見出し画像

【D&D2024】元素邪霊を継ぐ者/Scions of Elemental Evil

この記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。©Wizards of the Coast LLC.


この記事は、D&D Beyondの無料アドベンチャー“Scions of Elemental Evil”を非公式に日本語訳したものです。
元コンテンツの無料公開が終了した場合などには、本記事の公開を停止する可能性があります。

まとめ(ネタバレなし)

PCレベル:4レベル
PC人数:6人
所要時間:3~4時間くらい
使用ルール:『Player's Handbook 2024』または「D&D 2024 Free Rules」

なお、本記事で翻訳したのは、シナリオおよびクリーチャー・データのみです。
元コンテンツに含まれるキャラクター・シートなどは割愛しています。魔法のアイテムのみですが、こちらの記事で訳しているので、よかったらお使いください(気が向いたら全部訳す…かも!)。
Free Ruleの内容については有志で翻訳されている方もいらっしゃいますので、よろしければ検索してみてください!

本記事のセッション、配信などへの使用はご自由にどうぞ(※WotC社のコンテンツ・ポリシーについては各自で確認してください)。報告、クレジットをする必要はありませんが、教えてもらえると私のやる気が出るかもしれません。


以下、アドベンチャーのネタバレを含みます。
プレイヤーとして参加予定の方はご遠慮ください。



















元素邪霊を継ぐ者

元素邪霊寺院の下には、墓廟と儀式部屋からなる迷宮が広がっている。何年もの間、この地下迷宮は廃墟と化していた。そして今、見捨てられた魂が舞い戻り、世界を滅ぼすために悪の軍勢を結集している。

「元素邪霊を継ぐ者/Scions of Elemental Evil」は、ダンジョンズ&ドラゴンズ50周年を祝う1年間の記念行事の一環だ。このアドベンチャーでは2024版『プレイヤーズ・ハンドブック』のルールを使用するが、このアドベンチャーは無料ルールでも遊ぶことができる。

グレイホークを舞台とするこのアドベンチャーは、4レベル・キャラクター4〜6人用に設計されている。このアドベンチャーには、1980年代に人気を博したアニメシリーズ「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の主人公6人(ボビー、ダイアナ、エリック、ハンク、プレスト、シェイラ)のキャラクターシートが付属している。 7人目のキャラクターシートでは、最近ダンジョンズ&ドラゴンズの多元宇宙に迷い込んだ別の冒険者グループのクレリック、ニコを紹介する。 各プレイヤーはこれらのキャラクターから1人を選ぶか、自分のキャラクターを使用することができる。

背景

はるか昔、元素を崇めるカルト教団が“元素邪霊エレメンタル・イーヴル寺院”の隠し部屋を使い、異次元から召喚したものを味方にしてフラネス地方を恐怖に陥れた。その部屋は“始原の集束地”プライモーディアル・ネクサスと呼ばれ、カルト教団が英雄たちに倒された際、瓦礫の下に埋もれた。

最近、ウルセドラ・ヴォックスという名の狂信者が“始原の集束地”を発掘した。ヴォックスは準元素パラエレメント(灰、氷、溶岩、粘液)を崇めており、混沌と破壊を司る存在エルダー・エレメンタル・アイと交信した。“始原の集束地”の魔法に関する知識を授かる代わり、ヴォックスはその魔法の力を使ってできる限り多く信仰なき者どもの命を奪う、という約束した。
寺院周辺でのヴォックスの動きに、3つの新興カルト教団が目をつけた。それぞれ灰、氷、粘液といったパラエレメンタルの神格を信奉する教団だ。エルダー・アイの関与を感じた各教団は、ヴォックスを援助するために手を組んだ。3つの教団は手を組んで“始原同盟”となり、ヴォックスが女王を名乗って同盟を率いている。キャラクターたちがヴォックスとカルト教団を止めない限り、ヴォックスはエレメンタルの軍勢を召喚し、世界を大混乱に陥れるだろう。

オリジナル版について
1984年に初版が発行された『The Temple of Elemental Evil』は、全128ページで複数章立てのモジュールだ。ゲイリー・ガイギャックスとフランク・メンツァーが執筆したこのモジュールには、ホムレット村、悪名高き貧民街ヌルブ、そして長い時間をかけて邪悪な力が集まった広大な寺院についての記述が含まれていた。『The Temple of Elemental Evil』は、ダンジョンズ&ドラゴンズ30周年を記念した2004年の「Dungeon」誌にて、“史上最高のアドベンチャー”第4位にランクインした。

冒険の導入

このアドベンチャーの開始時、キャラクターたちはセレーネ国を治めるヨーランド女王の御前に召喚される。女王の求めに応じるだけでは十分な動機にならないと思うならば、以下の導入のどちらかを使ってさらに一行を説得するとよいだろう:
王家の諜報員: 邪悪なものが沼地にはびこっているという噂により、隣国のファーヨンディ王国に不安が広がっている。キャラクターたちは国王ベルヴァー4世の秘密諜報員であり、情報収集のために派遣された。
傭兵:かつてこの地に悪が興った際には、重要な交易路が閉ざされた。有力な商人団体は冒険者たちを雇い、新たな脅威が商売の邪魔になるかもしれない、と調査を依頼した。

アドベンチャーの世界設定

このアドベンチャーの舞台はフラネス(グレイホークというキャンペーン設定にある地域の1つ)である。君が望むなら、このアドベンチャーを別の世界に設定することもできる。以下のような代案が考えられる:
ドラゴンランス:廃れた寺院は、〔アバナシニア地方の〕ソレースとヘイブン間の山中にある。“始原の集束地”は、歴史が記録され始める遥か以前にレオルクスによって封じ込められたカオス神の残骸である。ヨーランド女王の役目は、“闇の森”に住むユニコーンの賢者“森の長”が代わる。
エベロン:寺院はアンデールにあるワイアー町周辺の原野に位置する。ヨーランド女王に代わり、ラシャヴェンという“門を護る者”のオークがキャラクターたちに援助を求める。ドリーミング・ダークがエルダー・エレメンタル・アイの役目を代わる。
忘れられた領域フォーゴトン・レルムソード・コーストのデサリン谷が、元素の諸力に関わる邪悪な存在に悩まされている。寺院が位置するのはサンバー丘陵だ。ヨーランド女王の役目は、ウォーターディープの公開執政官レイラル・シルヴァーハンドが代わる。

