【D&D5e】ヴェクナ、その名を呼ぶべからず/Don't Say Vecna!
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この記事は、D&D Beyondで公開されている無料アドベンチャー“Don't Say Vecna!”を非公式に日本語訳したものです。
元記事はこちら。
アドベンチャー概要(ネタバレなし)
作者:Michael Galvis、Mike Bernier
PC人数:20レベル、3~4人
所要時間:2~3時間程度(と書いてありますがおそらく倍くらいかかります)
DMが準備するもの:
•必須:ヴェクナの書(D&D Beyondの有料コンテンツ)
モンスター・マニュアル
•任意:ダンジョンマスターズ・ガイド
※『モンスター・マニュアル』は「フィフスエディションRPG モンスター・データファイル」で代用できます。
※この記事では「ヴェクナの書」の日本語訳は行なっていません。ご注意ください。
以下、アドベンチャーのネタバレを含みます。
プレイヤーとして参加予定の方はご遠慮ください。
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「ヴェクナ、その名を呼ぶべからず/Don't Say Vecna!」では、不可解にも物質界から姿を消した魔道士の塔をプレイヤーたちが調査することになる。探索を通じて、3人の学者が発見した禁断の秘密と、彼らに降りかかった運命が明らかになっていく。
これは自作の無料D&Dアドベンチャーで、「ヴェクナの書」の情報を使用する。このアドベンチャーは20レベルのキャラクター3~4人のグループを対象としており、2~3時間程度で完結する。アドベンチャーの最後にはアーチリッチのヴェクナとの死闘が繰り広げられる。このアドベンチャーを遊ぶ上でダンジョン・マスターに必要なのは「ヴェクナの書」のみだ。
ヴェクナとの遭遇をさらに困難にしたい場合、『ダンジョンマスターズ・ガイド』の“ブック・オヴ・ヴァイル・ダークネス/不浄なる暗黒の書”が必要である。
訳註:「ヴェクナの書」は、ヴェクナのデータ・ブロックと伝承が記載されたD&D Beyondのデジタル・コンテンツ(英語)です。期間限定で無料配布されていましたが、現在は有料コンテンツとなっています。そのため、本記事では「ヴェクナの書」の内容については触れないこととします。
アドベンチャーの概要
この単発アドベンチャーは、ヴェクナを研究していた3人の学者(カリーン、エイデン、ブリン)が所有していた魔道士の塔が舞台になる。3人の研究はヴェクナの注意を引くことになり、塔ごと混沌の次元リンボへ転移させられてしまった。ヴェクナはリンボに学者たちを閉じ込め、彼らが非業の死を遂げるまで拷問した。
現在、ヴェクナはこの塔を利用して、自分のことを深く調べようとする愚か者どもをおびき寄せ、命を奪っている。塔には、致命的な罠、ヴェクナに関する禁断の知識、そしてこのアーチリッチの聖域へ通じる門がある。
プレイヤーの目的
“知の塔”の調査する
暴かれたヴェクナの秘密を回収する
“無慈悲の門”を開く3本の鍵を見つける
ヴェクナを倒す
内容に関する警告
このアドベンチャーには、身体的な恐怖、拷問、切断の描写が含まれている。アドベンチャーを始める前にセッション・ゼロを行なうと、プレイヤーのソフト・リミットとハード・リミットに対処するために調整を行なうことができる。
キャラクター作成
キャラクターたちは、“知の塔”の消失を調査する歴戦の冒険者だ。冒険者たちは魔道士の塔で見つかった秘密を明らかにすることに興味を持っていることにするのがよい。たとえば、行方不明の学者の一人と関係があるかもしれないし、時折恐ろしい幻視に悩まされているのかもしれない。
アドベンチャーの最後にあるヴェクナとの遭遇を生き延びるためには、魔法のアイテムがあるとよいだろう。ヴェクナは非魔法攻撃による[殴打]、[斬撃]、[刺突]ダメージに完全耐性を有するため、格闘系のキャラクターは魔法的な攻撃ができないと苦戦する可能性がある。ただし、どの魔法のアイテムを許可するか、そしてそれがここで示す難局にどのような影響を与えうるか慎重に考えること。
