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【D&D5e】魔女団とバンダーホッブ/The Banderhobb Coven

この記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。©Wizards of the Coast LLC.


この記事は、D&D Beyondの無料記事“Halloween Encounters: The Banderhobb Coven”に掲載されたシナリオを非公式に日本語訳したものです。

まとめ(ネタバレなし)

PCレベル:5レベル
PC人数:指定なし(おそらく4人前後)
所要時間:2~3時間
使用ルール
『ヴォーロのモンスター見聞録』※必要なデータは本記事内に記載
『ダンジョン・マスターズ・ガイド』
『モンスター・マニュアル』
※DMGおよびMMは以下の無料ルールで代用可能ですが、後述の「クリーチャー」にて少し補足します。
フィフスエディションRPG コア・ルール」(魔法のアイテム)
フィフスエディションRPG モンスター・データファイル

セッション、配信などへの使用はご自由にどうぞ。報告、クレジットはいりませんが、教えてもらえるとやる気が出るかもしれません。


以下、アドベンチャーのネタバレを含みます。
プレイヤーとして参加予定の方はご遠慮ください。


















魔女団とバンダーホッブ

夏が終わると、灰色の空と荒ぶる海の季節が訪れる。しかし、沿岸の木々が葉を落とす頃、この物語の舞台となる小さな漁師町に訪れたのは、もっと酷いものだった。
海辺の集落というのは〔D&Dの〕世界にいくらでもある。フォーゴトン・レルムならば、チャルトのイーシャウの町かもしれない。この集落は滅びているはずだが、『魂を喰らう墓』の後に再建されたことにしてもよい。ネヴァーウィンター北部にあるポート・ラストという町かもしれないし、ダークレイクのような地下水源の近くにある、ディープ・ノームが住むアンダーダークの未踏の村かもしれない。

ガマアンコウ三姉妹の物語

海から生まれた3人のハグが海岸の岩を這い、石の上に倒れ込んだ。まるで鱗のある魚が見たこともない人型生物と格闘しているような光景だ。ハグの髪はくすんだ緑色の昆布でできており、皮膚は銀と青に光る鱗で覆われている。ハグたちは苦しそうに息を切らして鋭い針のような歯が生えた気味悪い口を開け、水かきのついた指を地面に叩きつけてぬめった石の上を必死によじ登っている。波打ち際をよじ登りながら、1人のハグがぬるぬるした爪で哀れなガマアンコウを握りしめていた。後で生肉を食べるために取っておいたのだ。

シー・ハグ

時の流れとともに、ガマアンコウ三姉妹が荒れ狂う海を出て初めて陸に上がった嵐の浜辺のことは忘れ去られたが、恐ろしい魔女団にまつわる物語は残っている。見た目は人間でも、人型生物の形態をしていても、その正体は別物だ。ハグは美と愛を蔑む卑しいフェイであり、それを根絶するためなら──あるいは、それを憎しみと醜さへと堕としてしまうためなら──どんなことでもする。
3人のシー・ハグは、陰鬱な洞窟で身を寄せ合い、地上世界での最初の夜を過ごした。1人が欲望のままにガマアンコウの身を引き裂き、剃刀のように鋭い歯で肉も骨も筋肉もズタズタにした。やがて3人のハグは食料をめぐっていがみ合い始め、岸辺から物音を聞いたマヌケな漁師が調べに来るまで激しい喧嘩が続いた。漁師がハグたちの姿を見た瞬間、3人のハグが漁師に飛びかかり、手足を引き裂き、その残骸を喰い散らかした。3人で協力すればどんなに強いのかを味わったハグたちは、きれいに食べた漁師とガマアンコウの骨の上で互いに誓い合い、“ガマアンコウ魔女団”の三姉妹として互いの運命を永遠に結びつけた。

3人のハグはシスター・サドンブロウ、シスター・ケルプサッカー、シスター・ソルトガズラーと名乗り、半世紀以上が経った。その間、三姉妹は海岸沿いを転々とした。洞窟や沈んだ岩穴に潜み、居場所に気づいた冒険者たちに追われると波間へ逃げ込んだ。住処を移しても、ハグたちは陸に上がった最初の夜に喰ったガマアンコウと漁師の骨を綺麗に保管していた。両者の目玉も魔法で処理して、同様に保管した。だが、そのうちハグたちは逃げるのに疲れた。ハグたちは、人類にも、鋭い鉄の刃から逃げることにも嫌気が差した。ハグたちは敵から身を守るため、恐ろしい怪物を作り出すことにした。