概要

このアドベンチャーは3~4時間のプレイになるように設計されている。アドベンチャーは以下の2部に分かれている:
元素邪霊の復活:ヨーランド女王がキャラクターたちを元素邪霊寺院に送り込む。キャラクターたちはこの寺院で、副元素を崇めるカルト教団の指導者たちを排除しなければならない。教団の指導者3人と対決した後、キャラクターたちは寺院の深部へと続くポータルを見つけることになる。
準元素女王:キャラクターたちは、“準元素女王”を名乗るウルセドラ・ヴォックスがエレメンタルの軍勢を目覚めさせるのを阻止しなければならない。

元素邪霊の復活

このアドベンチャーは、ヨーランド女王が治める大国セレーネで始まる。このエルフの女王は熟練の魔術師で、軍隊を束ねて侵略者に立ち向かってきた。女王が“緊急の要件”とだけ伝えてキャラクターたちを宮殿に召喚したのは、とある機密問題の解決を手伝ってもらうためだ。

画:Katerina Ladon

エルフの女王の宮殿

以下の文章を読み上げるか適宜読み換えて、アドベンチャーを開始すること:

君たちは冒険者の一団として名を馳せ、その勇敢な活躍ぶりはセレーネというエルフの領域を治めるヨーランド女王まで伝わったらしい。その女王が宮殿での面会を求めている。緊急で君たちの助けが必要なのだという。
宮殿に到着した君たちは、数名の騎士に案内され、荘厳な中庭や塵一つない正門を通り、女王の私室へと通される。その部屋の壮麗な大理石の玉座に腰掛けて威風を放つ人物こそ、ヨーランド女王だ。身にまとう流麗なガウンには絹糸で蝶が刺繍され、興味津々といった鋭い眼光が君たちをじっと見つめている。
「英雄たちよ、前へ」と女王が言う。「困難な時代ですが、あなた方の活躍がこの耳に届いて明るくなりました。召喚に応じてくれたこと、嬉しく思います。よろしければ名前を教えてください。そして、みなさんのすばらしい偉業を聞かせてはもらえませんか」

テーブルに座っている順で、各プレイヤーに自分のキャラクターを紹介してもらうこと。

女王の説明
自己紹介が終わると、ヨーランド女王はうなずいて感謝を示す。女王が続ける:

「これからお伝えする情報の扱いには、十分気をつけてくださいね」と女王が言う。「私の密偵たちが、“元素邪霊寺院”を拠点とする複数の新興カルト教団の証拠を突き止めました。これらの教団は、この地域一帯で罪のない人々の大虐殺を計画しています」
「密偵たちは寺院近くのヌルブという村に潜入し、教団の勧誘係から台帳を盗み出しました。この台帳には、教団の名称と指導者、そして陰謀の存在が記されています。これがその台帳から破いたページです。ご覧いただければ今言ったことがわかるかと思います」

ヨーランド女王が君たちに1枚の羊皮紙を手渡す。

ハンドアウトの配布:「カルト教団の勧誘係のメモ」をプレイヤーに配ること。ヨーランド女王の話を続ける前に、プレイヤーに配布資料を読む時間を与えよう:

ハンドアウト:カルト教団の勧誘役のメモ

ハンドアウト内の文章
降り積もる灰の会:シンダーハイド
呼吸を奪う粘液の子ら:ガーセズ・ドルール
砕け散る氷の子ら:カーラ・ブレイン
“準元素女王”ウルセドラ・ヴォックスがもたらす厄災は近い。

「“降り積もる灰の会”については我々も把握しています。この教団は長いこと、セレーネに混乱の種を蒔こうと企んできました。先日も、潜入していた教団員が私の毒殺を試みて失敗したところです。他の教団も同程度に危険な存在だということは間違いないでしょう」
「密偵たちによれば、このページに書かれた厄災をもたらすべく、こうしている間にも各教団の指導者たちが動いています。詳しいことはわかっていませんが、カルト教団は寺院の地下室で何ものかを召喚して味方につけ、破壊を引き起こすつもりのようです」
「指導者たちを見つけて排除し、教団の陰謀を阻止してください。ただし、寺院の中は教団員たちの巣窟です。全員と直接対決することは避け、巧く立ち回るのが理想かと思います。密偵が、副元素に忠誠を誓おうという新入りがいる、と噂を流しました。それを利用し、新人を装って寺院に潜入してほしいと思っています」
「寺院の近くまで、変装したセレーネの諜報員が荷車でお連れします。それ以降は、任務が終わるまで教団員になりすますとよいでしょう。
「こちらがみなさまの変装です。着替えていただいた後、質問があれば私が聞きましょう」

