乃木坂46 ロケ地を巡る⑧〜目黒区・橋本奈々未 個人PV「October 28」〜
本当は10月28日の夜に書きたかった内容です。仕事が忙しいのは良いことですが、プライベートの時間が削ぎ落とされていくのは良い傾向とはいえない。
2年前の2020年10月28日、まいやん(白石麻衣)の卒業コンサートが東京・国立代々木第一体育館で開催されました。無観客の配信ライブとなり、推定36万人が視聴。視聴者が集中した一部配信サービスで回線トラブルが起こり、配信スタートが遅れるトラブルも。
卒業コンサートは当初、5月5日〜7日の3DAYSで東京ドーム公演が予定されていたそうです。アイドルの単独卒業コンサートで東京ドームを3日間使用した例は過去にありません。実現していれば、間違いなく伝説になっただろうし、最終日のチケットはプラチナ化していたでしょう。それを考えれば、希望者全員が視聴できる配信ライブは結果的に正解だったけれど、東京ドームが彼女のサイリウムカラーで水色に染まる中、送り出してあげたかった。それだけは返す返すも残念です。
10月28日の卒業コンサート。
この日付が、大きな注目を集めることになりました。
個人PV「橋本奈々未 October 28」
15thシングル「今、話したい誰かがいる」TYPE-C収録
15枚目シングル「今、話したい誰かがいる」は、白石麻衣と西野七瀬のダブルセンター曲。発売日は2015年10月28日です。
TYPE-Cに収められているのが、橋本奈々未の個人PV「October 28」です。
「10月28日」という1日に閉じ込められた女の子(ななみん)が、同じ1日を何度もループするという、"押井守"的な世界観のPVです。押井守の世界では、主人公も街の住人もそれとは知らずに「文化祭の前日」という同じ1日を永久に繰り返すという、ミステリアスな展開ですが、こちらは「もううんざり」するぐらい、主人公は同じ1日を記憶だけは残したまま繰り返すことになります。同じ朝、同じ通行人、アルバイト先での店長との同じ会話、同じ客、同じセリフ、そして午後8時の時報と同時に心臓が止まって、気がつくと同じ日の朝8時に戻っている。
10月28日に閉じ込められてしまった。
PVは、最後に彼女がある変化を起こし、「10月28日」からついに抜け出し、新鮮な気持ちで10月29日の朝を迎えるシーンで終わります。
当時はただ、シングルの発売日である10月28日に合わせた設定だったのが、5年後の2020年10月28日、彼女の盟友を送り出す日付に一致したことに、不思議な縁を感じずにはいられません。
しかも当初の予定は5月だったので、世の中がこんなふうになっていなければ、そもそも10月28日の卒業コンサートは存在していなかった。偶然の産物だった。
ななみんが卒業・引退して以降、御三家の一人としてグループに残ったまいやんが、公の場でななみんの名前を出すことはほとんどありませんでした。他のメンバーでさえ、避けてはいないにせよ、なかなか話題にすることはありませんでした。芸能界を引退した以上、表向きの活動は一切無くなってしまったので話題としてあげづらいという事情はあるにせよ、どこか寂しい気がしていました。
だからこそ、奇しくも10月28日という日付が、乃木坂の礎を築いた二人をもう一度5年間という時を経て引き合わせてくれたことに、なぜか涙が出るほど嬉しかったのです。
ななみんが閉じ込められていた「10月28日」の先には、10月29日があり、その日の朝を彼女は新鮮な気持ちで迎えます。
まいやんが卒業した「10月28日」の先には、まいやんの居ない10月29日があり、けれどもその10月29日は、新しい乃木坂につながっていて、彼女の新しい人生につながっている。
PVの撮影地ですが、大きく2箇所あります。
1つ目は、「atelier Pom」
所在地は東京都目黒区中町1-11-10
住宅街のど真ん中にあり、道幅も狭いです。ランドマークも周辺にないので、GoogleMAPの道案内に沿って進むしかありません。
撮影用のスタジオであり、機材車やロケ車が想定されているので、最寄駅はあってないようなものです。あえて言えば、東急東横線「学芸大学」駅です。
駅を東側に出て、駅前の商店街を真っ直ぐ。五叉路に出ますが、ここから道が入り組んでいるので、MAPの案内に従って歩きます。
駅から歩くこと30分弱。住宅街の中ほど、こんなところにあるわけないという場所に「atelier Pom」があります。
訪れたのは真夏の全国ツアー最終日の翌日、9月1日でしたが、この日も中で何か撮影していました。中には入れませんが、屋上部分を見てみると・・・
PVの中で、ななみんが「いつもと同じ通行人」に出会うシーンで使用されています。ちょうど反対側から見ていることになります。
スタジオの屋上は、人工芝が敷かれていて撮影スペースになっています。PVをよく見ると、妙な位置に電線が見えていますね。
上記の「atelier Pom」HPにはスタジオ内の写真が掲載されています。
中を自由に見学、というわけには行きませんでしたが、こんな住宅街のど真ん中で撮影されていたんですね。近くでは、洗濯物や布団を干していたり、買い物帰りのおばちゃんが自転車を漕いでいたり、ごみ収集のカラスよけネットがあったり、子供を送り迎えしていたり、本当に住宅街の中、という雰囲気でした。うろうろすると不審者扱いされそうなので、ぐるっと1周してからすぐ離れました。
もう1箇所は、PV内でななみんがアルバイトをしているお店です。
「ワイン食堂レインカラー」
ただ、残念ながら既に閉店しています。
場所は、上記の「atelier Pom」に行く際に通る、学芸大学駅東側の商店街の一角です。
9月1日に訪問した際は、店の外観だけはかろうじて残っていました。
はしたない行為ですが、窓ガラス越しに中を覗いてみました。
壁や棚、メニューが書かれていた黒板はそのまま残っています。
閉店したお店の前には、店で使用されていた(のであろう)ワイングラスが置かれていました。
「ご自由にお持ちください」とあったので、一ついただきました。ありがとうございました。僕の家にあります。
孤独兄弟
先日(10月31日)、1期生のひなちま(樋口日奈)の卒業セレモニーが東京国際フォーラムホールAで開催されました。同じく卒業を控えている和田まあやと終盤に披露したのが「孤独兄弟」。元はななみんとまいやんのユニット曲です。
飛鳥が「完璧な二人組」と呼んだ、おそらくはもう二度と実現しないユニット。1期生の中でも同い年の年長組として、かつ人気メンバーとして、二人は忙しい日々の中で時にパフォーマンス時のシンメトリーとして、慌ただしい写真撮影の際のコンビとして、よく似た境遇にいました。その二人に与えられた「孤独兄弟」というユニークなユニット曲は、重なるようで重ならない、でもどこかで通じ合っている二人の写し絵だったのかもしれません。
ちゃんと「10月29日」を生きているよ。
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