見出し画像

[ショート]おやすみの魔法



羊が1ぴき

羊が2ひき

なぜ羊を数えるのだろう?

羊を数えるたび
だんだんと目が冴えてくる

「羊が3びき」

カーテンの隙間から
お月さまがのぞいている

僕はきょう
初めて広いベッドに
一人でねむる

少し冷たくて
少し布団のにおいがした

「羊が4ひき」

羊を数えるたび
だんだんと目が冴えてくる


ドアの隙間から
線になった灯りがもれる

「羊が5ひき」

きのうまではおかあさんがいたのにな

「羊が6ぴき」


おかあさん




--   トントン --



ドアが開くとおかあさんがいた

「起こしちゃった?」

「ううん、起きてただけ」

とっても小さい声だったけれど
おかあさんに届いたかな

「あのね、まだ僕に
おやすみの魔法をかけてなかったの」

「おやすみのまほう?」

「そう、おやすみなさいって
まだ僕に言ってなかったでしょ?
だからね


あなたが明日、目が覚めた時に
たくさんの幸せが訪れますように


おやすみなさい」



そっと僕に布団をかけなおす
おかあさんの手は

いつもよりあたたかかった



以前作った小さなお話

いいなと思ったら応援しよう!