女王が指を鳴らすと、そばの幕の裏から、緑と金の宮廷服を着たエルフの男が現れる。男はキャラクター人数分の黒いローブと銀の仮面を抱えている。

女王への質問
キャラクターたちの質問に対して、ヨーランド女王は以下のように答える:
報酬は何?:「この悪に終止符を打てたなら、私の王冠の宝石から青いサファイアを、1人1つ進ぜよう」(宝石は1つ1,000gp相当。)
命を狙われた件について詳しく聞きたい:「先日、侍女のシアンドが私の葡萄酒に毒を盛ろうとして捕まりました。シアンドは逮捕を免れるため命を絶ちましたが、宿舎で “落灰騎士団”との関係を示す巻物が見つかりました。そこからの調査によって詳細が判明したのです」
“降り積もる灰”教団はなぜセレーネ滅亡を望むのか?:「元素邪霊を崇拝する者たちは、秩序を消し去り、混沌で埋め尽くすことを望んでいます。我が領域を憎まれているのは、善なるものがすべて憎まれているからです」
なぜ私たちを選んだのか?:「この国の騎士たちは悪と直接対峙する訓練を受けているものの、この任務には慎重さが求められます。寺院は私の領域外であり、私の密偵では敵を排除できるだけの戦闘能力を持ち合わせていません。カルト教団を止めるには真の英雄が、あなたたちが必要なんです」
この寺院について知っていることは?:「かつて巨悪が潜んでいた場所です。大昔に崩壊したはずでした」 (プレイヤーたちが興味を持つなら、ヨーランド女王はこのアドベンチャー内で後述する「元素邪霊寺院」の項に記載されているこの寺院の歴史について詳しく説明する)。
寺院はどこにある?:「寺院までは宮殿から馬車で3日かかる。4日目の朝から任務に取り掛かるとよいでしょう」
寺院まで誰が連れて行ってくれるのか?:「諜報員のフィロニアが寺院の外れまで牛車でお送りします。細かいことは道中で説明してくれるでしょう」

女王の恵み
登場人物が質問をすべて終えたら、次の文章を読むか適宜読み換えること:

ヨーランド女王が指を鳴らす。廷臣が今一度幕の後ろに下がり、クッションの上に美しい緑色のブーツを乗せて現れる。
「この魔法のブーツをお持ちください。この度の任務で役に立つはずです。慎重に行動したい時にこれを使えば、教団員たちに気づかれずにすむでしょう。」

このブーツはブーツ・オヴ・エルヴンカインド(「付録A」を参照)である。女王が機能を説明する。先へ進む前に、キャラクターたちは誰がこのブーツを履くかを決めること。

宮殿からの出発

ヨーランド女王は、旅に出る前にどんな小さな準備でもしておくように、とキャラクターたちに勧める。

キャラクターたちの出発準備が整うと、飾り気のない革服と灰色の外套に身を包んだ女性が近づいてくる。呉服商人に変装したエルフの騎士、フィロニアである。フィロニアの装備と武器を隠した牛車を停めている宮殿の中庭にまで、フィロニアがキャラクターたちを案内する。

寺院への道

旅の最初の3日間、フィロニアは自分が礼儀正しく規律を重んじる兵士であることを明らかにする。女王とセレーネに対してフィロニアが抱く愛情は明白である。
フィロニアに与えられた命令は、キャラクターたちを寺院まで送り届け、キャラクターたちが任務を就いている間近くで野営し、任務終了後、キャラクターたちを連れてヨーランド女王の宮殿に戻ることだ。キャラクターたちが1週間以内に戻らなければ、フィロニアはセレーネに戻らねばならない。
フィロニアはカルト教団について説明を受けている。 キャラクターたちが尋ねれば、彼女は次の項にある情報を明かす。

始原同盟

ウルセドラ・ヴォックスは3つのカルト教団からなる始原同盟プライモーディアル・アライアンスを率いており、各教団がそれぞれの元素邪霊の神格に忠誠を誓っている。それぞれの神格は、灰、氷、粘体といった準元素の諸力を代表している。各教団は互いに軽蔑し合っているが、ヴォックスの下で協力し、世界に痛みと苦悩をもたらすことを誓っている。ヴォックスは現在、準元素の諸力すべてを崇めているが、元々崇めていたのは“溶岩の貴公子”クリンビアの始原の力のみだった。

“砕け散る氷の子ら”、“呼吸を奪う粘体の子ら”、“降り積もる灰の会”が寺院の1階を拠点としている。“準元素の女王”を名乗るウルセドラ・ヴォックスは、寺院の奥深くにある“始原の交わる場所”を拠点としている。キャラクターたちがヴォックスと対面するのは、アドベンチャー後半の「準元素の女王」の項である。

砕け散る氷の子ら
この粗暴な海賊船員たちは、エレメンタル・エヴィルの崇拝に陥る前はクアッグ湖の冷たい水上を荒らしまわっていた。船員を率いるカーラ・ブレイン船長は、“氷の貴公子”という腕に触手を持つ巨大なイエティ、クリオナックスを崇拝する海賊たちを率いている。
“砕け散る氷の子ら”の体は冷気で青ざめている。奇妙で狂信的な教団員たちは、ブレインが行動を命じるまで彫像の如く微動だにしない。ブレインはエリアT10にいる(マップ1.1を参照)。

呼吸を奪う粘液の子ら
自由都市グレイホークのストリート・ギャングたちがこのカルト教団を結成した。教団員たちの体はうっすら光る粘ついた水疱に覆われている。邪神ブウィンブ2世からの贈り物である。
“粘液王女”として知られるブウィンブ2世は、彼らの永遠の隷属と引き換えにギャングたちの命を救った。呼吸を奪う粘液の子らを率いるガーテズ・ドルール隊長は、エリアT6(マップ1.1参照)にいる。

降り積もる灰の会
この教団はセレーネのヨーランド女王を暗殺し、国の支配を奪おうと考えている。寺院を拠点とするメンバーに加え、教団の工作員がヨランデ女王の忠実な使用人を装っている。
降り積もる灰の会を率いる“サキュバス”シンダーハイドは、“灰の貴公子”として知られるピット・フィーンドのガズラに仕えている。シンダーハイドはエリアT8(マップ1.1を参照)にいる。

元素邪霊寺院

13年前、無法者たちの同盟が、長い間土に埋もれていた元素邪霊を祀る寺院を発掘した。それから間もなくして、邪悪なものが辺り一帯の土地を蝕んだ。穀物が不作になり、疫病が蔓延り、交易が途絶え、邪悪なクリーチャーが寺院に集まって破壊を企てた。
善の諸勢力が寺院に巣食う邪悪を何度も退けた。5年のあいだ寺院は廃墟と化していたが、ウルセドラ・ヴォックスが再び邪悪なものどもを目覚めさせた。