窃盗事件

1週間前にハグたちが行なった、特筆すべきことが3つある:(1)まず、処理した漁師の片目玉を使って“ハグ・アイ”(『モンスター・マニュアル』の「ハグ」の項を参照)を作った。この魔法の品を通して、シスター・サドンブロウは遠隔でものを見ることができる。(2)シスター・サドンブロウはハグの目を首から下げたまま、幻術を使って醜い老爺に変装し、町に入った。サドンブロウは市場から腕いっぱいの薬草数種と鋳鉄製の大鍋を盗み、町を逃げた。見張りがサドンブロウを洞窟の入口まで追いかけたが、サドンブロウが洞窟の中に逃げ込むと、見張りは怖くてそれ以上追いかけることができなかった。(3)3人のハグは洞窟に大鍋を置き、何kgもの海水と潰した薬草を煮込んだ。そして、ちょうどいい塩梅になったところで、ガマアンコウと漁師の骨を投入し、シューシューと煮立つ混合液を──やがてそこで1体のクリーチャーが形作られていくのを──眺めた。大鍋の中ではバンダーホッブが産まれつつあったが、この状態が1旬続いた。
1旬が過ぎた頃、漁師町は泥棒を捕まえるのを手伝ってくれる冒険者の募集をかけた。“老爺”は洞窟から出てこないし、調査に派遣した3人の勇敢な村人も帰ってこないのだ。この町の人々にとって、これはもう単なる窃盗事件ではない。犯人を見つけ出し...仇討ちするのだ。

まとめ
このアドベンチャーが始まる前に起こった主な出来事:

  • ガマアンコウ三姉妹と呼ばれるシー・ハグ3人の魔女団が、小さな漁師町の近くにある洞窟深くに野営地を作った。

  • 変装したハグが町の市場から大釜と魔法の薬草を盗んだ。

  • ハグたちは盗んだ品々を使ってバンダーホッブを造り、冒険者たちの干渉から身を守っている。

  • 町は泥棒を捕らえるために冒険者の一団(プレイヤー・キャラクターたち)を雇ったが、泥棒の正体がシー・ハグだとは気づいていない。

ハグの住処

冒険の導入

泥棒を逃してしまった見張りのヒメネス巡査は、町に到着した冒険者たちに会うと、窃盗事件のいきさつを説明し、報酬として50gpと泥棒の住処から好きなものを渡すと約束する〔※訳註:ただし、盗まれた大釜は無事に返さねばならない〕。泥棒の住処は“コークスクリュー洞窟”にある。この町が始まって以来多くの洞窟探検家が命を落としてきた、危険で悪名高い洞窟である。この洞窟の先は崖下から海に出るはずだが、潮の満ち引きのせいでそちらから入ることはできない。
巡査は、泥棒がガラスでできた目玉のペンダントを首から下げているのを見た、と付け加える。幸運のお守りのようなものかもしれないし、そうでなければ聖印だろうか。どの神のものかと尋ねられても、巡査は肩をすくめて、自分はそんなに信心深い人間ではないのだ、と言う。
巡査は冒険者たちを洞窟の入口まで案内し、幸運を祈る。別れ際、巡査は不吉な警告を残す。「我々は3人の勇敢で若い戦士をこの洞窟に送り、死なせてしまった。君たちはその骨に混ざらないでくれよ」

コークスクリュー洞窟

1.入口

“コークスクリュー洞窟”の入口は、海辺にある風が削った崖の上にぽっかりと空いた、幅3m(10フィート)の穴だ。30m(100フィート)下では、尖った岩場に海が激しく打ちつけている。洞窟の入口からは薄い霧が出ている。

洞窟の床には、自然にできた幅の広い階段が刻まれている。階段は濡れてすべりやすくなっているが、曲がりくねった道を簡単に降りて約9m(30フィート)下のエリア2に行くことができる。

