日が暮れても子供が公園から帰ろうとしないので
しかたなくオバケの力を借りることにした。
藍色の空に黒くにょきっと生えている時計を見ると七時半を過ぎている。夏至の少し前だったのでこんな時間までまだ遊んでいる。すでに視界は覚束ず、ブランコに揺れる子供の影に残像がついてくる。こんな時間まで遊んでいる親子はほかにいない。
しかしながら五歳児の目にはくっきりはっきり高速のフレームレートな世界がこの時間まで続いてるんだろうか。ブランコをとめると「もっとやる」と言う。すぐに返事をせずに一息置いてから「こんな話を人から聞いたことがあるんだけど」と話し始める。
「公園でひとりで暗くなるまで遊んでいると、オバケが出るんだよ」
「えっなにそれ」
「ほらあのでっかいツツジのとことかもう真っ暗でしょ、雲梯のとこも、あっちの象さん駱駝さんのとこも、パンダのボヨボヨのとこも、よく見てごらんああいう暗がりにちっちゃい男の子が立ってたりするんだって」
「えっ男の子なの」
「誰かわかんないんだって。暗くて顔が見えないから。ちっちゃい子供みたい。でもじっとして喋らないから人間かどうかわからない。ずっとこっち見てるだけなんだって」
「やだやだ、帰ろう」
肩車してあげて家に帰った。帰途ずっとオバケの心配をしてあげていた。
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