寺院への到着

フィロニアは、寺院から10分ほど離れた廃道で荷車を止める。キャラクターたちが任務に就いている間、フィロニアはここで野営をしている予定だ。
登場キャラクターたちが寺院に近づいたら、以下の文章を読み上げるか、適宜読み換えること:

元素邪霊寺院が堂々と不気味にそびえ立ち、道が途切れている。高さ30フィートの寺院の壁では、悪魔を模した彫刻が睨みつけている。切妻屋根の頂上は高さ50フィートになる。
屋根や崩れた壁の支えにはいくつも大きな穴が開いていて、寺院は廃墟と化している。南側には、建物内部に通じる3つの暗いアーチ道が開けている。

マップ1.1は、寺院の間取りを描いたものだ。キャラクターたちはマップ南側の小道から入ってくる。

カルト教団への潜入

キャラクターたちが教団員を装わなくともこのアドベンチャーを完了することはできる。しかしキャラクターたちは、変装することによって一度に多数のカルト教団員と戦闘になるのを避けようとするかもしれない。
カルト教団員を装うキャラクターは、常に銀の仮面と黒いローブを着用していなければならず、さもなくば教団員たちが襲いかかる。カルト教団員を装っているキャラクターは、カルト教団員に不審に思われるたび、難易度10の【魅力】〈ペテン〉判定を行なわねばならない。キャラクターが1人でもこの判定に失敗した場合、そのエリアにいる教団員たちがキャラクターたち全員を偽者だと見なして襲いかかる。

キャラクターたちを新入りだと信じたカルト教団員は、以下の情報を自由に共有する:

  • 始原同盟は、「始原同盟」の項で説明しているように、エレメンタルを崇めるカルト教団の連合体である。同盟を率いているのはウルセドラ・ヴォックスという女性で、“溶岩の貴公子”クリンビアを信じるヒューマンである。ヴォックスは最近、元素を操る恐ろしい能力を身につけたが、教団員たちはそれ以上詳しいことを知らない。

  • 教団員たちは“始原の収束地”と呼ばれる部屋の発掘を手伝った。ヴォックスは集束地でエレメンタルのしもべの軍勢を呼び出すために作業している(「準元素女王」を参照)。

  • クリーチャーが収束地に入るには、主祭壇(マップ1.1のエリアT9)の南側にある鍵穴に元素鍵を差さなければならない。この鍵を持っているのは各カルト教団の指導者のみである。

  • ヴォックスは冷酷な指導者だ。先週も、自分の計画がうまくいかないのではないかと不遜な提言をしたワースという教団員を処刑した。(マップ1.1のエリアT1にある死体である)。

  • ヴォックスの作業が完了してしまうと、教団員がエレメンタルの軍勢を率いて、フラネス全域を荒らし回るだろう。

寺院の特徴

この寺院には以下のような特徴がある:

天井:天井は高さ9m(30フィート)。マップ上に瓦礫が描かれている場所は、屋根が崩れて空が見えている。
カルトの教団員:寺院内および周辺にいる教団員はみな混沌にして悪であり、死ぬまで戦う。教団員たちは、キャラクターが敵だと気づき次第襲いかかってくる。寺院には、大きくて背の高い瓦礫の山があるため、あるエリアでの戦闘音がしても他のエリアにいるカルト教団員たちが警戒することはない。
扉:屋内の扉は木製で、鍵はかかってない。
照明:日中は、外から差し込む“明るい”光で屋内が照らされている。
夜間は、壁の内側に並んだ松明が“薄暗い”光を放っている。
瓦礫:マップに示されている瓦礫の範囲は移動困難な地形であり、遮蔽になる。
石造物:寺院は古くて頑丈な石でできている。
窓:寺院の窓は矢狭間のような形状で、鉄格子がかかっている。
窓を“無理矢理通り抜ける”ことができるのは、超小型サイズのクリーチャーのみである。それぞれの窓枠は屋外の地面から15フィートの高さにある。

寺院の各エリア

以下のエリアがマップ1.1に紐づいている。

マップ1.1:元素邪霊寺院

別バージョン:プレイヤー用

T1:寺院の敷地

伸び放題の茨の茂みや雑草が、寺院の敷地を埋め尽くしている。西側からガチャガチャいう足音と気味の悪い笑い声が聞こえ、カルト教団員たちが近づいてくるのがわかる。

このエリアは枝葉が生い茂っており、移動困難な地形である。

接近してくる集団は、寺院の敷地を巡回しているヒューマンのカルトの狂信者4人である。この教団員たちは20分ごとに寺院の周囲を一周する。教団員たちは3分後に前庭の入り口(エリアT2)に到着し、5分後に再び見えなくなる。キャラクターたちは、急いで前庭に駆け込むか、教団員たちがいなくなるまで待っていれば、教団員たちに気づかれずに寺院に忍び込むことができる。
あるいは、分厚い下生えを利用して教団員を奇襲し、教団員たちにイニシアチブ・ロールで不利を与えることもできる。

捨てられた死体:捜索アクションとして、キャラクターは寺院の南に面した壁を調べ、難易度12の【判断力】〈知覚〉判定を行なうことができる。
判定に成功したキャラクターは、エリアT3の西の壁とエリアT5の南東の壁の間の瓦礫の裏に黒い布があることに気づく。
キャラクターが調べると、その布が死体を巻いていることがわかる。死体は若いヒューマンの男性のものであり、茶色の短髪で、首に深い切り傷を負っている。この死体は、先週ヴォックスが不敬で処刑した教団員、ワースのものである。
ワースの死体に価値のあるものはない。キャラクターは、探索アクションとしてこの死体を調べ、難易度14の【判断力】〈医術〉判定を行なうことができる。判定に成功したキャラクターは、この青年が別の場所で失血死してから、死体がここに運ばれたのだと判断できる。(ワースが殺されたのはエリアT4の祭壇である。)