知の塔
突如消失する以前、“知の塔”はごく普通の建物だった。この円形で地味な塔は、高さ30m(100フィート)、直径12m(40フィート)で、まっさらな灰色の石でできていた。塔には隠居した学者が3人住んでおり、さまざまな図書館や考古学調査隊、雇われ英雄の冒険者パーティから買い取った古い書物や遺物を調べていた。
塔の装飾は質素で、学者たちはみな贅沢な快適さを求めるよりも研究に専心していたようだ。研究に熱中する学者たちに必要な設備は、石をむき出しにした壁と床、木製の素朴な家具、散らかった研究道具だけだった。
知の塔は4階建てで、各階には決まった実用的な機能がある。1階は塔の玄関で、学者が客人を迎える場所だった。2階は魔法で空間を拡張し、学者たちの自室、図書館、植物園が設けてある。学者たちの研究は3階と4階(それぞれ研究室と観測室がある)で行われていた。
学者たちの研究対象は、やがてアーチリッチのヴェクナに移った。ヴェクナは、学者たちが自分の秘密を暴こうとしていることを知ると、塔をリンボに転移させ、今度はヴェクナが学者たちを研究し始めた。
巷ではたいていこの塔の学者たちをただの愚か者だとみなしていたが、塔の消失したことで興味を持った学派もあった。キャラクターたちは、そういった学派の1つから塔の場所を知ったことにもしてもよいし、もしかすると自力でこの塔のことに辿りついたのかもしれない。
塔の特徴
塔には次のような特徴がある。
構造:各部屋は直径12m(40フィート)、高さ6m(20フィート)。石壁はAC17、1.5m(5フィート)区画ごとに90hpを有し、非魔法的な[斬撃]および[刺突]ダメージに対する完全耐性を持つ。リンボにある間、塔が破壊されてもすぐひとりでに再建が始まる。この過程には3d4分かかる。
防御魔法:塔はフォービダンス呪文によって守られている。ターン中に塔に初めて入るか、塔の中でターンを開始したセレスチャル・クリーチャーは、5d10[光輝]ダメージを受ける。 扉や壁はパスウォール、ガシアス・フォーム、および類似の魔法から保護される。
穢れた名前:知の塔はヴェクナの不浄な行ないによって呪われている。 プレイヤーまたはそのキャラクターが“ヴェクナ”という名前を口にすると、そのキャラクターは2d10[精神]ダメージを受け(セーヴは行なわない)、難易度17の【知力】セーヴィング・スローを行わねばならず、失敗すると呪われる。 この方法で呪われたクリーチャーは1d10分間話すことができず、その後呪いは終了する。 この呪いが発動するたびに、発動したキャラクター/プレイヤーにかかわらず、1d10ずつ[精神]ダメージが増加する(最大5d10)。 ヴェクナの名が呼ばれずに24時間が経過すると、ダメージは2d10に戻る。 ヴェクナの名をささやくクリーチャーはこの呪いの影響を受けない。 学者たちの遺体が塔の中にある限り、この呪いを終わらせることはできない。
ヴェクナ、アーチリッチ
ヴェクナは、ダンジョンズ&ドラゴンズの世界に存在する最も強力なリッチである。彼は不死を得るために暗黒の力を求めた邪悪な魔法使いだ。ヴェクナは終わらぬ生涯を通じて、悪意と憎悪、そして抑えがたい力への渇望に満たされるようになった。
ヴェクナの不浄な行ないにまつわる物語は、D&Dの初版以来ずっと伝承の中に存在している。 邪悪な存在に満ちた多元宇宙においても、ヴェクナは最悪の存在である。 ヴェクナの背景に関するさらに詳しい情報は、「ヴェクナの書」に書かれている。
アドベンチャーの開始
リンボには重力がないため、キャラクターたちは塔の外側を自由に探索できる。触手は魔法的な存在であり、塔の中にある物体やクリーチャーがリンボの破滅的な影響を受けるのを防いでいる(「混沌の領域」を参照)。
