やかな紅葉の取り合わせが絵になるが、紅葉スポットは多くはなく、どこも混雑して、人が入らないよう撮影するのに苦労する。

ところで高尾山には野生のムササビが多く住んでおり、薬王院の境内にも多いそうだが、夜行性なので昼間は姿を見せることはない。日暮れ時から夜に木から木に滑空する姿を見れるらしい。まだお目にかかったことはないが、日暮れ時に時間をかけて狙えば見れるようなので、こんどはそれを狙って訪ねてみたい。

薬王院の奥の院を越えて、20分ほど山道をアップダウンすると、早くも開けた山頂広場に到着した。このルートであれば登山の装備はほぼ不要で、登山装備の無い観光客の方が数が多い印象だ。

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山頂は広々とした場所だが、そこらじゅうでグループ客がシートを広げてお昼を食べて空き場所がなく、ここでの昼食はあきらめ、少し先までいくことにした。展望台から西の方の山並みが良く見えるが、眺めの良い場所には人が集まっており、山頂の標識の記念撮影をするのも長い行列待ちなのには閉口する。

吊り橋コースで下山

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帰りのコースは4号路吊り橋コースを選択した。こちらは人気の高い登山道となっており、林の中を下るので、自然の中の山歩き気分が味わえる。やや薄暗い林の空気は冷んやりして、空気も爽やかだ。しかし、歩く人は多く、しばしば行列での山歩きになることに変わりはない。

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コースのハイライトはみやま橋という吊り橋である。橋の長さはそれほどではないが、開けた眺めと形の良い吊り橋が見どころである。周りは落葉樹が多く、紅葉した木もちらほら残って見える。

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さらにしばらく歩くと賑やかな1号路に合流した。ケーブル山頂駅は相変わらずの人込みで乗車待ちの人の長い列があった。その後、急坂だが舗装された1号路をひたすら歩いて登山口まで下山した。

TAKAO 599 MUSEUM

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これまで、めぼしい観光施設のなかった高尾山口駅周辺だが、最近は新しい施設が増えてきた。駅から徒歩4分のTAKAO 599 MUSEUMもその一つである。2015年に開館した新しい観光施設で、高尾山の豊かな自然を紹介するミュージアムである。和の外観で美術館のようにすっきりと建つ施設の前には、広々とした芝生広場や水遊びできる池などが広がる。

展示品はそれほど多くはないのであっという間に見て回れるが、1日何回かのスケジュールでプロジェクションマッピングの手法を使って四季の動植物の生態を投影するプログラムがあり、これがなかなか楽しかった。

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このミュージアムは日本デザインセンターが企画・総合ディレクションを担当しているらしく、館内のロゴや展示方法も統一感があり、植物標本はアクリル封印した展示をするなど、随所にセンスを感じる工夫がみられる。

館内には眺めの良いおしゃれなカフェも併設されているが、空席待ちの長い行列で利用は断念。この施設は入館料は無料なので、ちょっと休憩に使うこともでき、小さな子供が遊べる場所も考えられている。高尾山の貴重な自然の豊かさや魅力を伝えるコンセプトに共感する。

もうひとつ、高尾山口駅のすぐ横にできた京王高尾山温泉極楽湯も頻繁にメディアでも紹介されて有名であるが、予想通りの大混雑で、芋洗い状態の入浴は嫌なので、今回はスルーした。

終わりに

久しぶりの訪問を終えて、改めて感じるのは、都心から僅か1時間のアクセスで山の自然を手軽に楽しめる場所は、ほかにあまりないということ。新たな電車や施設も出来て、魅力を増してきた。しかし、行楽シーズンの混雑はひどく、せっかく行くならシーズン中は早朝に行くなど、時間をずらすか、人出の少ない時期を選ぶ方が良い。次回は高尾山のシンボルともいえるムササビ君に会いに来よう。

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