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Photo by
suzu710
[ショート]おやすみの魔法
羊が1ぴき
羊が2ひき
なぜ羊を数えるのだろう?
羊を数えるたび
だんだんと目が冴えてくる
「羊が3びき」
カーテンの隙間から
お月さまがのぞいている
僕はきょう
初めて広いベッドに
一人でねむる
少し冷たくて
少し布団のにおいがした
「羊が4ひき」
羊を数えるたび
だんだんと目が冴えてくる
ドアの隙間から
線になった灯りがもれる
「羊が5ひき」
きのうまではおかあさんがいたのにな
「羊が6ぴき」
おかあさん
-- トントン --
ドアが開くとおかあさんがいた
「起こしちゃった?」
「ううん、起きてただけ」
とっても小さい声だったけれど
おかあさんに届いたかな
「あのね、まだ僕に
おやすみの魔法をかけてなかったの」
「おやすみのまほう?」
「そう、おやすみなさいって
まだ僕に言ってなかったでしょ?
だからね
あなたが明日、目が覚めた時に
たくさんの幸せが訪れますように
おやすみなさい」
そっと僕に布団をかけなおす
おかあさんの手は
いつもよりあたたかかった
以前作った小さなお話