2.“歯”の間

洞窟の奥へ進むにつれ、湿気と塩の匂いで空気が重くなり、君たちの出す一音一音が通路に虚しく響き渡る。足元の石は水と苔でぬめついており、一歩進むごとに足が少し滑る。通路が広がって、やがて大きな部屋になる。幅9m(30フィート)の裂け目が部屋を2つに隔て、奥のほうにトンネルの入口が見える。裂け目は、巨大ザメの歯のように鋭い石筍で埋め尽くされている。

この部屋は直径15m(50フィート)で、そこらじゅうに石筍がある。この部屋は地元の探検家たちに“歯”の間として知られ、ほとんどの探検家はここまでしか到達できない。床は塩水で濡れており、【筋力】〈運動〉判定や【敏捷力】〈軽業〉判定を行なったり、地面に触れた状態で激しい運動を行なったりするキャラクターは、難易度15の【筋力】セーヴィング・スローに成功しなければならず、失敗すると足を滑らせて伏せ状態になる。穴の周囲1.5m(5フィート)以内で伏せ状態になったキャラクターは、さらに難易度15の【敏捷力】セーヴィング・スローに成功しなければならず、失敗すると穴に落ちる。
“底なし”穴に落ちると、実際には21m(70フィート)落下して、エリア3の床に落ちる。穴の壁から生えている石筍以外に、ロープを固定する場所はない。石筍は3m(10フィート)間隔に生え、塩水で濡れており、クリーチャーは難易度16の【敏捷力】〈軽業〉判定に成功すれば石筍から石筍へ飛び移ることができるが、失敗すると穴に落ちてしまう。壁自体も多少凹凸があり、登攀することができる。壁の途中で自分のターンを終えたクリーチャーは、難易度16の【筋力】〈運動〉判定を行なわねばならず、失敗すると穴に落ちる。
洞窟の一番奥にある扉を開けると階段があり、21m(70フィート)下のエリア3の床につながっている。

3.“喉”の間

この部屋は直径15m(50フィート)で、洞窟の壁からいくつも小さな滝が流れ出ている。滝は、床の石に当たって騒々しく水しぶきを上げ、南の通路へと流れていく。ハグたちは、エリア4で自分たちの生み出した怪物の世話をする時以外は、この滝の下で休んでいる。
“ガマアンコウ魔女団”のシー・ハグ3人(シスター・サドンブロウ、シスター・ケルプサッカー、シスター・ソルトガズラー)とはここで出会う。キャラクターたちが音を消すためによほどの手段を取らない限り(パス・ウィズアウト・トレイスやサイレンスを周囲に発動するなど)、上階の“歯”の間を探索する物音がハグたちに来訪を知らせてしまう。ハグは3人とも“幻の姿”を使って変装し、冒険者たちの前にこの洞窟に入った村の探検家3人の変わり果てた姿を模している。サドンブロウは若い男(肉を切り刻まれた肉屋)、ケルプサッカーは若い女(生気を失った目とフジツボに覆われた皮膚を持つ魚屋)、そしてソルトガズラーはパデッド・アーマーを着た女剣士(全身を気味の悪いヒルに覆われた訓練中の衛兵)の姿だ。
ハグたちは、ここにやってくる人間たちをじっくりと弄び、変装した姿で犠牲者に恐怖心を植え付け、あわよくば追い払おうとしている。侵入者が襲ってきたり、警戒を緩めたり、逃げずにいると、ハグたちが襲いかかる!魔女団のメンバーであるハグたちは、3人全員が生きている限り、強力な呪文のを共有している(『モンスター・マニュアル』の 「ハグの魔女団」を参照;呪文セーヴ難易度13、呪文攻撃ボーナス+5)。ハグが2人が殺されると、最後に残ったハグはエリア4に逃げ込む。
この部屋の北側にある通路はエリア2に通じており、南の通路はエリア4に通じている。ハグが3人とも殺されたなら、バンダーホッブが自分を産んだ親の死を感じ、この階段からゴロゴロいう世にも恐ろしい唸り声が響き渡る。

4.“鼓動する心臓”の間

巨大な心臓が鼓動しているような不穏なリズムが、この部屋へと続く通路に響き渡っている。通路を下っていくと、足元を冷やすような寒気が押し寄せてくる。洞窟が開けた先にある最後の部屋は、幅15m(50フィート)で、部屋を照らす明かりは緑色に揺らめく薪火だけだ。部屋全体が深さ0.9m(3フィート)の水に浸かっており、中央の島にある巨大な釜を緑色の炎が温めている。部屋の一番奥には海へ出る通路があり、数秒おきに海水が洞窟に噴き上がり、大きな波飛沫を上げている。