T2:前庭

南、東、西の入り口付近には、壊れたドアが転がっている。中に入ると、淫靡で身の毛もよだつ場面が壁に彫刻されている。
北側には、前庭からつながる吹き抜けの本堂が広がっている。本堂につながる入り口に立つ巨大な二本足の彫像は、恐ろしい顔で悪魔のような笑みを浮かべている。

この彫像は寺院の本堂(エリアT3)を護っている。ストーン・ゴーレムのゲーム・データを用いるが、共通語を話し、理解する。キャラクターたちが距離を保っていれば、この守護者は動かない。この守護者の動きや行動を〔進んで〕観察していないクリーチャーは、難易度15の【知力】知力〈捜査〉判定に成功しない限り、この守護者が自律行動すると見破ることはできない。

守護者の挑戦:キャラクターがこの彫像から1.5m(5フィート)以内に近づくと、守護者は動き出してこう言う:

「忘却は近い!意思を示せ、さもなくば去れ、チンケな虫ケラどもめ」

守護者の挑戦を聞いたキャラクターはみな、難易度10の【知力】〈魔法学〉判定を行なうことができる(アクションは不要)。判定に成功したキャラクターは、このクリーチャーが非常に強力であり、戦闘になればキャラクターたちが殺される可能性が高いと気づく。守護者は、もし戦闘になっても、このエリアから離れたキャラクターを追いかけることはない。
キャラクターたちが元素邪霊への忠誠、カルト教団へ入る意思、または同様の意向を示したならば、守護者は道を開けてキャラクターたちを通す。キャラクターたちが何も答えなければ守護者は何もしないが、キャラクターがカルト教団を非難したり、元素邪霊への好意を示さずに守護者をすり抜けてエリアT3に進もうとしたならば、守護者が襲いかかる。寺院内の他の近隣エリアでキャラクターたちがどんなアクションを起こしても、守護者が攻撃を誘発することはない。

このエリアで戦闘が起こると、エリアT3にいるインキュバスのペルーゼが気づく。ペルーゼは3ラウンド目のイニシアチブ0の時点で(同値の場合は常に後)、戦闘に参加する。

T3:本堂

この寺院の本堂は廃墟と化している。床には、屋根から落ちた石材の山が散乱している。前方から、くぐもった声と低い声の祈りが聞こえてくる。
銀の仮面をつけたカルト教団員が中央の床で待ち構えている。カルト信者の黒いローブの背中から、コウモリのような革質の翼が広がっている。

この教団員はペルーゼ、フォーリング・アッシュ教団に忠誠を誓うインキュバスである。強力なフィーンドであるペルーゼは、寺院への新入りの勧誘や、教団間の揉め事の解決など、重要な仕事を任されている。

ペルーゼとの会話: キャラクターたちが教団加入者の仮面とローブを着用して近づいたなら、ペルーゼが話しかける。

「“始原同盟”へようこそ。 我らが“準元素女王”ウルセドラ・ヴォックス様は、来る災厄にてあなた方が奉仕することをお望みです。 まず、あなた方をいずれかの教団に割り当てなければなりません。 あなた方はどの元素に忠誠を誓いますか? 灰、氷、粘液からお選びください」

キャラクターが2つ以上質問をすると、ペルーゼは疑念を抱く。カルト教団の同盟について説明されているはずだからだ。ペルーゼが疑念を抱いたなら、キャラクターたちは忠実であると説得し、難易度10の【魅力】〈ペテン〉判定に成功しなければならない。説得できなかった場合、ペルーゼはキャラクターたちに襲いかかる。

キャラクターたちが元素への忠誠を誓うと、ペルーゼは歓迎の意を表す。そして、以下のうち適切な指示を与える。
灰:「右に進んで東棟に行きなさい。“降り積もる灰の会”が待っています」ペルーゼはエリアT7を指さす。
粘液:「左に進んで西棟に行きなさい。“呼吸を奪う粘液の子ら”が待っています。」ペルーゼはエリアT5を指さす。
氷:「このまま進んで元素の玉座に行き、“砕け散る氷の子ら”に入りなさい」ペルーゼは奥のエリアT10を指さす。

キャラクターたちがウルセドラ・ヴォックスに会いたいと頼んだ場合、準元素女王は寺院の奥深くで大災害を引き起こす儀式の準備していてお忙しいのだ、とペルーゼは答える。ペルーゼは、ヴォックスを邪魔してはならないこと、従わなければ殺すこと、をキャラクターたちに伝える。

狂信者たち:ペルーゼの指示に従うならば、寺院の教団員たちはキャラクターたちを味方として歓迎する(上記の「教団への潜入」を参照)。

T4: 中央祭壇

この祭壇は、長さ2.1m(7フィート)の楕円形で、ピンク色の石でできている。祭壇の上部にあるくぼみは赤黒い染みができている。

カルト教団の指導者たちは、背信的な教団員をここで処刑する。捜索アクションとして、キャラクターは祭壇の上部を調べて難易度10の【知力】〈自然〉判定を行なうことができる。判定に成功したキャラクターは染みが血であることがわかる。この血は、先週ヴォックスが処刑した教団員、ワースのものだ。(ワースの死体はエリアT1にある。)

T5:西棟

薄汚れた傷だらけのカルト教団員たちが、この部屋の床を汚す濁った水溜まりの近くにたむろしている。幌馬車2台の周りには、いくつものたるや木箱が置かれている。 南西の壁に扉があり、その先から途切れ途切れの小さなバイオリンの音色が聞こえてくる。

窒息する粘体の子供たちは、このキャンプでくつろいでいる。ヒューマンの狂戦士4人である。
箱や荷車: たるや木箱には食料や採掘用品が収められている。 木箱やたるの後ろに隠れているクリーチャーは攻撃に対して1/2遮蔽を得る。 幌馬車の後ろに隠れているクリーチャーは完全遮蔽を得る。
水溜まり: このエリアでは寺院の床が崩壊して深さ3m(10フィート)の穴ができ、濁った雨水が溜まっている。