黒い触手:扉や窓から1.5m(5フィート)以内に近づいたクリーチャーは、難易度15の【耐久力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗すると触手によって塔の中に引きずり込まれる。この方法で塔に入ったクリーチャーは、蠢く触手の塊の中を引きずり込まれながら14(4d6)[酸]ダメージを受ける。この方法で塔に引き込まれたクリーチャーは、塔の玄関(エリアL1)に着く。塔に近づいたクリーチャーを引き込むだけで、触手に感覚はない。
扉や窓を塞ぐ触手はAC12、30hp、[毒]および[精神]ダメージに対する完全耐性を有し、【敏捷力】セーヴィング・スローに自動失敗する。hpが0になった触手は朽ち果て、塔に出入りするための扉や窓が露出する。ひとたび露出してしまえば、扉も窓も鍵はかかっておらず、簡単に開けることができる。
塔への開口部(開いている扉や窓など)をそのままにしておくと、中にある物体やクリーチャーはリンボの効果を受ける。塔への開口部は、1d6分経つと新たに触手が生えて自動的に封じられる。
混沌の領域:キャラクターは、塔の外側で1分過ごすごとに、リンボの混沌としたエネルギーの影響を受ける。この影響を受けたクリーチャーは難易度15の【耐久力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗するとランダムに選んだ種別の16(3d10)ダメージを受け、成功するとその半分のダメージを受ける。 この方法でダメージを受けたクリーチャーはさらに、持ち物から非魔法アイテムをランダムに1つ選ばなければならない。そのアイテムは役に立たない形に変化してしまう。
L1.塔の玄関
部屋にある2つの扉の前の半径1.5m(5フィート)の範囲を除いて、塔の玄関は魔法の暗闇に覆われている。暗視能力を持つクリーチャーもこの暗闇を見通すことはできず、魔法以外の光で照らすこともできない。この部屋で光を作り出す呪文が唱えられた場合、6レベル以上の呪文でない限り、その呪文は自動的に解呪される。
暗闇が解呪されると、一行は部屋に木箱が埋めつくされていることがわかる。この木箱を調べても、めぼしい物はさまざまな言語で書かれた古い書物くらいだ。
第一の鍵:塔の玄関には1体のボーン・デヴィルが棲んでいる(飛行速度ではなく登攀速度12m(40フィート)を有する)。塔の玄関の反対側にある扉は上階へ上るための階段につながっている。キャラクターがこの扉から1.5m(5フィート)以内に近づくと、ボーン・デヴィルが襲いかかり、死ぬまで戦う。扉の前の光の中にいるクリーチャーを攻撃する際、ボーン・デヴィルは3m(10フィート)の間合いを使い、魔法の暗闇に隠れて攻撃する〔訳註:ボーン・デヴィルは“悪魔の目”の特徴によって魔法の暗闇を見通すことができ、“見えない攻撃者”および“見えない目標”の利益を受ける〕。ボーン・デヴィルは死ぬとカリーンの左手に戻り、魔法の暗闇は消滅する。
カリーンの手は観測室(エリアL4)にある“無慈悲の門”に使用できる。
呪われた扉:塔の階段に通じる扉はカリーンの手以外では開けられない。カリーンの手を使わずに取っ手に触れたクリーチャーは、4d6[死霊]ダメージを受ける。そのクリーチャーはさらに、難易度17の【耐久力】セーヴィング・スローに行なわねばならず、失敗すると受けたダメージの分だけ最大ヒットポイントが減少する。 この減少は目標が大休息を終えるまで持続する。 この効果でヒットポイントの最大値が0になった場合、目標は死亡する。
カリーンの最期:学者たちをリンボに閉じ込めてから数日後、ヴェクナによってブリンは忌まわしき姿に変貌し、カリーンとエイデンを襲った。命の危険を感じたカリーンは塔から脱出しようとした。しかし、なんとかエントランスまではたどり着いたものの、ブリンに引きずり戻された。その後、抵抗した際に、カリーンの左手は引きちぎられた。塔に渦巻く暗黒のエネルギーに冒されたその手は、ボーン・デヴィルへと姿を変えた。
L2.居住区
この階は塔の内側が魔法で拡張され、小さな図書室、共用エリア、植物園、そして学者たちの部屋が2つある。共用エリアにめぼしい物は何もない。
カリーンとエイデンの部屋
