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乃木坂の新曲がめちゃくちゃ良い曲で驚いた件〜第二の黄金期が始まったのかもしれない〜愛と革命、そして欅坂のこと
8月1日に乃木坂46の32ndシングル「おひとりさま天国」が先行配信された。
秋元康のいつもながらの訳のわからないタイトル。
真夏のミーハー心をくすぐるアップテンポな曲調に、なぎのソロパートの声が可愛すぎる・・・。
ずっとリピートしてる。文字通りリフレインし続けてる。
ああ、自分はやっぱりミーハーだ、こういう曲がたまらなく好きだと実感する。
良い曲を言葉で表現するのは滑稽だ。だって、聴けばわかるんだから。理屈ではない。結局、良い曲は良い曲なんだ。説明不要。これ以上の芸術がこの世に存在するだろうか。
そして、1期生と2期生を失った今の乃木坂46を考えた時、理屈ではない、突き抜けた、あけっぴろげな、解放的な、思わず笑ってしまうような、輝きを感じた。
いつか、作家の太宰治はこう言った。
「人は圧倒的なものを見たら、思わず笑ってしまうものらしい」
富士山を目にした時のような。
大谷翔平のフルスイングを見た時のような。
心のどこかで、焦げ付くほどに憧れていた情景が、今目の前にあるのだ。
ずいぶん、遠回りした気がする。
苦しんだ気がする。
考えなくてもいいことで思い悩んだ気がする。落ち込んで泣いた気がする。
そんな時、どこからか、群衆のざわめきの只中を、一筋の確かな光のように差し込んできたメロディーがある。
昔、美術の教科書で見た古いヨーロッパの油彩画に描かれた情景のように、戸惑いながら行き交い、混乱する群衆の中で、白く発光する女神がいる。はだけた服から白い肌が覗き、エロチックなのに、猛々しく、力強く、確かに光を放ちながらそこにいる。
衝撃。そして、思わず笑ってしまう。
憧れていたのだ、ずっとずっと昔から。
1期生と2期生の背中を見て、3期生は育った。生駒ちゃんの背中を、玲香の背中を、まいやんの背中を、3期生は見ている。
黄金期。
そして1期生の再来のような、4期生が入った。
1期生と2期生が次々卒業していく中、5期生が入った。1期生とも2期生とも3期生とも4期生とも違っていた。
それまでの、本来の乃木坂46を完全に破壊して、イチから作り直すような、凶暴な個性の塊。彼女たちに最初に与えられた期別曲のタイトルが「絶望の一秒前」だったのは、偶然ではない。
壊すのよ。一度、全部ね。構わないわよ。それで「完全に」壊れてしまうなら、それまでよ。でもね、私、分かるのよ。何の根拠も無いのに、分かるのよ。目印でも付いてるみたいに、遠くからでも分かるのよ。はっきりとね。
「完全な」絶望などあり得ない、ってね。
もう一度、始まるのよ。そう、私が始めるの。
愛と革命よ。
僕は、夜のしじまに、ふと考える。
犠牲。サクリファイス。
何かを失って、何かを得る。
考えがうまくまとまらない。
ふと、鐘の音が聞こえる。
なぜかわからないが、欅坂のことを考える。
「誰鐘」は、僕は欅坂の最高傑作だと思っている。
欅坂の活動終了を発表したあの配信ライブの日、ダークな衣装に身を包んだメンバーが、ありったけで披露した「誰鐘」は、間違いなく最高傑作だった。あの瞬間にしか実現できない、二度と再現できない奇跡のパフォーマンス。
あの瞬間、彼女たちは、全員が、てちを超えていた。そして、強く強く、てちを抱きしめていた。
乗り越えて、同時に受け入れて、欅坂の名前を封印するのと引き換えに、彼女たちは欅坂を超えていた。
犠牲の上に成り立った、犠牲の上にしか成り立ち得なかった、不退転の決意が生んだ奇跡。
なんて悲しくて、なんて素晴らしくて、なんて切ないのだろう。
だから、天ちゃんは、泣いていたのか。肩を震わせて。分かっていたのだ。もう二度と戻ってこない時間に、今自分はいるんだと。そして慌ただしくここを去らなければいけないのだと。時間は待ってくれないのだ。そして、生きるとは多分そういうことなのだ。
鐘が鳴る。こんなに遠く離れているのに、耳を塞いでいても、突き抜けて聞こえてくる。
耳をすませ。息を整えろ。前を向け。深呼吸をして、たくさん水を飲め。
「完全な」絶望などあり得ない。
2023年8月3日
*サムネイル画面:乃木坂46 OFFICIAL ホームページより