T6:宵の聖具室

キャラクターたちがこのエリアの扉を開けたら、以下を読み上げるか、適宜読み換えること:

1人の男が扉に背を向けて立ち、バイオリンで悲しげな曲を奏でている。男の肩からは、深紅のビロードのマントがたなびいている。男の隣で2体のグレイ・ウーズが這い回り、まるで音楽に合わせて踊っているかのようだ。この部屋の南東の角には階段があるが、瓦礫でふさがれていて通れない。

聖具室では、ガーセズ・ドルール(ヒューマンの無法者のかしら)が愛の唄を書いている。ドルールは窒息粘体の子供たちの指導者である。ドルールはグレイ・ウーズ(混沌にして悪)2体を護衛としてここに置いている。カルト教団の影響により、このウーズはドルールを味方と見なしている。

影響アクションとして、キャラクターはドルールの音楽に興味を示し、難易度12の【魅力】〈ペテン〉または〈説得〉判定を行うことができる。判定に成功すると、ドルールは演奏を止め、ウーズたちに指示して下がらせ、キャラクターたちと話す。キャラクターたちが敵であるとドルールが疑念を抱いた場合、ドルールと粘体は襲いかかる。

ドルールとの戦闘:ドルールは最初のターンで、ビード・オヴ・フォース(付録Aを参照)を最も多くのキャラクターに影響を与える範囲に投げる。
ドルールの音楽:ドルールは“降り積もる灰の会”の指導者シンダーハイドに夢中で、シンダーハイドに送る愛の唄を書いている。 ドルールは人を操るシンダーハイドの悪魔的な力に惹かれているが、シンダーハイドはギャングの指導者などに全く興味を持っていない。 ドルールはまだ歌の最後の一節に満足していない。

ガーセズ・ドルール
ガーセズ・ドルールは、詩人兼音楽家であると自負しているが、彼の唯一の功績はギャングのリーダーであることだけである。かつてドルールは自分のギャングを“煌めく刃”と呼んでいた。刃のメンバーは自由都市グレイホークを拠点としていたが、あるとき、侮辱された貴族が刃の構成員たちを井戸に沈めようとした。ドルールに暗闇が訪れた時、彼はブウィンブ2世の呼び声を聞いた。ブウィンブ2世は、信仰と引き換えにドルールとその仲間たちの命を守ってやると約束した。ドルールは同意した。ギャングたちは井戸から這い出し、その貴族をなぶり殺した。約束通り、“煌めく刃”は“呼吸を奪う粘液の子ら”となった。ギャングたちは元素邪霊の寺院へと旅立ち、永遠に“粘液姫”に仕えることとなった。

T7:東棟

この野営地では、ローブを見にまとったカルト教団員たちが、敷石の上に張ったテントの周りでくつろいでいる。野営地内にまばらに置かれた火鉢の中で炭が燃え、灰が舞って空気を汚している。

エルフのカルトの教団員6人とエルフのカルトの狂信者4人がここで野営しており、全員“降り積もる灰の会”の者である。10人は全員が灰クリーチャーである(「灰クリーチャー」の補足を参照)。

灰クリーチャー
“降り積もる灰の会”に関わる多くの人型生物は、元素邪霊の強大なフィーンドである“灰の貴公子”ガズラに祝福されている。これらの人型生物に使用するデータ・ブロックは、指定されたものである。灰クリーチャーが死亡すると、体が灰の雲となり、5分間持続した後、消散する。そのクリーチャーが着用または運搬していた装備は灰にならない。灰の雲は視界を遮らない。

火鉢:クリーチャーは、アクションとして火鉢を蹴り倒し、燃え盛る灰を周囲に撒き散らすことができる。その火鉢を中心とした半径4.5m(15フィート)の円錐形の範囲内にいるクリーチャーはみな、難易度12の【敏捷力】セーヴィング・スローを行なわねばならない。セーヴに失敗したクリーチャーは7(2d6)[火]ダメージを受け、セーヴに成功したクリーチャーはその半分のダメージを受ける。

T8:明けの聖具室

キャラクターたちがこのエリアの扉を開けたなら、以下を読み上げるか、言い換えること。

赤毛のエルフの女が扉に背を向けて立っている。女が囁く「終わらせるぞ。エルフの女王もあと半月の命だ」

シンダーハイド(サキュバス、“降り積もる灰の会”の指導者)は、センディング・ストーンの片割れを使い、ヨーランド女王の宮廷にいる工作員と連絡を取っていたところである。シンダーハイドはセレーネでの偵察任務から戻ったばかりで、エルフ形態のままである。
シンダーハイドの観察:シンダーハイドは〔女王〕殺害計画に気を取られており、キャラクターたちがこのエリアの扉を開けても気づかない。シンダーハイドに気づかれないようにこのエリアを立ち去ろうとするならば、そのキャラクターは難易度12の【敏捷力】〈隠密〉判定を行なわねばならない。判定に成功したなら、静かに立ち去ることができる。失敗すると、シンダーハイドがそのキャラクターに気付き、「出て行け!扉を閉めろ!」と叫ぶ。
シンダーハイドとの戦闘:キャラクターたちがシンダーハイドと戦うならば、シンダーハイドは戦闘開始時にエルフの変装を解き(アクションは不要)、翼を広げて高笑いを上げてから、攻撃を仕掛ける。
女王への警告:シンダーハイドの言葉から、ヨーランド女王の命が再び狙われていることが分かる。 キャラクターたちが宮殿に帰還後に女王に警告したならば、ヨーランド女王は1人1つずつ王冠の宝石から500GP相当の宝石を追加で与える(このアドベンチャー末尾の「報酬」の項を参照)。

シンダーハイド
シンダーハイドという名で知られるサキュバスは、ヨーランド女王とその宮廷を憎んでいる。ある騎士に真の姿を暴かれ、バーテンダーに扮していた“巻き付く蔦”亭という酒場から追い出されたからである。シンダーハイドは、疑いも持たない常連客たちから生命力を吸い取ることをやめ、女王の命を狙うことに執着するようになった。契約相手である神ガズラが“降り積もる灰の会”を創設するよう命じたことで、サキュバスはさらに力を注ぐようになった。カルト教団こそが権力への道であると確信したシンダーハイドは、女王ヨーランド女王を失脚させるためなら何でもするつもりだ。たとえそれが、他の神を崇めるカルトと手を組むことであっても。