部屋をざっと見渡せば、この部屋を共有していた学者が夫婦であろうことがわかる。洋服ダンスには男女の服が入っており、壁のフックに男物の寝間着が掛けられ、隅にある洗面器の脇には男性用の髭剃り用具がある。
第二の鍵:ベッドを調べると、枕のうち1つの下にエイデンの左目がある。キャラクターが初めて触れるたとき、目がぐるりと回り、瞳孔がキャラクターを見つめる。そのとき、カリーンとエイデンが“無慈悲の門”(エリアL4を参照)の碑文について話している光景が浮かぶ。カリーンは、その碑文に門を開ける手がかりがあるはずだと示唆する。
幻視が終わると、目に触れたキャラクターは難易度19の【知力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗すると5d6の[精神]ダメージを受けて左目の視力を失う。左目の視力を失ったキャラクターは、視力に依存する【判断力】〈知覚〉チェックに不利を受ける。次の大休憩の終了時、そのキャラクターはセーヴィング・スローを再度行なうことができ、成功すればその効果は終了する。 この効果はグレーター・ヒーリング、ヒール、ウィッシュの呪文によっても終了させることができる。
エイデンの目は観測室(エリアL4)にある“無慈悲の門”に使用できる。
エイデンの執着:机の上にはカリーンの日記が開いたまま置かれている。 最後のページ以外はすべて、インクがこぼれて読めなくなっている。 一番最後の書き込みにはこうある:
ブリンの部屋
この小さな部屋には、ベッド、トランク、机がある。 部屋に入ってすぐの壁際には、磨きたての靴が置いてある。机の上には、インク壺に羽ペンが刺されていて、2冊の本が開いたまま置かれている。1冊はかなり古そうだが、もう1冊は最近作られたもののようだ。
書記の仕事:“無慈悲の門”が現れて以降、ブリンは孤独感に打ちひしがれ、強い衝動に駆られて靴を磨き、古い書物を共通語に翻訳していた。ヴェクナによって姿を変えられる前に翻訳していた本は、金色の目と干涸びた手を持つ神話上の人物についてのものだったようだ。その人物が願ったものは何でも叶うと言われていた。その人物は、寝ている間に盗人に眼球を盗み取られ、非業の死を遂げた。
図書室
このエリアの本はヴェクナに呪われてている。本を読み始めたクリーチャーは、難易度18の【判断力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗するとギアス呪文の効果を受ける。この効果による魔法の命令は、ただ座って本を読むことである。命令に従わない場合、そのクリーチャーは5d10[精神]ダメージを受け、無力状態になり、ヴェクナを賛美する。この効果はクリーチャーがダメージを受けると終了する。
隠された秘密:1時間かけて本を読んだクリーチャーは、ヴェクナについて以下のことを学び取る:
ヴェクナはオアースの世界で生まれた。生粋の魔女の息子で、父親は知らない。ヴェクナが幼い頃、母親は闇の魔法を稽古したかどで追放された。
ヴェクナは母を追放した魔道士の一団の奴隷になった。ある日、ヴェクナは魔道士たちを虐殺した。
数百年をかけ、ヴェクナはオアース世界に帝国を築いた。体が衰え始めたとき、ヴェクナは闇の力に頼ってリッチになった。
ヴェクナは裏切られた(裏切り者の名はない)。裏切り者との間に起こった戦いで、このアーチリッチは左目と左手を失った。
ヴェクナは多元宇宙を旅しているが、その動機は不明である。
植物園
図書室の半開きの扉は、中庭のある異次元空間に通じている。中庭の上空には、塔の外の光景が幻術で投影されている。
中庭は円形で直径12m(40フィート)。中庭を囲む壁は高さ12m(40フィート)。中庭から出るには、居住区への扉から戻るしかない。中庭から飛び出したクリーチャーは、元いた場所に再び現れる。