難易度16の【判断力】〈知覚〉判定に成功したキャラクターは、この部屋の入口の上に大きな石が張り出しており、その上に大きな生き物の影がとまっている(!)ことに気づく。盗んだ大鍋を使ってハグたちが生み出したバンダーホッブが、張り出しの影に潜んで母を殺した者どもを待ち伏せているのだ。生き残ったハグがこの部屋に逃げてきた場合、大釜の横に立って甲高い声でキャラクターたちの気をそらし、戦闘の1ターン目に部屋の奥の穴から海へ逃げ出す。

バンダーホッブ

バンダーホッブは額にハグ・アイ(『モンスター・マニュアル』の「ハグ」の項を参照)を埋め込まれており、生き残っているガマアンコウ三姉妹は誰でもその目に映るものを見ることができる。戦闘では、一行の後方にいるキャラクターを奇襲して“飲み込み”を試み、その後死ぬまで戦う。バンダーホッブは、“影渡り”を使って自分から見える部屋の中の任意の場所に瞬間移動できる。ヒット・ポイントが0になっても、バンダーホッブは即死しない。その代わりに恐ろしい咆哮を上げ、次のターンに大鍋のほうへ逃げ、よじ登って中に入る。蒸気の雲が大鍋を取り囲む。蒸気が消えると、大鍋全体が縮んで直径30cm(1フィート)ほどの鉄の鉢になる。この魔法の器はウォーター・エレメンタルへの命令の鉢ボウル・オヴ・コマンディング・ウォーター・エレメンタルだが、特殊な性質を持つ:合言葉を唱えると、1体のウォーター・エレメンタルまたはバンダーホッブを召喚できる。バンダーホッブを召喚した場合も、ウォーター・エレメンタルを召喚したのと同様に、その他カンジャー・エレメンタルの規則に従う。

ボウル・オヴ・コマンディング・ウォーター・エレメンタル

この部屋を調べたキャラクターは、3人の若い村人の骨と服が部屋に散らばっているのを発見する。

結末

村人たちがキャラクターたちを雇った目的は、泥棒を裁き、大鍋を取り戻し、キャラクターたちの前に洞窟へ向かった若い冒険者たちの仇を討つことだった。ハグを倒したキャラクターたちは、確かに泥棒を裁き、他の冒険者たちの仇を討ったが、大鍋は取り戻せなかったはずだ──縮んで魔法の鉢になってしまったのだから。それでも巡査は、キャラクターたちへ支払う50gpの報酬から、大鍋の代金2gpを差し引くだけだ。

クリーチャー・データ

ハグ

データ・ブロックは無料ルールにあるのでそちらを参照ください。
ただし、シナリオ内で言及されているコラム情報がないので簡単に補足します。

ハグの魔女団
ハグが3人集まって誓いを立てた集団を“魔女団”と呼ぶ。
共有呪文発動:魔女団の3人が互いに9m(30フィート)以内にいる限り、各ハグは以下の呪文を発動できる。ただし、呪文スロットは全員で共有する。
1レベル(4スロット):アイデンティファイ、レイ・オヴ・シックネス
2レベル(3スロット):ホールド・パースン、ロケート・オブジェクト
3レベル(3スロット):カウンタースペル、ビストウ・カース、ライトニング・ボルト
4レベル(3スロット):ファンタズマル・キラー、ポリモーフ
5レベル(2スロット):コンタクト・アザー・プレイン、スクライング
6レベル(1スロット):アイバイト
妖婆の目玉ハグ・アイ:魔女団が作成できる魔法のアイテム。1つの魔女団が一度に持てるハグ・アイは1つのみ。
魔女団のハグは、1回のアクションとして“ハグ・アイの見ているものを見る”ことができる。ハグ・アイはAC10、1ヒット・ポイント、暗視18m(60フィート)を有する。ハグ・アイが破壊されると、その魔女団のハグはみな3d10[精神]ダメージを受け、以後24時間盲目状態になる。

バンダーホッブ

バンダーホッブは『ヴォーロのモンスター見聞録』に収録されているモンスターです。お持ちでない方は以下の拙訳をお使いください。

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