財宝:シンダーハイドは主祭壇(エリアT9)の鍵を持っている。ポケットにはセンディング・ストーン(付録Aを参照)の片割れが入っている。これと対になる片割れはサリスという名のエルフの裏切り者が持っている。ヨーランド女王の宮廷の給仕の一人である。

T9:主祭壇

差し渡し2.4m(8フィート)ある青銅製の巨大な鉢が、6本の短い脚に支えられている。鉢の中では緑色の炎が踊っている。

この祭壇を用いることで、カルト教団員たちは“始原の集束地”(「準元素女王」を参照)との間を魔法的に行き来している。鉢の中の魔法の炎は、触れてもダメージを受けない。

秘密の鍵穴:鉢の縁の南側に、鍵穴がついている。教団員からこの鍵穴について聞いているキャラクターならば(この章で前述した「教団への潜入」の項を参照)、簡単に鍵穴を見つけることができる。それ以外のキャラクターは、捜索アクションとして難易度10の【判断力】〈知覚〉判定を行ない、鉢を調べることができる。判定に成功すると、そのキャラクターは鍵穴を見つける。
ポータル:この錠前にカルト教団の指導者の鍵(エリアT6、T8、T10を参照)を挿して回すと、祭壇の炎が天井まで燃え上がり、燃え盛るアーチとなる。このアーチはポータルとして働く。この鉢によじ登り、炎をくぐったクリーチャーは、“始原の集束地”(マップ1.2を参照)に瞬間移動する。このポータルは、鍵が挿さっている間じゅう、および鍵を抜いてから1分間残る。

T10:元素の玉座

円形の壇上から弓なりの階段の先に不気味な玉座があり、にやにや笑うドクロで飾られている。1人の女が玉座の前に跪いて祈りを捧げており、毛皮で縁取られた海賊のロングコートを着ている。 女の周りに革服を着た4人のごろつきが並んでいるが、ぴくりとも動かず、その体はきらきらした霜に覆われている。

祈りを捧げている女性はカーラ・ブレイン(ヒューマンの海賊の船長、“砕け散る氷の子ら”の指導者)である。ごろつきたちはブレインのカルトの教団員(ヒューマンの海賊)である。 4人とも氷クリーチャーである(「氷クリーチャー」の補足を参照)。

氷クリーチャー
“砕け散る氷の子ら”の教団員たちは、“氷の貴公子”クリオナクスの魔力が宿っている。これらの人型生物は、指定されたデータ・ブロックを使用する。氷クリーチャーが死亡すると、その体は崩壊して氷くずの山になる。そのクリーチャーが着用または運搬している装備は氷にならない。

この教団員たちは、教団が信奉する神格、クリオナクスに由来する魔法効果を受けている。
この効果により、カルトの教団員4人はブレインが交戦を指示するまで麻痺状態である(ブレインがこの命令を行なえるのは自分のターンのみだが、アクションは不要である)。

キャラクターたちは、難易度17の【敏捷力】〈隠密〉判定に成功することで、ブレインに音もなく忍び寄ることができる。キャラクターたちに〔祈りを〕遮られると、ブレインは「祈りの最中に邪魔をするな!」と怒鳴りつける。キャラクターたちが襲いかかってきたことに気づくと、ブレインはすぐにカルト教団員たちに戦闘に加わるよう命じる。

財宝:カーラ・ブレインは主祭壇(エリアT9)の鍵を持っている。

カーラ・ブレイン船長
残忍なるカーラ・ブレインは黒蟹号の船長だったが、猛烈な嵐に遭って船は凍りつくようなクアグ湖の底に沈んでしまった。 湖の中、クリオナクスという神が、元素邪霊寺院を拠点に自分のカルト教団を率いるならば、ブレイン船長と手下の海賊たちに一時的な水中呼吸能力を授けよう、と約束した。 ブレインは同意した。 船員たちが水面に浮上した後、ブレインは海賊たちを始原同盟に加入させた。

準元素女王

始原の集束地

寺院の主祭壇にあるポータル(マップ1.1のエリアT9)をくぐると、キャラクターたちは魔法によって“始原の集束地”プライモーディアル・ネクサスに転送される。
“始原の集束地”はマップ1.2に示されている。キャラクターたちが到着するのは、マップ上の火鉢の中だ。火鉢のポータルは、主祭壇のポータルと同じように機能する。

マップ1.2:始原の集束地
画:Stacey Allan、Will Doyle

“始原の集束地”の特徴

“始原の集束地”には以下のような特徴がある:
天井:天井は高さ9m(30フィート)。
照明:“始原の集束地”にある元素の穴は“明るい”光を放っている。
黒曜石の構造物:“始原の集束地”は黒曜石の岩盤でできている。

ヴォックスとの対決

キャラクターたちが“始原の集束地”に到着したら、次の文章を読み上げるか適宜読み換えること:

このエリアは4つの小部屋に分かれており、それぞれに丸い穴がある。
北東の穴は銀色に光り、灰を吐き出している。南東の穴は紫色に光り、ぬるぬるしたヘドロが泡出っている。南西の穴は青く光り、冷たい雪を吹き上げている。北西の穴は赤く光り、溶岩を噴き出している。それぞれの穴の表面近くに、ゴツゴツした影が蠢いている。
始原の紋章を顔に描いた黒い外套姿の女が、部屋の中央にある台座に立っている。その女は荒々しい視線で君たちを凝視する。
「まもなく誰もが私に頭を垂れるだろう!我が手下たちよ、破壊の時だ!」とその女が叫ぶ。
穴の中にいた塊がそびえ立つ二足歩行のモンスターに姿を変え、穴から這い出して、戦闘に備えている。女は、甲高い叫び声を上げてから極彩色の炎を噴き上げ、巨岩の体から溶岩が滴り落ちる巨大なエレメンタルのモンスターへと変身した!