ささやきの森:中庭に入ったクリーチャーには、亡くなった愛する者の嘆願が聞こえる。それを聞いたクリーチャーは難易度17の【魅力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗すると愛する者が枯れ木の中から助けを求めているのだと信じ込んで枯れ木の傷に近づく。枯れ木から1.5m(5フィート)以内に近づくか、枯れ木に隣接してターンを開始したクリーチャーは、難易度15の【筋力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗すると枝に拘束される。枯れ木に拘束されたクリーチャーは、自分のターンにアクションを消費して再度このセーヴィング・スローを行なうことができ、成功したなら自身に対するこの効果は終了する。枯れ木に拘束されたクリーチャーは、自分のターンの開始時に10(3d6)[死霊]ダメージを受ける。クリーチャーがこの効果を受けると、1d4体のグールが庭の土から爪を立てて這い出す。
呪われた死者:ボロボロになった魔道士のローブを着た4体のレイスが枯れ木の中で待ち構えている。クリーチャーが木から1.5m(5フィート)以内に近づくと、レイスは姿を現して襲いかかる。レイスは自分のターンにおいて、“生命力吸収”を使うか、クリーチャーを枯れ木に隣接する空間に突き飛ばす。
枯死:中庭に植物は生息できない。植物を生き返らせようとする試みは自動的に失敗する。モンスター種別が植物のクリーチャーは、中庭にいる限り、各自分のターン開始時に27(5d10)[死霊]ダメージを受ける。
L3.研究室
天井にいるクリーチャーはブリンだ。ヴェクナが到着したとき、ブリンはおぞましく醜い姿に変えられ、仲間の学者たちを狩ってその死体を食べ尽くした。現在ブリンは、頭部と3つの塊がつながって構成されている。戦闘では、ブリンにシャンブリング・マウンド3体のデータを用いるが、以下の通り変更を加える:
ブリンは(植物ではなく)アンデッドである。
3つの塊は同じイニシアチブを共有する。
ブリンは登攀の難しい表面を登攀することができる。これには天井に逆さまになることを含み、能力値判定不要である。
ブリンの頭部がヴォーパル・ソードなどで塊から切り離された場合、3つの塊は即座に死亡する。
ブリンがキャラクターたちに気づくと、無数の肉手を伸ばし、ゴロゴロと唸り声を上げる。
第三の鍵:ブリンの頭部は観測室(エリアL4)にある“無慈悲の門”に使用可能だ。彼には目も左手もないので、無慈悲の門に他の鍵として使用することはできない。
ブリンのメモ:手術台近くの机の上に、ブリンがメモを書いた本が何冊も開いたまま置かれている。そこに書かれているのは、ポーションのレシピやさまざまな実験に関する研究メモだ。散らばったメモの上には、暗い色の革で綴じられた小さな日記が置かれている。知の塔の学者たちを拷問し始めると、ヴェクナはブリンの心に侵入し、孤独を癒そうという思考で誘惑した。日記には日々、頭の中の声がブリンに「孤独でいる必要はない」と語りかけてくることが記されている。彼がすべきことは、孤独な思いをこの本に書き込むことだけだったのだ。日記の最後にはこうある:
ブリンのメモを最初に読んだクリーチャーを目標として、ドミネイト・モンスター呪文(9レベル)が発動される。そのクリーチャーは難易度22の【判断力】セーヴィング・スローに行なわねばならず、失敗するとヴェクナの支配下に置かれる。 クリーチャーがこの方法で支配された場合、ヴェクナはそのクリーチャーが聖域に到達するまでそのクリーチャーに普段通り振る舞わせるが、聖域に着いた途端に支配されたクリーチャーが一行に反旗を翻す。 クリーチャーがこの方法で支配されている間じゅう、ヴェクナは呪文に精神集中しなければならない。
DMへのヒント:セーヴに失敗した場合の効果については、ロールプレイがうまくいくよう、プレイヤーと個別に話し合うことが望ましい。キャラクターが失敗しても成功しても、ヴェクナのデータ・ブロックにある1日1回のドミネイト・モンスターの発動として数えること。
L4.観測室
