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星のカービィ 夢の泉の物語のバグあり100%RTAはなぜ最近まで生まれなかったのか

どうも、shiroと申します。
カービィシリーズのRTAをメインに取り組んでいて、夢の泉ではバグありのRTAで世界記録を多数持っています。
RTA in Japan Summer 2023にて、夢の泉の100%RTAを走らせて頂けることになったので、このような記事を書かせて頂きます。

夢の泉のSRCリーダーボード

まずは、夢の泉のRTAがどのような経緯で成り立ってきたのかを紹介します。
夢の泉にはMajor Glitchと呼ばれる、大きなバグが3つあります。
まずはUFO持ち越しバグ。UFOという最強のコピー能力を他のステージに持ち越すバグです。
このUFOは強すぎるために通常プレイでは他のステージに持ち越せないので、不正に持ち越すバグを使うことでゲームバランスが崩壊します。
これはかなり昔から知られていて、2006年に公開されたTASでは既に使われていました。
ですが、人力でバグを発動させるのはかなり難しく、成功させたとしてもそのランの内容は通常プレイから大きく逸脱してしまうため、面白くないと考えられていたようです。
そのため、ほとんどの人はUFOバグを使わずにRTAを走りました。
この頃はspeedrun.comは存在していなかったので、別のサイトにリーダーボードがあったようですが、ここには主要バグ無し(No Major Glitches)の記録しか掲載していなかったようです。

2009年には初めてUFOバグを使って完走する人が現れました。
この記録はSpeed Demo Archivesに掲載されましたが、当時はこのUFOバグありのカテゴリーがなかったので、走ろうとする人はほとんどいませんでした。

2012年に新たなTASが公開されました。ここで使われていたのがストーンバグでした。2つ目のMajor Glitchです。
当時は2-1からエンディングに飛ぶルートでしたが、2013年には新たな壁抜けが発見されて1-1からエンディングに飛ぶようになりました。

2014年にspeedrun.comが登場し、2016年頃にリーダーボードが整備されたようです。
「Any% No Major Glitches」「100% No Major Glitches」「Any%」の3つがメインカテゴリーとして配置され、「Any% UFO」がMiscellaneousカテゴリーとなっていました(要はマイナーカテゴリー)。
「Any% UFO」は現在の「Any% No Stone Glitch」と同じカテゴリーです。
「Any% UFO」のカテゴリーが初めて生まれたことで、その後他3つのメインカテゴリーほどではありませんが、走る人はそれなりに表れました。

2022年になり、僕がこのRTAに参入し、リーダーボードに様々な動きが出てきました。
ここからしばらく僕のRTAに対しての思想の話(ポエム)になります。
まず、僕は当初からこのリーダーボードの形に疑問を感じていました。100%のバグありのカテゴリーがないことです。
僕が一番好きなカテゴリーがバグありの100%なので、これがないことが一番の疑問でした。
モデレーターの1人が既に走っていましたが、カテゴリーを作る価値がないと判断されていたのかもしれません。
僕は、RTAをやる目的は大きく分けて2つあると思っています。
1つ目は「競うため」、2つ目は「知るため」です。
競うというのは分かりやすいと思います。世界○位を目指して走るというのは全てこれですね。
では知るためとは何でしょうか。それは、ゲームを遊び尽くし、やり込みとしてRTAを始め、限界まで詰めたらこのゲームはどれくらいでクリアできるのかを調べる、みたいな感じです。
つまり、「競技」に軸を置くか、「研究」に軸を置くかということです。
僕はどちらかと言うと研究に軸を置いています。でもやるなら世界記録は出したいので、競技として見ていないという訳でもないです。
人口の少ないRTAを黙々と詰め続けていることが多いのは、こういう思想を持っているからです。人口とか関係なく自分のやりたいRTAをやるだけです。

次に、RTAにおけるバグの扱いについての話です。
僕は、バグを「ゲームの一部」であると考えています。
RTAにおいて、使えるものは使うべきという思想を持っているため、例え邪道とされるバグ技もタイム短縮のために使うべきと考えています。
面白いからとかただ使いたいからとかで使っているわけではありません。
もちろん、そのバグのせいでカテゴリーの定義が怪しくなるようなものはさすがに考えないといけませんが…。
夢の泉では、「Any%」があまりにもあっけなく終わってしまうため、「Any% No Stone Glitch」というカテゴリーが別で作られていますね。
また、バグなしのRTAは、何のバグを制限するか・制限しないかをコミュニティで決めるしかなく、「ある程度人がいないと成り立たない」という問題があります。
決して大きくないコミュニティが決めるルールである以上、どうしても主観が混じることになるため、自分はあまり好きではありません。
ただ、ゲームの制作者がバグを使ってほしくないと考えているなら、それに従うべきだと考えます。
例えば最近のゲームではアップデートでRTAに有用なバグが潰されてしまうこともありますが、アップデートを避けてまでバグを使うのはゲームの制作者の意図に反すると考えています。
大事なのはやはり制作者に敬意を示すことですね。
※これらはあくまで個人の思想であることをご理解ください。

というわけで、話を戻します。
僕が夢の泉のRTAに参入し、人口が多いバグなしのカテゴリーには一切触れず、バグありのカテゴリーをメインに詰めていきます。
「100%」「100% Perfect」というこれまで存在しなかったカテゴリーもspeedrun.comに作られました。ただし、この時はマイナーカテゴリーという扱いでした。
「Any% UFO」については、それなりの人が走っていたため、「Any% No Stone Glitch」に改名されてメインカテゴリーに昇格されました。

2022年7月に、3つ目のMajor Glitchである、Collision Pause Glitch(ポーズバグ)が発見されます。
このバグは、それまでのNo Major Glitchesのルートに大きな変化を与えるものではありませんでしたが、見た目のインパクトが大きいバグであることもあり、コミュニティ投票でMajor Glitchに分類されました。
このバグにより、「Any% No Stone Glitch」「100%」の見どころが増えたため、この2つのカテゴリーの存在意義はより大きくなったと思われます。

そして、今年4月に「100%」はspeedrun.comでメインカテゴリーに昇格しました。
これらのリーダーボードの変更のほとんどは僕がモデレーターに依頼したものですが、思想の違いから口論になったこともありました。
最終的にはコミュニティ投票で解決され、現在のメインカテゴリーは「Any% No Major Glitches」「Any% No Stone Glitch」「Any%」「100% No Major Glitches」「100%」という形に落ち着いています。

UFOバグを使ったカテゴリーは昔から面白くないと考えられていたようですが、僕は面白いと思っています。そうでなければこんなにやってませんし、RTA in Japanにも採用されていません。
詰めれば詰めるほどUFOの細かな動きにもRTA的な知識・戦略が生まれることを知り、とても興味深いです。見ているだけでは分かりにくいのが欠点ですけどね…。
そんな、夢の泉の物語の100%RTAは、8月11日午前6時46分頃から、RTA in Japanで走る予定です。
UFOカービィちゃんの活躍を目に焼き付けて頂ければと思います。よろしくお願いします。

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