この女性は“準元素女王”ウルセドラ・ヴォックスである。イニシアチブをロールする際、ヴォックスは元素のエネルギーでできた大型サイズのモンスターに変身する(ファイアー・エレメンタルのゲーム・データを用いる)。
ファイアー・エレメンタルが破壊されたならば、ヴォックスはカルトの狂信者(混沌にして悪、ヒューマン)に無傷の状態で変身する。この変身にヴォックスがアクションを使用する必要はない。

ヴォックスの手下:各穴に隣接するように、準元素の手下が1体ずついる。この手下にはみなオーガのゲーム・データを用いるが、武器が与えるダメージは[殴打]ではなく穴に対応する元素のダメージを与える(下記の「準元素の穴」表にある通り)。また、手下はそれぞれ武器が与えるダメージと同じ種別に対して抵抗を有する。

準元素の穴
北東:灰(火)
南東:粘液(酸)
南西:氷(冷気)
北西:溶岩(火)

元素の穴:この穴に底はなく、対応する準元素界と直接繋がっている。
この穴にへりはない。この穴に落ちるか、素手打撃によって突き飛ばされたクリーチャーは、「準元素の穴」表に示された種別の55(10d10)ダメージを受ける。次の自分のターン終了時まで穴の中にいたクリーチャーは、敵対的な次元界に吸い込まれて破壊される。

財宝:ヴォックスが持っている鍵は、マップ1.2の一番北にある火鉢およびマップ1.1のエリアT9の主祭壇にあるポータルを起動することができる。

結末

キャラクターたちがウルセドラ・ヴォックスを倒したならば、寺院内に残っているカルト教団員たちはみな、指導者がいなくなったと聞いて逃げ出す。キャラクターたちは難なく建物を出ることができる。
キャラクターたちは寺院の外れで、小さな野営地にいるエルフのフィロニアと再会する。フィロニアはキャラクターたちを見ると極端に喜び、セレーネに戻るまでずっと任務の話を聞きたいと頼み込む。

報酬

キャラクターたちがヨーランド女王の宮殿に戻ると、任務成功の噂がたちまち広まっていく。女王の従者たちは、キャラクターたちに敬意を表して盛大な宴を用意する。廷臣たちや宮殿に住む人々がキャラクターたちの勇敢な行動を褒めそやし、功労に感謝する。
ヨーランド女王は宴の席で、約束した1,000GP相当のブルー・サファイアを各キャラクターに贈る。キャラクターたちが近いうちに命が狙われることを女王に警告したならば、ヨーランド女王は深く感謝し、1人につきもう1つずつ宝石(500GP相当)を与える。

元素邪霊の諸力は阻止されたが、ヨーランド女王とセレーネを脅かすものがなくなったとは言い難い。女王は宴の席で、王室付き護衛として雇うのでカルト教団の脅威を一掃することに尽力してくれないか、とキャラクターたちに提案する。キャラクターたちがこの提案を受け入れるなら、さらなる冒険が待ち受けている!

付録:魔法のアイテム

センディング・ストーンズ
Sending Stones /送信石
その他の魔法のアイテム、アンコモン
センディング・ストーンズは2つで1組だ。2つの石が互いにそっくりに磨き上げられているため、2つが組になっていることはすぐに分かる。この石の片方に触れている間、君はこの石からセンディングを発動することができる。この呪文の目標はもう片方の石の持ち主である。もう片方の石を誰も身に帯びていない場合、君はこの石を使用しようとした時点でそのことを知り、この呪文を発動しない。
いずれかの石を使って1回センディングを発動すると、これらの石は次の夜明けまで再使用できない。片方の石が破壊されると、もう片方の石は魔法のアイテムでなくなる。

ビード・オヴ・フォース
Bead of Force/力場の珠
その他の魔法のアイテム、レア
この小さな黒い珠は直径約1.9cm(¾インチ)重さ30g(1オンス)である。普通は一度に1d4+4個がまとめて見つかる。
君は魔法アクションを行ない、1つの珠を最大18m(60フィート)まで投げることができる。珠は何かに当ると、半径3m(10フィート)の球形状の範囲に爆発して破壊される。その範囲内にいるクリーチャーはみな難易度15の【敏捷力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗すると5d4[力場]ダメージを受ける。しかるのち、透明な球形の力場がその範囲を1分間封鎖する。先のセーヴに失敗し、かつ完全にその範囲内にいたクリーチャーはこの球形の中に閉じこめられる。先のセーヴに成功するか、体の一部だけがその範囲内にあったクリーチャーは、球形の中心から遠ざかる方向へ、もはや球形の中にいなくなるまで押しやられる。この球形の壁を通り抜けられるのは呼吸可能な空気だけである。攻撃その他の効果は通りぬけられない。
中に閉じこめられたクリーチャーは、利用アクションを行なって球形の壁を押し、球形を“そのクリーチャーの移動速度の半分”だけ動かすことができる。この球形を外から持ち上げることも可能であり、球形の魔法によって、球形の重さは中のクリーチャーの重量に関わりなくわずか0.5kg(1ポンド)になっている。

ブーツ・オヴ・エルヴンカインド
Boots of Elvenkind /エルフ族のブーツ
その他の魔法のアイテム、アンコモン
このブーツを着用している間、どのような表面の上を歩こうとも、君の足どりはまったく音を立てない。また、君は【敏捷力】〈隠密〉判定に有利を得る。

付録:クリーチャー

モンスター

インキュバス

グレイ・ウーズ

ファイアー・エレメンタル

オーガ

ストーン・ゴーレム

サキュバス

NPC

海賊

海賊の船長

カルトの狂信者

カルトの教団員

騎士

狂戦士

無法者のかしら


いいなと思ったら応援しよう!