この部屋の床は移動困難な地形である。この部屋に入ったヒット・ポイントが最大でないクリーチャーは、難易度15の【敏捷力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗すると触手の攻撃を受けて10(2d10)[刺突]ダメージを受け、1時間のあいだ毒状態になる。このセーヴィング・スローに成功したクリーチャーは半分のダメージを受け、毒状態にはならない。部屋にいるクリーチャーは、1分ごとにこのセーヴィング・スローを繰り返さなければならない。
無慈悲の門
門を調べる:“無慈悲の門”の直径は3m(10フィート)である。門を検分すると、精巧な金属にヴェクナの過去の場面が描かれているのがわかる。最初の場面は、魔道士のローブを着た男が高い塔の前で手を挙げ、その前に男女がひざまづいているもの。2つ目の場面は、魔法陣の中に座った男がゴブレットで酒を飲んでいるもの。最後の3つ目の場面は、崩れ落ちる塔を背に、干涸びたアンデッドの魔法使いが、豪勢なロングソードを振り回すハーフプレート姿の人物と戦っているもの。
門に触れたクリーチャーは、5(2d4)の[刺突]ダメージを受ける。難易度11の【知力】〈捜査〉判定に成功すると、最初の場面でひざまづいている人物の1人には頭がなく、2番目の場面の魔道士には左目がなく、3番目の場面のアンデッドには左手がないことがわかる。
破壊不能:この門を破壊することはできず、魔法で開いたり動かしたりすることもできない。門を囲む壁を取り除いたり傷つけたりすると、塔の外にさらされることになる(“混沌の領域”を参照)。
門を開く:門を開くには3つの鍵が必要だ。左目、左手、頭である。それぞれが別の人型生物(生死問わず)、あるいはブリンの死体から入手したものでなければならない。鍵は門に差し出されると、差し出したクリーチャーの手から鍵が消え、門の枠に浮き彫りされた場面の中に現れる。
自分の左目や左手を鍵として使ったクリーチャーは、その部位を永久に失い、ヴェクナの呪文に対して行なうすべてのセーヴィング・スローに不利を受ける。自分の頭部を鍵として使ったクリーチャーを蘇生することはできない。これらの効果を取り除くには、ウィッシュ呪文か神性介入を使うしかない。
鍵穴をこじ開ける:門の鍵穴をこじ開けることはほとんど不可能だ。 それぞれの鍵穴は驚異的な魔法とからくりでできており、こじ開けるには盗賊道具を使って難易度30の【敏捷力】判定が必要になる。この判定に失敗したなら、鍵穴をこじ開けようとしたクリーチャーは難易度19の【敏捷力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗すると門の複雑な装置に捕まって拘束される。
門に捕まったキャラクターは、難易度19の【筋力】または【敏捷力】セーヴィング・スローに成功すれば脱出できる。脱出に失敗したならば、そのキャラクターは門の歯車によって粉砕され、55(10d10)の[殴打]ダメージを受ける。左目、左手、または頭を適切な鍵穴に差し出せば、キャラクターの脱出の試みは自動的に成功する。
ヴェクナの聖域
“無慈悲の門”の鍵が開くと、門は死霊エネルギーの波を放ち、扉から9m(60フィート)以内にいるクリーチャーに発動された6レベル以下の呪文をすべて解呪する。これは完全遮蔽の後ろにいるクリーチャーにも当てはまる。
門が続く先は、時の狭間に位置する寺院、ヴェクナの聖域である。聖域は次の属性を有する。
聖域は長さ24m(80フィート)、幅9m(30フィート)。天井の高さは18m(60フィート)。
壁は石とゾンビを混ぜてできている。 ゾンビは石と融合しており、壁を破壊しない限り引き剥がすことはできない。 壁から1.5m(5フィート)以内に近づいたクリーチャーは、難易度15の【敏捷力】セーヴィング・スローを行なわねばらなず、失敗すると壁のゾンビによってつかまれた状態になる。 ゾンビにつかまれた状態でターンを開始したクリーチャーは、1段階の消耗状態を得る。クリーチャーは各自分のターンにおいて、1回のアクションとしてこのセーヴィング・スローを繰り返すことができる。
聖域は生きているクリーチャーに対する防衛機能を有する。 生きているクリーチャーのヒット・ポイントを回復する呪文は、その半分のヒット・ポイント(最低1)しか回復させない。
聖域はフォービダンスによって守られている。セレスチャル・クリーチャーは、自分のターン中初めて聖域に入るか、聖域の中でターンを開始した際、5d10[光輝]ダメージを受ける。
聖域はリンボの効果の影響を受けない。
以下を読み上げ、キャラクターたちにイニシアチブをロールさせること。
不浄なる炎: 戦闘が始まると、塔の全部屋が死霊の緑炎に包まれる。塔の中でターンを開始したクリーチャーは、難易度15の【敏捷力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗すると炎に焼かれて14(4d6)の[死霊]ダメージを受ける。ヴェクナと触手はこの炎によるダメージを受けない。
ヴェクナの戦術
ヴェクナは能力値判定不要で、呪文発動能力者の能力を把握し、発動する呪文を特定することができる。ヴェクナは一団の中から、他者のヒット・ポイントを回復させたり、蘇生させたりすることのできる魔法を持っているキャラクターを無力化/殺害しようとする。さらに、左目や左手のないキャラクターがいるならば、ヴェクナはその部位が“無慈悲の門”に差し出されたのではないかと疑い、そのキャラクターを発動する呪文の目標にする。
脅威度の上昇:より困難な戦闘にしたければ、“ブック・オヴ・ヴァイル・ダークネス”(『ダンジョン・マスターズ・ガイド』所収)の力を引き出すか、以下の住処アクションを使用すること。
住処アクション
イニシアチブ20の時点で(同値の場合は常に後)、ヴェクナは住処アクションを行ない、以下のうち任意の1つの効果を生み出せる。ヴェクナは同一の効果を2ラウンド連続で使用することはできない。
影絵:キャラクター1人につき1体のシャドウを召喚する。シャドウはそれぞれ異なるキャラクターの1.5m(5フィート)以内に現れる。シャドウはヴェクナの命令に従い(アクション不要)、ヴェクナが再びこの住処アクションを使用するか死亡すると消える。シャドウはこの住処アクションを処理した後〔訳註:次のラウンドから〕、イニシアチブ20で行動する。
生命力吸収: ヴェクナはエナベーションを7レベルで発動する。ヴェクナはこの呪文に精神集中する必要がなく、この呪文は次のラウンドのイニシアチブ20で終了する。
死者の悲嘆:ヴェクナが見ることのできる住処内の一点を中心とした半径6m(20フィート)の球体状に、慟哭する霊が群がる。範囲内にいるクリーチャーはみな難易度18の【判断力】セーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗すると28(8d6)[冷気]ダメージを受け、移動速度が4.5m(15フィート)減少する。セーヴィング・スローに成功したクリーチャーは半分のダメージを受け、移動速度は低下しない。
ヴェクナを倒す
キャラクターたちがヴェクナを滅ぼしたなら、次を読み上げること:
キャラクターたちはヴェクナの遺体から“ブック・オヴ・ヴァイル・ダークネス”を回収することができる。このアーチリッチは1d100年後に新しい肉体で復活する。復活したアーチリッチは自分を殺した者たちに復讐する。キャラクターたちが素早く移動しなければ、寺院と門は崩れ、ヴェクナの擬似次元界に閉じ込められてしまう。
知の塔に戻ったなら、読み上げること:
ヴェクナが討ち倒されたことで、塔は再び物質界の、転移される前にあったのとぴったり同じ場所に戻ってきた。 残念ながら、学者たちの悲惨な運命は変わらない。 その代わり、彼らは“不死の王”の秘密を調べようとする無謀な者たちへの警句となるだろう。
マップ
シナリオにマップは付属していませんが、ファンメイドのマップがあったのでリンクしておきます。Reddit内で検索すると、他にも何種類かヒットします。
https://www.reddit.com/r/dndmaps/comments/victyv/dont_say_vecna_created_with_dungeondraft_using/
おわり
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